79.女子高生(おっさん)を巡る戦い③〈女子達の争い ~プレゼン~〉
〈放課後 2-A教室〉
「えー……で、では『第一回アシュナさん争奪戦』プレゼン大会を始めようと思いますぅ……進行役は皆に押し付けられ……ぃぇ、選ばれた学級委員長の私【鏑木煌花】………解説はアシュナさんの部活仲間である四名にしてもらいます……どうぞ宜しくお願いします……」
「「「………」」」
「これは何をやるのかな!? 筋トレ大会かい!?」
始まりからカオスと化している──ヒナヒナ達vsミクミク達のプレゼン対決が幕を開けた。
ただの班決めなのに何故こんなおおごとになってしまったのか……教室には大会の噂を聞き付けたクラスのほぼ全員が集まっていた。
主賓の俺は教室のど真ん中、黒板前には司会の委員長と、アシュナをよく知る者として選ばれた解説役のケン達四人。俺を挟むようにして放課後のこの時までに練ったプランの発表を今かと待ちわびるヒナヒナ達とミクミク達。教室の後ろにはギャラリー総勢20名の野次馬達という構図だ。
「状況を説明しますとぉ……修学旅行の班にアシュナさんを招きたい三久さんと早苗さんグループ……そして朝比奈さんら三名のグループ……どちらがよりアシュナさんの心を惹くことができるプランを練ったかを発表してもらう訳なんですけどぉ………部活仲間の皆さんはなにが要点になると思いますかぁ……?」
「「「………」」」
「あのぅ……聞こえてますかぁ? ……えーと、えーとつ、つまり二日目と三日目の自由行動の際で巡るスポット選びや行動が鍵になるかと思われます……い、如何にアシュナさんの好みを把握しているかがポイントですね」
ケンら陰キャ共は借りてきた猫のように緊張して微動だにしないので委員長が一人で説明し始めた。この自信無さげで気弱な委員長もいつか紹介しなければならないが、今は目の前のイベントに集中しよう。
しかし、人前で話せないあいつらを解説役に据えた采配ミスといい……もう既にグダクダになる予感で一杯だ。
「えー……でわぁ……まずは朝比奈さんグループから発表をお願いします」
「はい! 私達はアシュナと一緒になったらアシュナがいっぱい楽しめるところに行きますっ!」
「やっぱ沖縄だから海がいいよね。アシュナは水族館とか国際通りで買い物とか興味なさそうだから……」
「うん~アシュナちゃんが思いきり楽しめるよ~に頑張るよ~。それで夜は一緒に枕投げするんだ~」
「……………え? 終わり……?」
ヒナヒナグループのプレゼンは全く企画案になってはいなかった。ただ単に『一緒に楽しみたい』という具体性も何も無いものだった。プレゼンの意味を理解しているのだろうか。
しかし、続くヒマリの一言で戦況は大きく動いた。
「それでね~、お部屋でみんなでくっついて寝るんだ~」
「ヒマリさんに3000点」
《うおおおおおおっ!!》
クイズダービーよろしく、ヒマリさんにポイントをあげると歓声が沸き上がった。きっとヒマリ達と俺が百合百合している光景を思い描いたのだろう。おっさんも同じである。
「…………あれ? ぁ……ぁのぅ~………」
「中々やるじゃん……けど、こっちも負けてないよー!」
何かを言いたげな委員長に被せるようにして、ミクミクの意気込んだ声がクラスに響いた。
さて、ミクミク達は一体どんなえっちなイベントを用意してくれたのだろうか。
〈続く〉