再度、シガマラン国へ
私が初めて神の仕事をしたシガマラン国にルークをおんぶして行って、カイさんかリンドンさんに取り次ぎを兵士の人にお願いすると、リンドンさんが来た。
「久しぶりです、カヨ様。カイは今、長いこと調査に出かけていて消息が分からんのです。心配してはいるのですが何処にいるのか分からず……。この領都はカヨ様が粛正してくれたので、前よりマシですが、今度の領主もちょっと怪しくて、何を信じればいいか分からず、カヨ様が来てくれて良かったです」
新しい領主も信用出来ないって、この国どうなってるの?カイさんも心配だし……。
「念の為、兵士を数人貸して下さい。今から領主館に行ってきます。そのあとにカイさんを探すので、この国の地図を用意してもらえると助かります」
「おお!行ってくれますか!これで安心出来ます。兵士を呼んできますね」
リンドンさんが兵士を20人位連れてきてくれた。歩いて懐かしの領主館まで歩いていく。嫌な懐かしさだな。
道を歩けば悪人に当たる、というこの現状。この領都少しマシになっただけじゃないか。兵士20人でも足らない。残った兵士が応援を呼びに行ってくれる。
待っている間に通りかかった犯罪者を捕まえておく。マジで強姦は止めてよ。嫌な記憶が蘇る。少女達が安心して暮らせないじゃないか。物取りがかわいく見える。
犯罪者が多い場所に神の目はキツい。押し入り強盗なんかの犯罪歴が意識しなくても見える。殺人までしてたら最悪だね。
応援を待っている間に10人位犯罪者を捕まえていると、また兵士が応援を呼びに走って行った。兵士100人位、必要じゃない?
凄い数の兵士が来たので、住人達が何事かと見てくる。ちょっと恥ずかしい。先頭にいるのが乳児をおんぶしている女で、すまんねぇ。
領主館に着いたら、兵士が50人位になってた。よし!行くぞ!強制捜査だ!領主館に入ろうとしたら、警備の兵士が止めてきたので、神気を当てるとひざまづいて祈り出した。やっておいて何だけど、ちょっと怖い。
スルーして領主館に入って犯罪者を捕まえる。まだ、就任して日が浅いせいか悪人は少ない。探知を使って全員の居場所を見て行く。前ほどじゃ無いな。
領主の執務室に入ったら、黒い人と善人な人に分かれていた。これはあれだな、人手不足だな。酷い悪人には神の怒りを落とす。他は犯罪歴を兵士にメモさせて、バインドで捕まえる。善人の人は目を白黒させている。ごめんよ、驚かして。
確認すると、新領主が悪人だったらしい。この国の上層部ロクな人が居ないんじゃ無いだろうか。心配だ。
領主の屋敷にも行ったが、家令だけ犯罪者だった。
帰り道でも犯罪者を捕まえて帰る。のこのこ歩いてるのを恨むんだな。
兵士の詰所に帰ると、リンドンさんがこの国の地図を持って待っててくれた。リンドンさん以外の兵士がバタバタしてる。仕事を増やしてごめんよ。
マップを起動させて、この国の地図を読み込み、カイさんを探知で探す。神になってから出来る事が増えたんだよ。
リンドンさんにお礼を言って、カイさんの居場所が分かったので行ってくると言い、インビジブルを私とルークに掛けて瞬間移動する。
暗い、臭い。ルークに匂い遮断の結界を掛ける。カイさんが牢屋に入っていた。いつから入っているのか髭が伸びている。カイさんに小声で呼びかける。
「カイさん、カイさん、カヨです。聞こえますか?」
「……カヨ様?いらっしゃるのですか?」
「居ますよ。クリーン掛けますからね。服も着替えてね」
ボロの服を着ているので、新しい服をアイテムボックスから出す。怪我もしているようだ。治癒魔法を掛ける。
「ああ、カヨ様、助けにいらしてくださったのですね」
「どうして捕まっていたのか説明してもらえますか?」
ルークが「あうあー」と声を出した。消音の魔法を創造魔法で造りルークに掛けた。
カイさんの言い分は、私が居なくなった後の新領主が怪しかったので、領主を任命している王都に単独向かったそうだ。そこで、王城に告発の手紙を出して返答を待っていたら、宿に兵士が来て囚われたそうだ。カイさんは何が何やらわからずに捕まってこの牢屋に入れられたらしい。
王城に手紙を出した後に捕まったんじゃ、城の人が関係してるの丸わかりじゃないか。
電気シェーバーを魔道具化した魔道具シェーバーと地球通販で買った鏡を渡して、髭を剃ってもらう。音をさせても看守が来ないって事は部屋の中には居ないらしい。そういやノアの髭剃り見た事ないな。こっそりと剃ってるのかな?ちゅうしても痛くないぞ。
頭が明後日な方向に向いてしまったので、現実に帰る。カイさんが髭を剃り終わっていた。創造魔法で剣と鞘を作り、カイさんに渡す。身の安全の為だ。シェーバーと鏡はアイテムボックスにしまって、創造魔法で開錠施錠の魔法を造り、牢屋から出る。カイさんも一緒だ。
他にも無罪の人がいるか牢屋の中を見ると、半々ぐらいで無罪の人がいる。今は助けられない。ごめんね。
カイさんに離れてもらって牢屋と隔てている扉の鍵を開けて扉を開くと見張りが1人居た。この人は悪い人じゃない。神気を当てるとひざまづいた。カイさんが声を掛けて、ここは何処だと聞いている。王城の地下牢だそうだ。私も神気を出したまま「付いて来るように」と言えば、真面目な顔をして付いてきた。仲間は多い方がいい。牢屋を施錠しておく。
時間が惜しい、すれ違う人で犯罪歴がある者にバインドを掛けていく。探知で王を探すが分からない。兵士に先導してもらう。余りにも酷い犯罪歴の者にはバインドを掛けた後、神の怒りを落としていく。犯罪者の中には兵士も居た。ここは誰が味方かは神の目を信じるしかない。
どんどん進んで行くにつれて背後の騒ぎが大きくなっていく。いきなり魔法で拘束されて人が倒れるんだもんねぇ。驚くわ。その人の中に神の怒りがついていたら、もっと驚くよね。すまんよ善人達。
何か、兵士君の後を付いて行くとだんだん煌びやかになって来た。兵士君が通れない区画に来たようで、近衛の人だろう人に止められた。神気を放つ。2人いて1人はひっくり返り、1人は跪いた。ひっくり返った方は悪人に手を貸している。バインドで捕える。心にやましい事があるかどうかなのかもねぇ。あと、信仰度とかも関係ありそう。
もうインビジブル掛けなくていいや。魔法を解いて、バリアだけ掛ける。ルークの声が聞こえるようになった。あ、もうすぐお乳の時間だ。全部終わるまで、待ってくれるといいな。
近衛の人も仲間に加えて歩いていく。先導は近衛の人だ。兵士君はカイさんと一緒。
う〜ん、悪人が多くなってきたぞぅ。これは王様黒かな?近衛の人が1つの扉の前で止まった。ここか。扉を開けると黒いもやだらけだ。かろうじて人形が見える。犯罪歴を見ながら、神の怒りを落としていく。1番奥に3歳くらいの綺麗な衣装を着た子が居た。
「あなたどうしたの?お父さんとお母さんは?」
「僕がここに座って、国璽を押さないといけないんだって。お父様とお母様は会えない所にいるんだって」
小さな子供に悪事を加担させていた事、後悔させてやる。犯人は誰だ!神の怒りを落とした者を見て行く。多分こいつだ。職業が副王になっている。そんな位初めて知ったわ。襟首を持ち上げて顔に拳を入れる。何発も入れれば起きる。読心と真偽判定をonにしておく。
「な、なんらね、きさま、なにをしておる!だらかおらんか!?」『誰だ!顔が痛い!何で誰もおらんのだ!口が動かん!何故だ?」
「あんたね、王位を簒奪しようとしたのは。本物の王様は何処にいるの?」
「なんのことら!おまえはだれら!」『何を知ってる?この女は誰だ?何故わしは床で横になっておる!?本物の王だと?幽閉してやったわ』
神気を副王に当てると、怯えたように逃げようとする。
「正直に言いなさい。玉座に座っている子の親よ。何処にいるの?」
「っ……」『なんだ、怖い、逃げたい、これは何だ、体がいう事をきかん、怖い、怖い、怖い、怖い』
おどかせずぎたようだ。思考から読み取れない。顔を殴るが、余計に怯える。こりゃダメだ。対応を間違えた。手にクリーンを掛けて、次の協力者を探す。宰相か。この人なら知ってるかも。
今度は平手で顔を叩く。何でか叩いても手が痛くないんだよね。普通は叩く方も痛いはずなのに。さっきなんて拳で殴ってたし、神のスペックかしら。
お、目が覚めたらしい。
「王様は何処にいるの?」
「……」『ん?頭がぼんやりする。王だって?王なら北の塔だ。兵士がいるはずだが』
あらら、すんなりわかっちゃった。夢見てるみたいにぼんやりしてる。
近衛と兵士君に北の塔まで案内してもらう。
多分王様の子供は私が身体強化で抱っこして連れて行く。後ろの我が子と目が合ったみたいだ。ルークが喜んでいる。子供は恐る恐る手を伸ばしている。多分ルークが手を握ったんだろう。驚いた声を出した。リアクションするとルークが喜ぶぞ。
黙々と歩いて、悪人をバインドで縛っていく。この城、汚染されてるな。
北の塔に着いた。兵士は黒だ。バインドで縛る。階段を上がっていく。結構広いな。侍女がいる、黒だ。バインドで縛る。牢屋のような鉄棒で部屋が分断されているが、中には痩せた男女がいる。5人はいるな。
子供をみて「エーブラム!」と叫んでいる。神の目で見ても王になっている。魔法は使えるようで、身体は綺麗だ。鍵を開錠すると、中に居た人が私に群がってきた。エーブラム君は「お父様!お母様!姉上!兄上!」と叫んでいる。とりあえず王様らしき人にエーブラム君を渡す。みんな家族なんだろう。抱きしめ合っている。
私にお礼を言ってきた。
「私は地上神、運命神様の眷属神・希望と破滅の神です。私は後ろにいる3人の兵士に導かれてやってきました。お礼は彼らにお願いします」
驚いていたが、神罰が来なかったからだろう。ひざまづいて祈り出した。
身なりを整えて、王の仕事をして欲しいと頼むと立ち上がり、王族みんなで歩き出した。近衛が王の斜め後ろにつく。兵士とカイさんは1番後ろを歩く。私は何故か近衛君の後ろだよ。守られてる?
王族が暮らす区画なのだろう。侍女や近衛、メイドが居る。犯罪者はバインドで捕まえる。王族はここに来るまでも見ていたので驚かないが、捕まった人を見て驚いていた。顔見知りでも居たかな?
善人の人に付き添われて、着替えの準備をしているようだ。私は着替えに付き添わないよ。
おお、みんな服のサイズは合ってないけど、キラキラした衣装になった。王族!って感じのオーラがビシバシ来る。
王様に、バインドで捕まっている人は犯罪者で、牢屋に無罪の人がいるから解放してくると言って別れた。カイさんがついてこようとしたが、王族がまだ危ないのでついててあげてと残してきた。
牢屋に瞬間移動してカイさんが居た牢屋に着いた。ここしかマップでチェックしてなかったんだよ。
広い牢屋を回って、無罪の人を出してクリーンを掛けていくが、王城で囚われていた人だけあって、魔法が使える人が多かった。
犯罪者に「俺も出してくれ」と言われたけど、犯罪者を出す馬鹿が何処にいるって言うのさ。
外界と隔てる扉の鍵を開けて、無罪の人を出す。みんなに自分で帰れるか聞いたら帰れる人と帰れない人に別れた。
帰れる人とはお別れして、帰れない人は何で帰れないのか聞けば、自分が近所から犯罪者と知られているから、家族の元に帰れないと言う。
残っているのは数人だ。私は「神に仕える気はあるか?」と問いかける。自分の行き場所だと思ったみたいでみんな「仕えます」と言った。神官の印を残っている人に付ける。驚いていたが「これで家族の元に帰れるでしょ?」と言えば、泣いて感謝された。何の神の印か聞かれたので「希望と破滅の神だよ」と答えた。
お金を渡して「着替えて帰りなよ」と送り出す。
みんな丁寧に挨拶して帰っていった。良い所の人なのかな?ボロ着てても優雅。
私は授乳ポンチョを着てルークにお乳をあげた。ルーク泣く寸前。間に合った。
授乳が終わったら、適当に城を歩いて犯罪者をバインドで捕まえて行く。どんだけいるのよ犯罪者。
人の反応が探知にあったら、部屋の中でも扉を開けて人を見て行く。1人は部署で監視の為か協力者がいるんだよね。たまに他の人が責めてくるけど「王様に聞いて」と言えば黙る。少なくとも今までの王城の事は知っていたみたいだ。長いものに巻かれたってとこかね。
お昼が近くなったら、カーマインの屋敷に帰る。
食堂でルークに離乳食を食べさせる。いい子だね、口が開いて。
午後からまた王城だな。




