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69 合流

 中位魔族の殲滅を終えたエリーサは「ふぅ」と息をついた。もしかしたら森のどこかに何体か魔族が残っているかもしれないが、都市レベルでの脅威は消えた筈だ。


「王女殿下! ご無事ですか」


 引退冒険者アマンダの声がする。彼女も選抜部隊に参加していた。


「アマンダさんお疲れ様。私は大丈夫。選抜部隊の損害は分りますか?」


「はい。死者3名に重傷者1名です」


 エリーサは「そっか……」と呟く。やはり死者が出てしまった。少ない犠牲で済んだとは思うが、エリーサが最後まで1人で戦えば出なかった犠牲でもある。


 そのお陰でバララット伯爵家の名誉を最低限は守れたのだろうし、手堅く勝つことができた。命に見合う成果なのかは、エリーサには分からなかった。


「重傷者を治して移動します。どこですか?」


 アマンダが「こちらです」とエリーサを案内してくれる。


 中年の男性冒険者が頭と太腿から血を流していた。エリーサは『生命再生(リジェネレイト)』を唱え、手早く治療をする。


「森を脱出します。制御を失ったモンスターに気を付けて」


 エリーサは自分に身体強化をかけて、走り出す。


 選抜部隊は全員が身体強化を使える。移動速度は早い。すぐに森を抜けた。


 森の先にはバララット軍の分隊が待機している。


 バララット兵らは森から出てきたエリーサ達の姿にざわめいていた。エリーサはバララット軍に駆け寄り、すぅーと息を吸って声を張り上げる。


「魔族は撃滅しました! 勝利です!」


 バララット軍から歓喜の声が上がる。彼らはエリーサ達が負ければ全滅必至の立場だ。恐怖から開放されあちこちで隣の人と抱き合って喜んでいる。


「姫様っ!!」


 と、懐かしい声がした。慌てて視線を巡らせると知った顔、トリスタが駆け寄ってくる。隣にはドミーもいた。


「トリスタぁぁ~」


 エリーサはトリスタに思い切り抱き着く。


「大変だったよぉ〜会いたかったぁ」


 トリスタのささやかな胸に顔を埋めて、エリーサは半泣きになる。ぽんぽんとトリスタがエリーサの背中を叩いた。


「姫様、遅くなってごめんなさい。予想外に手こずりまして……」


 トリスタが状況を説明する。今日の昼過ぎにバルエリに到着し、事情を聞いてここに駆けつけたらしい。森に突入しようとしたが、移動してくるエリーサの気配を感知したので待っていたそうだ。


「開始5分でトリスタさんが敵の隊長をぶった斬ったところまでは順調だったのですけどねぇ。その後魔族ったら南に全力で逃げちゃって」


「姫様も無事に魔族を撃破できたようで、良かったです」


「うん。魔族はほぼ全滅できた筈。制御失ったモンスターはいっぱい残っているけど」


モンスター(そっち)はバララット家に任せて大丈夫でしょう。セヴラン殿も意識が戻りましたし」


「あっ、セヴランさん起きたんだ。良かった」


 エリーサはふぅと胸を撫で下ろす。気掛かりだったから、良かった。


「ま、エリーサさんがほぼ単独で魔族軍と交戦中と聞いて、また卒倒しちゃいましたけどね」


 けらけらとドミーが笑う。周囲のバララット兵が苦い顔をするが、気にするドミーではない。


「ううっ、なんか心労かけちゃったなぁ」


「仕方ないですよ。さて、王都に急ぎましょう。本当はバルエリで一泊したいところですが、夜を徹して移動した方が良いですね」


 既に日は傾き、夜が近い。急ぐにしても普通なら明日早朝の出発だろう。だがここは無理のしどころだ。


「うーん、常時移動となるともう1人馬に乗れる人が必要ですね」


 ドミーの言う常時移動とは、二人乗りして交代で馬を駆り、昼夜を問わず走り続けるという無茶な方法だ。睡眠は片方を紐で縛って仮眠という形になる。金と権力で馬を取り替えまくる前提の大胆プランである。しかしエリーサは馬を操れない。最低もう1人居ないと交代ができない。


「なら、アマンダさん! お願いします。王都まで一緒に来て下さい」


「へっ!? 私ですか」


 アマンダは唐突に話を振られ困惑する。


「はい。トリスタ、ドミーさん、この方は引退冒険者のアマンダさんです。色々と助けられました」


「それは、ありがとうございます。私からもお礼申し上げます」


「いっ、いえ、私など何も。王女殿下にお救いいただいた立場でございます」


 トリスタに礼を言われ、アマンダは慌てる。バルエリに向かう道中エリーサと色々と話をしていたので、トリスタと呼ばれる少女が有力貴族デベル家の人間であることは分かっていた。アマンダからすればエリーサと同様に雲の上の存在だ。


「それでアマンダさんは馬への身体強化魔術は使えますか?」


「は、はい。そのぐらいでしたら」


「なるほど。なら私からもお願いします、王都まで同行して下さい。報酬はたっぷり出します」


 アマンダは「はい。承知しました」と言うしかない。


「私はドミー・コンチェ宜しく」


「では早速出発しましょう」


 トリスタがそう言うと、バララット兵が馬を2頭引いてくる。片方は黒、片方は赤茶色の毛で、どちらも立派な体躯をしている。


 トリスタの後にエリーサ、ドミーの後にアマンダの形で乗る。


「身体強化と回復魔術ガンガンで行きますよ」


 エリーサ達はフィーナ王国王都シャンタを目指し、走り出した。

読んでいただきありがとうございます。


エリーサ単独行動は凄く書き難かった。やるんじゃなかった……

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