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33 エリーサ、大変な事に気付く

本来変ですが、分かりにくいので地の文で「クラリス」→「ソニア」にします。



  ソニアことクラリス・ブラーウは今日もエリーサの先生をしていた。宿の部屋で夕食後のお勉強だ。

 手にした本はフィーナの統治制度について書かれたものである。基礎からあれこれ教えて、とりあえず概要は説明し終えた。

 

「ねぇ……ソニア」


 エリーサが不安そうな声を出す。何だろう。


「どうしました? エリーサ様」


「私ね、いつも書類にハンコを綺麗に押さなきゃって思って、それだけ気にしてたけど、アレ中身ちゃんと読まなきゃ駄目だったんじゃ……」


 驚きの発言である。少し前には「今日は2枚も朱肉が(にじ)んじゃったよぉふぇ〜ん」とか言ってたのに。お勉強の成果だ。


「そこに気付くとは! エリーサ様、流石です」


 親指を立ててグッドとやる。


「やっぱりーっ。ううっ、どうしよう、きっと沢山駄目な書類を」


「いや、でもそもそも王族が全部細かく見て判断なんか出来ないですからね。気に病み過ぎないで下さい。ヤバい書類に印を押しまくったのは事実ですが、悪いのは大臣です。本来はヤバい書類が若い未熟な王族に回って来ることが、あり得ない事態です」


 この言葉に嘘はない。もちろん王族自らの判断というのもあるが、殆どの案件は大臣以下統治機構の人員が健全に仕事していることを以って問題ないと判断し、決定されるのだ。


「でも、でも……」


 責任を感じてオロオロし、半べそになるエリーサ。それを見てソニアは『へっぽこなエリーサ様っ可愛い~っ!』と心の中で叫んでいた。


 やはり、アホの子エリーサは可愛くて仕方がない。王族としての判断能力を身に付けた後でも些細なことで「ふえ~ん」とか泣いて欲しい。


 どう教育を進めれば、そんな素敵な生物になるだろうか。ソニアは本気で悩む。


 まぁ、それはそれとして慰めておこう。


「過ぎた事は仕方ないですよ。あと、エリーサ様の押印は本当に綺麗でしたよ。最後の文字に半分重なって真っ直ぐ、掠れなく。ね、トリスタもそう思うでしょ?」


「ええ。私なら絶対ズレまくりますね。首は綺麗に落とせるけど、そっちは下手です」


「ううっ、ありがとう。あと、私って国に居なくても大丈夫かな?」


「大丈夫です。エリーサ様が不在なら枢密会議が代わりを果たします。そこは安心して下さい」


「うん。分かった」


 そこでソニアはパタンと本を閉じる。


「さて、今日はこの辺にしておきましょうか。明日は薬草採りつつ、魔術の勉強ですから」


 ソニアの言葉にエリーサはもう一度「うん。わかった」と素直に頷く。


 ドグラスが魔術を教えてくれることになって、素直に良かった。魔術の知識や訓練は本当に必要だし、もしその中で二人が仲良くなってくれたら嬉しい。


 ソニアはエリーサには幸せな結婚をして貰いたい。彼女は伴侶を自由に選ぶのは難しい立場だが、ドグラスか、トリスタ弟ことアルガスと恋仲になってくれれば結果オーライでハッピーエンドである。


“年下アルガスくんも悪くはないけど、まずはドグラス!”


 ちなみにホバート派にエリーサを渡すつもりはブラーウ家にもソニアにもない。デベル家とバレント・カッセルにもないだろう。

 ホバート派はホバート派で『フィーナ直系を戴く我々は凄い、他国より上』みたいな妙な意識を持っている。今回は協力しているが、全面的に素晴らしい人々とは言えない。

 ヴェステル王国との関係が微妙なのも半分はホバート派のせいである。ちなみにもう半分は『レブロとデベル以外のフィーナ貴族弱すぎ、カッコ悪い』と思っている一部ヴェステル貴族の責任だ。


 大臣派を潰す企みよりも、色恋沙汰の方がずっと楽しい。ソニアは人生を楽しく生きることにしている。諜報要員として素性を隠して暮らしていたりはしても、それはそれである。

 大臣派が潰れるのはもはや確定的だ。なら後はキューピット作戦に主眼を置き、面白おかしく働きたいものである。


 キューピット作戦において、目下問題はアルトー伯爵令嬢にして宮廷魔術師第2席、ブリュエット・アルトーだ。

 さて、どう立ち回ったものか。


 ソニアは部屋の壁側を向いて、エリーサとトリスタに見えぬようにニャ~と笑った。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 周りの王女フォローが却ってマイナスになってると思う。 至る所で、読んでるこっちが王女も少しは可哀想なところあるなって思う前に、周りがあなたはなにも悪くないよ全部大臣が悪い大臣が悪いって…
[一言] 私って国に居なくても大丈夫かな?」 「大丈夫です。 おい! おい……
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