アイーラ領の熊肉奥さんの元へ!
カヨはユーリを抱っこして授乳を済ませて、アイリさんとジェイスさんとリエちゃんの部屋をノックした。
アイリさんが顔を出してくれたので、中に入らせてもらう。リエちゃんもいる。アイリさんの仕事休みで一緒にいたのかな?
3階の部屋はカヨだけの使用にするつもりだったので、一部屋が広く取られている。
だが、ベッドとクローゼットしかないので、カヨは地球通販で親子3人が座れる大きさの華やかなソファ買い設置させてもらった。
「カヨさん、ありがとうございます」
「うん。今から座る場所がなかったからね」
3人はソファに座って、カヨはまた新しくマジックバッグを作るために地球通販を開いていた。
ピンク色のブランドバッグを選んで、マジックバッグ特大の付与と劣化しない付与をして、ルークブランドのハンコを押した。それから収穫用のカゴを沢山中に入れた。
「今までアイリさんが収穫した果物が入っているマジックバッグを貰える?代わりにこのマジックバッグを渡すから、またのんびりと収穫をお願いします」
収穫バサミを取り除き、マジックバッグを交換した。
カヨはマジックバッグをアイテムボックスに放り込む。
「そういえばジェイスさんの役場の試用期間が終わったでしょう?どうなりました?」
アイリさんの顔が嬉しそうにほころんだ。
「働きを認められたようで、本採用になりました。カヨさんの紹介のおかげです。ありがとうございます」
「それは良かったですね。ジェイスさんが真面目に働いた結果ですよ。アイリさんは無理していませんか?」
「無理してないですよ。ルーフバルコニーの果物を全て収穫し終わると次に実がつくまで時間が空くので今日みたいにゆっくりとお休みさせてもらってます」
そうか、それでプイがいつもより少なく感じたのか。
アイリさんが収穫してくれた果物が楽しみになってきたぞ。
「リエちゃんはどうですか?楽しく生活出来ていますか?」
「リエには新しい服を買ってあげられて、孤児院にもお世話になっているので、少し賢くなりましたかね?子供の成長を感じる日々です」
アイリさんと手を繋いでいるリエちゃんを見る。
以前よりも大きくなって肉付きが良くなったかもしれない。
「リエちゃん、毎日楽しい?」
リエちゃんは私を覚えてくれていたのか、満面の笑みで「楽しい!」と答えてくれた。
結構、強引に連れて来た自覚があるのでホッとした。いや、アイリさん家族も希望したか。
アイリさんに暇を告げて部屋を後にした。
よっし!熊肉の奥さんの所に行くぞ!
瞬間移動でアイーラ領の奥さんの村まで飛んでいった。
直接、奥さんの家の前まで来たので、目撃されてないか周りをキョロキョロと見て確認した。大丈夫そうだ。
家の扉をノックして待つが、出てこない。留守かな?
近くに人がいないか探知すると近くに2人の人がいたので、そちらに行く。
緑が生い茂る畑に出たので人を探すと奥さんがいた!
「奥さーん!カヨですー!こっちに来れますかー?」
「ちょっと待ってなー!」
畑から立ち上がって腰をトントンとしている。わかる。農作業は腰にくるよね。
緑生い茂る中を歩いてこっちに来てくれた。
「えーっと、誰だい?」
奥さんに覚えられてなかった。
「行商人ですよ。美味しい熊肉をご馳走になりました」
「ああー!あの太っ腹な商人さんね!あの時は沢山の肉をありがとうよ。旦那も子供達も大喜びだったさ!今日はどうしたんだい?」
「仕事の依頼というか、また熊肉料理を作ってもらいたくて来ました。対価は肉がいいですか?お金がいいですか?」
「おお!ありがたいね!対価は肉でいいよ!ちょっと家の中で待っててくれるかい?手を洗ってくるからさ!」
「それじゃあ失礼します」
気軽に家の中に入らせてくれたけど、家の中には誰もいなかった。田舎の村、誰もいないのに他人を入れるんだ。凄い。
以前に座らせてもらった椅子に腰掛ける。
すると元気よく奥さんが入って来て、机を挟んで正面に座った。
「以前は自己紹介もせずに失礼しました。カーマイン領に住んでいます、カヨ・カーマインと申します。今後ともよろしくお願いします」
奥さんがギョッとした顔をした。
「お貴族様だったのかい!?あっ、失礼しました!無礼打ちをしないでください!」
この反応にはカヨが驚いてしまった。
「奥さん、奥さん、落ち着いてください。私が奥さんに仕事を頼んでいる立場ですよ。無礼打ちなんてしませんから。
それに、貴族って言ったって領主の弟の嫁ですから、ほとんど庶民ですよ」
奥さんが上を向いて深呼吸している。驚いた身体と心を落ち着かせているのだろう。
「そ、それじゃあ、わざわざ来なくても熊肉料理を作ってくれるだろうに」
「いやいや、領主の弟の嫁だから、あまり勝手な事もできないんですよ。奥さんに頼むのがちょうどいいですって。あ、あと気安く今まで通りに接してくれていいですよ」
ちょっと顔から血の気が引いた奥さんが本当にいいのか確認してきたので、本当だと了承した。
「あー、あー、心臓に悪いねぇ。
熊肉料理を作るなら1度で3ラル(3kg)ほどだよ。ひと鍋でいいのかい?」
「あー、出来れば2鍋ほど欲しいですね。作れますか?」
「今から仕込みをしたら作れるよ。じゃあ熊肉を出してくれるかい?」
アイテムボックスから解体してある熊肉を6ラルほど出す。
あと、地球通販で銅鍋を2つ購入する。そして、それも出す。
「出来ればこの鍋で調理してほしいんですよ。銅鍋です」
また、ギョッとした顔をされてしまった。こっちの世界でも銅鍋って高いのかな?
「凄い輝きだねぇ。さすがお貴族様だ。了解だよ。明日取りにくるかい?」
「はい!明日取りにきます!」
もう、口が熊肉なのさ!
「あー、じゃあ報酬は今貰っていいかい?きっと肉の匂いがしたら家族が食べたがるだろうから」
「何の肉がいいですか?いろいろとありますよ?」
「出来れば熊肉をくれるかい?熊肉の匂いをさせてるのに食べられないんじゃ悲しいからね」
私は熊肉を10ラルほど出した。10kgぐらいだ。
「こんなに貰っていいのかい?くれるなら貰うけど」
「当然の対価ですよ。魔物肉なんで美味しいですよ!味は落ちるかもしれませんが1ヶ月は待ちますよ」
「魔物肉かい!嬉しいねぇ。家族が喜ぶよ。ありがとうよ」
帰り際に奥さんの名前と村の名前を聞いた。
アイーラ領のクルス村のベティーさんでした。
村を歩いてのんびりと街道に出たら、瞬間移動でノアの部屋に戻ってきた。
のんびりとユーリに授乳させながら、雑貨屋のイザベラさんのお店も覗いて行こうかなと思った。
ユーリの授乳が終わったら搾乳機で母乳を搾り、終わったらアイテムボックスにしまって、ユーリを抱っこして雑貨屋に向かった。
一階に降りたら、雑貨屋の裏口をノックして中に入ると、ショーンさんが店番をして、アメリアさんとイザベラさんがミアちゃんと遊んでいた。のんびりしてるなー。
少し見ないうちにミアちゃんが大きくなって立って歩いている。
ショーンさん一家は真面目な治癒師の時にショーンさんに頼まれて死んだアメリアさんとミアちゃんを生き返らせた縁でここにいる。
「ミアちゃん大きくなりましたねー」
「カヨさんは子供が産まれてたのかい?男の子かい?女の子?」
イザベラさんが聞いてくれるけど「男か女かわからないんですよ」と言うと、抱っこさせてくれと言われたので、抱っこ紐からユーリを下ろしてイザベラさんに抱っこしてもらった。
「あー、獣人の赤ちゃんはかわいいねー。いいねぇ」
アメリアさんとミアちゃんも覗いて見ていた。
可愛いと言われると照れくさくなるね。
私はミアちゃんを鑑定で見た。
後遺症も無く元気に育っているようだ。
「こっちの暮らしには慣れましたか?」
イザベラさんとアメリアさんが同時にカヨを見た。イザベラさんが発言する。
「王国の直轄地で領都で王都が近いだろう?以前より商品の売れ行きが良くて儲けさせてもらってるよ。ショーンが店番してくれるから仕入れにも行けるし、今日みたいにミアと遊んであげられる。神の国に来たみたいさ」
ちょっと茶化したように言われるが楽しんでいるようで何よりだ。
「ミアちゃんも孤児院に遊びにいかせるんですか?」
「もうちょっと、3歳くらいになったら行かせてもいいかもねぇ。まだお漏らしするから出かけられないの」
今度はアメリアさんが答えた。
そうか、私はユーリにもルークにもおむつをつけてるから関係ないけど普通は出かけるのも一苦労なのだ。
「カヨさん、家賃と食費はパルコさんに納めてるから確認をお願いね」
イザベラさんが言ってくれたけど、そんな事は知らない!
「家賃なんていらないですよ!ここに住んでいる人が仲良くしてくれたら嬉しいだけですから!」
「そう言う訳にはいかないよ。お金はなぁなぁにしとくといい事がない。しっかり家主として締めてくれよ」
先人の言う通りでございます。
有り難く受け取っておくことにした。




