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【旧作】私は異世界で自由に生きる〜子供達に癒される〜  作者: 春爛漫


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北のウエストル伯爵領へ

 そろそろ治療に出掛けたいと思います。


 目標の海まで行ったから、北に行くか南に行くか迷ってるんだけど、どうしよう。


 困った時は役場で聞き込み。


「この町から、北か南ですか?評判の良いのは北のウエストル伯爵領ですね。堅実に領を治めていると評判ですよ。南は近々、領地の領主が変わるかもしれないですから、少し荒れると思います」


 役場のお姉さんは良い人でした。北のウエストル伯爵領に行きましょう。


 近々、領主が変わるとは穏やかではないが。



 ルークをおんぶして、ユーリを抱っこ紐新生児用で抱っこして出掛けています。

 ルークは海を見て、足をバタバタさせているので、少し海で遊ばせてあげますか。


 前のように、波打ち際で裾と袖を折って、海に足をつけさせる。興奮して「あー!きゃー!」と奇声を上げているが、楽しいんだよね?波を追いかけに行くのは止める。不満そう。

 海は怖いんだって。ルークなんてすぐに波に攫われちゃうぞ。


 ルークがお腹が空いたみたいなので、お乳を飲ませる。ユーリも「ほぎゃあ、うぎゃあ!」と泣き始めたので、ルークが飲み終わったら授乳させる。


 ユーリとルークを抱っことおんぶして、北のウエストル領までインビジブルを掛けて道を飛んで行く。この道はあまり使われてないみたいだ。魔物の探知もしていこう。


 飛んでご機嫌なルークと、飛行初体験のユーリと一緒に飛んで行く。

 風よけの結界を張って飛んで行くと、途中でウルフの群れが来たので即死魔法で倒してアイテムボックスに放り込む。あまり使われない道だから、兵士などの見回りが少ないんだろな。自分が餌になるのはごめんだが。


 ユーリの為にゆっくりと飛んだから、お昼を挟んで午後の4時頃に隣の領地の海の町に来た。


 ここは素朴な町だなぁ。自給自足と言えばいいのか貧困ではないが、贅沢もしていない町に見える。

 自領の為の塩は作っているみたいだが。


 真面目な治癒師に変身して、役場で紹介状を渡す。今まで紹介状も沢山貰ったな。良い役場の責任者が多かった。


 椅子に座って待っていると、すぐに呼び出された。町長の所だ。私の事を知っていたみたいで「ようこそ我が領地へ」と歓迎された。私の進路が予想されていたみたいだ。北へ行くか南へ行くか。住んでいる人からすれば、病気や怪我は一生の問題だから来てもらいたかったらしい。


 治療は3日後になった。子供が生まれた事にお祝いの言葉をいただいた。知らない人でも嬉しいな。ね、ユーリ。まだ、何も分かりませーんて顔だな。生後1ヶ月の赤ちゃんなら仕方ない。食欲と睡眠欲だけだろうしね。


 役場での用事も済んだし、散歩でもして帰るか。


 元の姿に戻って歩いていると、何か、側溝にハマってる子がいる。もがいているけど、出れないみたいだ。匂いもかなりする。ユーリが泣き出した。匂い遮断の結界を張る。


 念動力で側溝から子供を持ち上げて、クリーンできれいにしてあげる。どこの子かと聞けば、孤児院の子供らしい。1人で探検していたらハマって出られなくなってしまったようだ。助けを求めても匂いで誰も近寄ってくれなかったらしい。掃除しろよ。


 助けた子と一緒に孤児院に行く。服はあまり良い物を支給されてないみたいだ。この町の人達もそうだけど、着れるまで着る文化なのかな?


 孤児院に着いた。新しく建てたみたいで綺麗な建物だ。


「院長ー。お客様が来たー!」


 助けた子が院長を呼んでくれる。


 奥から中年の男性が来た。


「はじめまして、この孤児院の院長です。ご用件はなんでしょう?」


「助けてくれたー」


「これ、ワン!また抜け出したのですか!」


「探検だよ!男のロマンだよ!」


「こら!また訳の分からない事を言って!もう勝手に抜け出してはいけませんよ!」


 ワンは孤児院の奥に逃げ出した。


「ありがとうございます。うちの子を助けていただいたみたいで」


「いいえ、孤児院にも用がありましたし、側溝にハマっていた子を助けたら、孤児院の子供だっただけです」


「側溝に、ありがとうございます。孤児院にご用がお有りで?」


「支援と寄付金を納めさせていただこうと思いまして」


「本当ですか!?ありがとうございます」


 とんとん拍子で、子供達を集めて、服や下着、靴の支給が始まった。院長が手伝ってくれているので楽だ。


 治癒魔法も使えると言えば、以前はストリートチルドレンだった子供達を見てほしいとお願いされて治療した。

 古い傷跡がいくつかあった。やるせない気持ちになる。


 私は子育ては守って甘えさせるだけでなく、体に痛い思いも心の痛みも覚えて、優しい子に育って欲しいと思っている。まぁ、手の届く場所で大怪我されてもたまらんので助けるが。


 だが、虐待やいじめなどを放置することは許さない。孤児院の子供達の怪我はどのようにしてついたかわからないが、あまりいい怪我では無いような気がする。


 今、読心を使ったが、子供達が理不尽に受けた傷跡だと分かる。院長が良い人だってことも。

 奥さんが厨房で料理しているようだ。2人の子供が買い出しに行っているらしい。孤児院に住む人数が多いから買い出しを1日2回は行かないといけないようだ。


 いるのはアイテムボックスの付与だな。


 善人にはあまり読心を使いたくないのだが。分かる情報が多い。この町にはあまりガラがよくない人物がいるようだ。小悪党だな。捕まえに行くか。だが、軽犯罪ではすぐに娑婆に出てくるだろう。どうしたものか。神の怒りを落とすか。重犯罪の者にしか使いたくはないが、更生できない人には必要だと感じている。


 今日は時間がないから明日だな。


 院長は真面目に子供達に似合う服を探している。良い人だ。


「ただいま〜」


 お子さんだな。あ、ユーリが口に手を入れている。お乳が欲しいらしい。ルークを床に下ろして、ポンチョを着てユーリにお乳を飲ませる。ルークが対抗するように私の目の前に来た。ルークもお乳か。順番待ち出来て偉いな。ルークを褒める。


 お子さんが来て、不思議そうに私を見て会釈をする。院長の所に行っている。成人してちょっとたったくらいか。一緒に服を選びだした。悪い人では無いみたいだ。


 ユーリを簡易ベッドに寝かせて、ルークにお乳を飲ませる。おっぱいから飲めない時は不満そうだったからなぁ。満足してくれてるといいなぁ。


 ルークが飲み終わったら、よちよちと子供達の所に歩いて行った。小さい子は仲間だと思ってるのかな?お、可愛がられてる。あーあ、耳触られちゃった。小さいから分からんのかな?嬉しそうだから放置でいいか。


 お、院長が来た。服などを選び終わったようだ。あとは寄付金、金貨300枚渡しますかね。


 後は魔法を使っていいかの質問タイム。奥さんの所に行きましょうか。


 親子3人に質問していく。何だか悩んで回答しておりますな。今のうちに鑑定して適正をメモる。


 そして最後の質問「貴方は魔法が使えたら何を使いたいですか?」


 買い出しの兄ちゃん、じゃなくて、2人のお子さんは早かった。アイテムボックスが使いたいって。考えてた通りだね。

 奥さんは料理で火傷することがあるから、治癒魔法が欲しいと、院長は人の心を読む魔法が使いたいと。


 院長、禁忌に触れますね。「何故?」と聞けば、子供達の思いを理解してあげたいからだそうだ。読心も真偽判定も使いましたが、嘘は無いね。う〜ん、人間不信にならないかな?


「院長、人の心を読むのは禁忌に近いです。覚悟はありますか?」


「覚悟はその力を制御する場合にするものだと思っています。魔法の使い方がわからない今は、覚悟以前の問題だと思います」


 なかなか、難しい問題じゃないか。まぁ、読心が使える人が1人増えるだけで、その後は自己責任だ。使わない選択もできるしね。


「いいでしょう。皆さんに魔法の付与を行います。苦しいので、心構えをして下さい」


 一呼吸置いて3人に魔法の付与をする。


 アイテムボックスから『初めての魔法』の本を出して院長に「子供達に魔法を教えてあげて下さい」とお願いする。

 院長がびっくりしたように見てきたが、笑って受け取ってくれた。

 適正を書いた紙も3人に渡した。



 ルークとユーリをおんぶに抱っこして、孤児院から帰る。

 院長は「ありがとうございます神様」と礼をしてくれた。バレたか。私の心も読めるもんな。俗物な神ですまんよ。


 瞬間移動でカーマインの屋敷に帰った。





 治療の日。


 あ、小悪党は捕まえたよ。詰所に連行してやった。


 私は真面目な治癒師に変身して、ルークとユーリと役場に来た。ベビーベッドにユーリを寝かせて、役場から出ないように紐の長い子供用ハーネスをルークにつけてベビーベッドに繋いでおいた。これで危険のないように自由に動けるだろう。紐が邪魔だろうが。


 偏見は無いようにしていたが、両性具有の人、インターセックスの人が治療に来たら、ユーリが生まれたからか見る目が変わったような気がする。


 今までは、心と違う身体で不便で悩みの多い人生だったんだな、と思っていたのが、ここに治療に来る勇気を称えたくなった。


 知られたくないだろう身体を自分で声を出して『男性か女性の身体にしてくれ』と言葉にするのだ。一縷の望みを掛けて。私は創造魔法と治癒魔法があるので希望に沿う治療が出来るが、普通の治癒師は出来ないだろう。人によっては好奇心だけで近づいてくる人もいるかもしれない。それでも、治療を諦めていないのだ。勇気ある行動だ。尊敬すらする。


 私はユーリの性別を恥ずかしいとは思っていないが、ユーリ本人は成長と共に悩む時がくるだろう。ましてや獣人だ。番い相手によっては更に悩むかもしれない。一緒に悩みを共有して孤独に、卑屈にならないように導いてあげたい。


 多分、諦めて治療に来ていない人もいるだろう。その人達にも勇気を、自分の身体に自信を持って欲しい。同性同士でも子供が出来るのだ。インターセックスの人だって、この世界では結婚して子供を授かる事が出来るはず。


 治療するもしないも本人の選択だ。確率的には100人に1人はいるはずだから。


 今まで何人も治療してきた。身体1つ、気持ち1つで人生が変わるだろう。


 自分に自信を持って欲しい。



 治療に来る人の合間にユーリやルークに授乳しながら、お昼にクリムを食べて乗り切った。


 夕方には治療が終わった。いつものように手伝ってくれた人達に果物バスケットを配って、お金や机、ベビーベッドなどを回収してユーリとルークと役場を出てから、瞬間移動でカーマインの屋敷に帰る。


 ルークには肩身の狭い思いをさせたかもしれない。離乳食も食べれなかったし。

 今度から治療に行く日は屋敷で、お母様かメイドの人に世話を任せた方が良いかも。


 ノアの寝室でユーリをベビーベッドに寝かせて、ルークを下ろして抱きしめる。

 一緒にいたいのは、私のわがままかな?


 私は答えが解らないままだった。




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