ロザリーとハルトさんの様子を見に行く
ロザリー達がいつも店を開いているのは住宅街側だと言うので慎重に見ていくと、行列の出来ている場所があった。こういうのは興味を惹かれるので見てみると、机を出して、ロザリーとハルトさんがいた。
後ろに回って声を掛けると、素早く剣を突きつけられた。
いきなりの事で驚いていると、私だと気がついてくれて、ロザリーが剣を下ろしてくれた。
「ごめん、カヨ」
「どうしたの!?ロザリー!誰か悪い人に狙われてるの?」
声をかけると困った顔をされた。
「いや、この街って冒険者が多いから治安が悪いだろう?マジックバッグを持って商売しているとよく襲われるんだ。だから兄ちゃんがメインで販売して、私が護衛してる」
「え!じゃあ、護衛を雇おうか?」
「う〜ん」とロザリーが悩んでいる。護衛、欲しいのかな?
「今の兄ちゃんと2人だけの商売が気楽だから、このままでいいかな?」
護衛はいらないらしいが、私が2人のことが心配だ。
創造魔法の出番だ。
創造魔法で、絶対防御・結界・自動治癒・毒無効・大きさ自動調整の付与をした劣化しない腕輪を二個作る。
「この腕輪を家から出かける時に身につけていて。結界を張ってくれるから」
「おお!ありがとう!さっそく兄ちゃんに渡してくる!」
接客をしているハルトさんの腕に素早く取り付けて帰って来た。
イシシッと笑っている。
「兄ちゃん驚いてたよ!ありがとうな!カヨ!」
「まあ、良かったよ。今日は別の用事でね、2人にお給料を渡すのを忘れていたでしょう?ごめんなさい。私すぐに忘れるから、2人がバナナとチョコを売ったお金で毎月の給料を貰ってくれる?その方が私の気が楽だから」
「ああ!それか!兄ちゃんは確か困ってたけど、私もお金を貯めてたから今は貸してる。売り上げ金から貰っていいなら兄ちゃんに言っておくよ。食材費もそこから出していいか?カルテが困ってるんだよ」
カルテはカヨが購入した料理人の名前だ。
「いいよ。ハルトさんに経理をしっかりしておいてねって伝言をお願い。今、店番から引き抜いたらお客さんに恨まれそう」
最後を茶化して言うとロザリーが笑った。良い笑みだ。毎日が充実しているのだろう。
「あ、あと、畑に置いてあるマジックバッグ全種類一つづつ貰っていったからね。また収穫をよろしくお願いします」
「任されました。夕方に収穫してるから確認しておくよ」
「それと、休みは取ってる?5日に一度と体調が悪い時は休んでね。カルテさんにも休みを取らせてね」
「いや〜、毎日、店開いてるんだけどさ、休んだら文句言われそうなくらい毎日人気なんだわ。どうしようか?」
えっ、2人が気楽だって言われたばかりで人員補充を提案するのは気が引ける。
「どうにかして休んでね!ずっと続ければお客さんだって休みの日を把握してくれるから!」
え〜って顔してるが、連日店を開いているのはロザリーだ。自業自得だ。
ここはロザリーの故郷であって、私が住む街じゃないからね。
「じゃあ、私はこれで行くからね。何か用事があれば畑の建物に伝言を残すかカルテさんに言っておいてね」
「えー、もういっちゃうのか。なぁ、子供を見せてくれよ。前と後ろにいるのは、カヨの子供だろ?」
下ろすのは大変なので、横から覗いてもらう。
「可愛い、可愛い」って言って撫でてくれた。
私は、早くロザリーとハルトさんがくっつかないか気になるんだけどね?
ロザリー達と別れたら、奴隷商に行く。獣人がいないか確かめる為だ。
以前にカルテを購入した店に行ったら獣人奴隷はいなかったので、他にも奴隷商はあるかと聞くと、商売敵なのか言いしぶられたが、金貨を手に握らせると教えてくれた。
教えてくれた2箇所にも行ってみたが、獣人奴隷はいなかった。
そういや以前に獣人は奴隷になりそうになったら農家になると教えてもらった事があった。行商で村に行った時に聞いてみるといいかもしれない。
住宅街の死角に入ったら瞬間移動してノアの部屋に帰った。
そこから自宅に行って、散髪屋さんに行くとカルロスさんとモニカさんがいたので、バナナとチョコの受け渡しをした。
「いやー、問い合わせが凄くてね、持ってきてくれてよかったよ。チョコとバナナには中毒性でもあるのかな?」
笑ってカルロスさんが言う。
確かに現代でも中毒性があった気がする。無くなったら「無いの?」って言われて常備しているのが普通だった。
「カルロスさんもモニカさんも食べていいですからね?私が営業している所で収穫出来る物ですから」
「いやぁ、あのお客さんの反応を考えると食べるのが怖いなぁ」
苦笑混じりに言う。
本音半分と言ったところだろう。
「昨日はお出かけだったんですね。何処に行ってたんですか?」
「ああ、来てくれたみたいだね。いなくてごめんね。あ、ミリーにマジックバッグを支給してくれたんだって?申し訳ないんだけど、今の経営状況だと、とても買い取り出来ないから中身を出したら返すよ」
散髪屋さんの経営は順調だけど、平民の富裕層並みの儲けなのは知っている。買い取ってもらうつもりは無いのだけどなぁ。
「散髪屋さんに支給するのがダメなら私の奴隷のコーディーに持たせてください。それなら大丈夫でしょう?」
「それなら、まあ、いいのかなぁ?ごめんね、気を遣わせちゃったね」
「いいんですよ。私が勝手にしていることなので」
立って散髪屋さんの中を歩いているリリーちゃんを発見する。
ルークを下ろして対面させてみるが、お互いに同年代には慣れていないのか、リリーちゃんは仕事中のモニカさんの所に行って隠れてしまった。スカートの中は安心するのだろうか?お客さんの切った髪がふりかからなくていいのだろうけど。
仕事の邪魔になるのでお暇して、キッチンにもバナナとチョコを支給する。
ダンテがいなくなるのを聞いたのか、みんな顔が硬い気がする。修行に行くだけだからね?
三階のルーフバルコニーの部屋に行くと、来た時は気が付かなかったがアイリさんが外に出て収穫してくれているようだ。微かな音がする。
ルークを自由にさせて、ユーリの授乳をしようとすると、ルークがおっぱいに吸い付いてきた!わーびっくりしたー。
ユーリを隣のソファの上に寝かせてルークを抱え込む。体勢が安定したようで、うくうくと飲んでいる。ユーリに嫉妬してるんだろうなぁ。兄弟仲良くして欲しいのだけど。
ルーフバルコニーから差し込む光に眠気が刺激される。大きなあくびが出た。ルークも温かいし眠くなるなぁ。
ようやくルークが満足したようで顔を上げたので、ルークの顔をぐちゃぐちゃに撫でてから、胸にクリーンを掛けてユーリに授乳させる。
ユーリ、飲めるかな?大分ルークに母乳を取られたけど。
おー、飲めてますな。安心する。
ルークが横から抱きついてきた。あー、これは嫉妬してるな。ルークの耳を優しく撫でる。落ち着けー、落ち着けー。
うーん、良くない傾向だ。マリーシャに預けてくるのだったかな?
とりあえず撫でられている間は大人しくしている。愛情が欲しいのだろう。
ルークのほっぺにちゅうすると、私のほっぺにもルークがちゅうをしてくれた!ええ!初めてじゃない!?
嬉しすぎてちゅう攻撃をしてしまった。逃げられた。
あ!勝手にノアの部屋に行っちゃった!うあーん、授乳中だから動けないよー!寝室のノブに手は届かないはずだけど。ベッドにも一人じゃ登れないはずだし、危険は無いはず。
とりあえず、ユーリの授乳が終わるまで待機。それしか出来ない。
あえ、ルークがひょっこりと顔だけ出した。きっと追いかけてきて欲しかったんだな。
こいこいと手でおいでおいでとすると、たたたっと来て私の横にピッタリと引っ付いた。可愛い、可愛い。
片腕だけど抱きしめてあげる。今はこれだけしか出来ない。
まだまだ、小さな身体だけど、自我が出来てきている。大切に育ててあげないと。
あ、ユーリが飲み終わった。
はい、ゲップしろー。
ルークが私の髪を引っ張った!やめろー!子供の力って意外と強い!
ユーリをソファの上へ寝かせて、ルークを捕まえる!
部屋の空いている所に連れて行って全身くすぐる!
お、髪を離してくれたけど、手が私に掴み掛かってくるので手をパシッと掴む。睨み合いっこだ。悪い子には容赦しませんよ。
「うー!うー!」って言ってる。
手をパッと離して、グイッと抱っこして振り回してやる。人間メリーゴーランドだぞー!
きゃーきゃー言って楽しそうだ。機嫌は治ったかな?




