ロザリーとハルト 仕事決定
1日休みを挟んで、翌朝、朝食が終わったら、ルークをお母様に預けて、キノクニー街の冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドの中を覗くとロザリーとハルトさんが居た。
「ロザリー、おはよう。ハルトさんも連れて来たの?」
「おはようカヨ。カヨに言われた商売の事、考えて来たから、聞いて欲しいの」
私は2人の向かいに座って話を聞く体勢になる。
「私と兄ちゃん2人をカヨが言った条件で雇って欲しいんだ。兄ちゃんは一応、事務やってたから経理出来るって」
「分かった。決めてくれてありがとう。ロザリーとは友達兼経営者として付き合っていきたいな。ハルトさんも給料の通り1人の従業員として働いてもらいます。ロザリー、今日はダンジョンに潜る?それとも、2人が住む土地を探しに行く?どっちでもいいよ」
ロザリーとハルトさんが相談をはじめた。住む家が気になるらしい。じゃあ役場に行きますかね。その前に2人に住む家の立地や家の大きさを確認しないといけない。
紙とペンを取り出して、2人の要望を書いていく。初めは遠慮がちな2人だったが、私が新しい家でもいいと言ったら、前のめりになって2人で相談しながら要望を出していった。
ふむ、個室が欲しいのね。「お風呂は?」と聞くと「お貴族様みたい」と欲しそうだったので書き加えてトイレに料理人の部屋とキッチンにダイニングとリビングを一室にしちゃえばいいか。部屋は鍵付きだな。他人が生活するので気も使うだろう。2階か3階にするのか悩みどころだな。土地の大きさで決めればいいか。
カヨは新築を建てる気満々だ。
3人で冒険者ギルドを出て、役場まで歩いて行く。
役場に着いたら、土地を買いたいと伝えれば商談に使うスペースに座ってお待ち下さいと言われたので、6人がけの椅子に3人並んで座る。
担当の人が紙の束を持ってきて挨拶してくれる。挨拶を返すと正面に座り、どのような家がいいか聞いてくるので、家は建て替える事を伝えてロザリー達の希望の立地を選んでもらう。
何軒かの家の書類を見せて貰ったが、全部、庶民街で土地が狭かったので、もっと広い土地をピックアップしてもらう。ロザリー達は困っていたが、これからずっと住む家だから、妥協してはいけないと言えば、表情をキリリっと変えて書類を見始めた。
最終的には何軒か案内してもらい、後は2人に決めて貰った。富裕層に近い庶民街の、家はそこそこ古い土地を希望したのでそこに決めた。
家は立て直しすると言ったが、まだ住める家なので会計に加えないといけないと言われた。家の値段込みでミスリル貨3枚と金貨250枚を支払った。ロザリー達は軽く震えていたが、私は億の家を持っているので、今更である。
書類を貰ったら、買った家まで行って家の中を軽く見てから、中古の家で売れると思い、アイテムボックスにしまっておく事にした。
ロザリー達は、家がいきなり消えたので驚いていたが、家が無くなったら、そこそこ広い土地に見える。
新しい家の間取りを考えて、外観は隣の家に合わせる事にした。地面を圧縮してから平らにして、創造魔法の魔力で土地を満たして家を頭の中でイメージする。魔法を発動させれば新しい家が出来た。2人はこれ以上ないくらい驚いていた。
鍵は複数用意して、ロザリーとハルトさんに渡して鍵を開けてもらう。ワタワタしていたが、開け方が分かったらしく家の中に入って行った。
ここは私の家じゃないので、靴は脱がずにそのまま入って2人の後に着いていく。自宅で使わなくなったダイニングの机と椅子を出してセットする。私はキッチンに行き、お皿とカトラリーだけは地球通販で購入して、作り付けの食器棚にしまった。冷蔵庫は置いて置こうと家族5〜6人分くらいの冷蔵庫を魔道具化して買って、魔石を隠蔽しておいた。
2人は2階に行ったようで、1階にはいなかったのでリビングにソファと机をセットした。あ、お湯沸かす魔道具もキッチンに置いておこう。いつでもお茶が飲める。取り扱い説明書を一緒に置く。
お風呂場に行ってお湯が出る魔道具をセットして、風呂用品も置く。洗濯機と乾燥機を魔道具化した物を置いて、魔石をトイレまで隠蔽する。
2階に上がると部屋を決めたみたいで、ロザリーから家具の要望を聞いて、地球通販の画面が見えてないのを利用して、ベッドや家具を購入すると、私がアイテムボックスから出したと思ったのか、ロザリーが驚いた。何処にベッドや家具を置くのか聞いてアイテムボックスで場所を移動する。ロザリーの部屋が出来たら、ハルトさんの部屋だ。ロザリーも一緒に来てハルトさんの要望を聞く。シンプルなのが好きなんだね。部屋にベッドと家具を出したらハルトさんも驚いた。家具を移動したら、料理人の部屋だ。
階層は2階の部屋にした。周りの家に合わせた結果だ。
料理人の部屋は2人から遠い部屋にする。2階には部屋が5部屋あるんだよ。料理人の部屋は自宅でみんなに与えた部屋みたいにした。私は奴隷商に行くから、バケツを2つアイテムボックスから取り出して、2人にスライムを15匹購入するようにお願いする。
私は単独で、ハルトさんを購入した奴隷商まで歩いて行く。マップにチェックが入ってるからね。
奴隷商に着いたら、料理人を買いたい旨を伝えて案内してもらう。真偽判定と読心は使う。
最終的には中年の性格が良い人を選んだ。
料金を支払って、奴隷商を出て料理人にクリーンを掛ける。お店が集まっているところに行って、身の回りの物を選んでもらう。とても謙虚な人だ。出来るだけ良い品が売っている店で買わせる。
家に着いたら、ロザリー達は帰って来ていて、スライムをどうしたらいいか分からずに悩んでいた。
料理人を紹介して、2人に挨拶をさせる。これから同居するからね。ハルトさんに料理人を案内させて、ロザリーに魔道具の使い方を教えてスライムを排水溝に入れていく。何か目が回りそうになってたけど。
ハルトさんと料理人の人が来たら、料理人の人に1年分の給料を渡して、別にマジックバッグ特大と食費を渡す。
この家は魔法が使えないと住めないので、料理人には生活魔法のスクロールを渡して、ロザリーとハルトさんには、これから必要になる飛行魔法を付与した。
3人を鑑定して適正魔法を教える。ロザリーは苦しんだので睨んできたが、魔法が使えるようになるよと言えばイチコロだった。
瞬間移動で自宅のルーフバルコニーに行き、石鹸の木の枝を切ってロザリー達の家に帰る。
リビングとダイニングの間の壁際に大きいプランターを置いて土を入れると石鹸の木を挿して、魔力を込めると成長した。3人は驚きすぎて声も出ないようだ。3人に正気に戻って貰って、この木は石鹸の木で実がどんな物でも洗えると説明して、料理とお風呂と洗濯に使うように指示する。
私は帰るから、働く準備が整ったらまた来ると言ってカーマインの屋敷に帰った。
子供部屋に行くと楽しそうな声が聞こえてくる。お乳の時間に間に合ったようだ。お母様に挨拶してソファに座る。
メイドが用意してくれたフルーツミックスジュースを飲んで、一息つく。今日は動きすぎた。頭が疲れている。ジュースがおいしい。料理長は料理の研究に余念がないようだ。
ルークが高速ハイハイを覚えたようだ。速い速い。一生懸命、動いてるのは可愛いが。お尻が可愛い。尻尾がぴょこぴょこしてる。足が痛くないのかな。あっ、こっちに来た。足元まで来たので抱っこすると喜ぶ。可愛い。ついでにお乳をあげる。もう人の区別がついてるのかな。ママって分かってくれてたら嬉しい。その内、抱き上げるのに身体強化しないといけないかもしれない。
お乳を飲ませ終わったら、げっぷさせて床に下ろす。お母様の方にハイハイしていった。ちょっと寂しい。
残ったお乳を絞った後、昼食の時間になったら、ルークを抱っこして食堂まで歩いていく。ホントにこの屋敷広いな。いい運動になる。
食堂に着いたら、ルークを椅子に座らせて離乳食を食べさせる。美味しいのがわかったのかスプーンを口元まで持っていくと口を開けてくれる。タイミングを合わせて口の中に離乳食を入れていく。ルークはきょとんとしてるような顔で周りをキョロキョロ見ている。まだ食事だけに集中するのはつらいかな?
全部食べ終わったら、ベビーベッドに寝かせる。機嫌は良さそうだ。離乳食好きになってくれたかな?
ルークの手を触ったりして、親子の交流をしていたら、みんなが食堂に集まったので、ノアとハグしてから席についた。
美味しそうな食事を神に感謝していただく。ん、毎日、美味しい。贅沢に慣れてしまったが、もしここで住めなくなっても財力があるから、同じ生活をしようとしても出来るはず。料理長ほど研究熱心な料理人はなかなか見つからないだろうけど。
もしもの事を考えながら、いただく食事は温かくて飢えを満たしてくれる。本当に食いしん坊になったものだ。3人分の食事をしないといけないからね。ルークと私とお腹の赤ちゃんの為に食事をするのだ。私の比重が多い気がするが。
午後はルークを連れて領都の外の農地の場所で作業をしよう。
食事が終わったらノアを仕事に送り出して、ルークをおんぶ紐でおんぶして領都の外に瞬間移動する。そこから買った農地まで歩いて行く。
ルークは新鮮な空気に触れてご機嫌だ。最近散歩も出来て無かったからね。
歩くと森が近い場所にロープが張ってあり、看板に私の名前が書いてある場所に着いた。魔物の被害にあいそうだ。創造魔法で常時結界を張る魔道具を作る。悪意ある者は入れない仕様だ。買った地面の四隅に埋めていく。結界の完成だ。ルークをアイテムボックスから出したベビーベッドに寝かせる。
まずは家を作る。商人が来ても交渉出来るスペースを確保した家と事務所一体型だ。
地面を圧縮して平らにする。劣化しない大きめの2階建てを想像して創造魔法で満たした空間にイメージを送り込み魔法を行使する。
出来た。ここが未来の販売所になるかは、ロザリー達の頑張り次第だ。
アイテムボックスからスコップを取り出して穴を掘ろうとして、土魔法で穴を開けたらいい事に気がついた。
地球通販でバナナの草を探す。実はバナナ、木にならない。草になっている。草を剥がしていくと無くなるらしい。バナナは果実的野菜だ。みんな果物だと思ってるけど。増え方はバナナの草の脇に出てくる新芽で増える。地球通販でその新芽を買う。間違えて野菜の料理に使うバナナを選ばないようにする。
新芽を購入したら、土魔法で穴を開けて新芽を埋めて、魔力を注ぎ、虫や菌がつかないようにイメージして魔力が飽和したらそれを維持する。新芽が成長してきた。人の身長くらいだと思っていたら、結構背丈が高く成長してしまった。ネットの動画で見た草だと結構もろかったが、木のようにしっかりと草が生えている。
ロザリーとハルトさんに飛行魔法を付与しておいてよかった。実は半熟って感じかな。黄緑色の部分がうっすら残っている。持ち運び、保存食としては良いかもしれない。私はすぐにバナナを食べたかったが、あてが外れた。
前世で仕事場の同僚にフィリピン人の奥さんと結婚した人がいた。本場のバナナは日本のバナナより美味しいと聞いていたので期待していたのだ。
そういや本場の人がおすすめするバナナとかあったのを思い出した。異空間住居に入って2階に上がり、ネットで確認する。15種類ほどのバナナを選んで、地球通販で新芽を購入する。
ちょっと農園が混乱するかもしれないが食べたいのだ。ミックスジュースにもバナナが入っているかどうかで味が変わる。
異空間住居から出て、新芽を地面に置いて、区画を作る。半分は別の物を作る予定だから、3農家分の土地を購入したので、1農地をバナナの区画にして柵を購入して16区画に分類する。そこでバナナの新芽を1種類ずつ埋めて成長させて魔植物化していく。うん、立派だ。見慣れないバナナでも美味しそうに見える。
16区画、埋めたら、空いている空間に埋めたバナナの根本から出ている新芽を摘んで、バナナをどんどん増やしていく。地味で大変な作業だ。ルークはおけつをあげて精力的にベビーベッドの中で動いている。かわいい。
全て植え終わって成長させるのに時間がかかった。が、ここだけ南国になったみたいだ。1種類ずつ収穫するが収穫が大変だ。アイテムボックスに放り込んでおく。
1本だけちぎり、時空間魔法で熟成を促して食べれるようにする。もう口がバナナを欲していたのだ。いただきま〜す。!おいしい!スーパーのバナナが食べれなくなる。もうスーパー行かないけど。
小さいお皿とスプーンを出して、バナナを入れてドロドロになるまで押しつぶす。それをルークの元に持っていき、口を開けさせてあ〜んで食べさせる。ルークが興奮した。赤ちゃんにも美味しいんだ!お皿の中のバナナが無くなるまで食べさせたが、もっと欲しいみたい。でも母乳が飲めなくなったり、バナナ食べさせすぎても怖いから「もう、無いよ」と言い聞かせる。癇癪を起こすぐらいおいしかったか。かわいいやつめ。
使ったお皿とスプーンにクリーンを掛けてアイテムボックスにしまう。
次は創造魔法の出番だ。チョコレートの木を埋めたいのだ。
地球通販で、甘みが強くないビターなチョコ、ホワイトチョコ、ミルクチョコの値段の高いチョコレートを買って食べながら地面に手を当てて創造魔法の魔力を流しながら、新しい木を創造する。皮はほどほどに硬くて虫や魔物を寄せ付けない、実の中に今食べているチョコと同じ物が出来るチョコの木を創造!
地面に当てていた手の間から芽がピョコンと出て来た。私が創造したように枝が広がっていく。色で中身がわかりやすいように実の色を変えたんだ。黒がビター、白がホワイトチョコ、茶色がミルクチョコ。イメージがカカオだったからか、カカオの実の見た目になってしまった。まあ、潰れなくていいか。
枝を切って、挿し木して農園に増やしていく。いやぁ、これはいい眺めだ。ゆとりを持たせながら植えたら、バナナとカカオの良い農園になった。
ミルクチョコを収穫して包丁で切って実を割るとびっしりとチョコが詰まっている。これ1つで満足しちゃうんじゃない?一つ手に取り食べてみる。お、美味しい!これは新しい木の出来上がりですな!果物じゃないけど。チョコの実を収穫していく。屋敷のみんなにも食べさせたいからね。
防犯もしっかりしたし、盗まれる事は無いでしょ。
ルークをおんぶして、散歩がてら少しだけ歩く事にした。ベビーベッドはアイテムボックスの中にしまう。今日はまだお乳欲しがらないな。バナナを食べさせたからかな?
領都の入り口が見えて来たら、瞬間移動でノアの部屋に行く。そこから厨房まで歩いて行く。
厨房に着いたら、料理長に新しい実だと、食べかけのミルクチョコを食べてもらうと、衝撃を受けた顔になった。想像外の顔だ。「3種類あるんだよ」と包丁で切っていくと、料理長も実を割って確かめている。
このままでも美味しいけど、デザートに使えばもっと美味しいと伝える。料理長は思案顔だ。実を全て出して、屋敷の使用人達も食べるようにお願いすると、私は子供部屋に行く。
子供部屋にいるみんなに挨拶して中に入ると、お母様方も子供達も私から良い匂いがすると近づいて来た。ピンチだ!チョコは厨房に全部置いてきてしまった。あっ!バナナがあった!アイテムボックスからバナナを取り出して、熟成させる。それを1本ずつみんなに配って、食べ方を教えるとみんな食べた。その後に歓声が上がった!「美味しいわ」と、みんな食べ終わったら、皮を回収してアイテムボックスのゴミ箱に捨てる。
「これは何!?」と聞いてきたので、バナナだと答えた。新しい事業にするのだと。残念そうな顔をしたので、屋敷の人はいつでも食べれるようにすると約束したら、笑顔になった。やっぱりバナナは人気だな。
明日にでも収穫しないと。




