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74.女子高生(おっさん)と伝説


「波澄アシュナさんっ! 僕と付き」

「ごめんなさい、その日は急用ができちゃって」

「デートの誘いじゃないよ!?」


--------------

----------


〈2-A組 教室〉


「お疲れーアシュナ、今月これで何人目?」

「………99人目……」


 教室に戻り、机に突っ伏しているとヒナヒナが(ねぎら)うように苦笑いで声をかけてきた。今月──女子高生である俺はことあるごとに呼び出され愛の告白をされまくっていた。

 

「まぁーしょうがないか、アシュナ有名人だもん。有名税みたいなもんだよ」

「…………芸能人でもなんでもないのに……これじゃあテレビもないのに徴収されてるN○Kの受信料だよ……」


 季節の変わり目──春……新たに入学してきた若き芽たち。それらの生徒の中には『超絶美少女が在籍している高校』という不純極まりない理由を指針として試験に臨んだ者達が過半数を越えただとか受験倍率が凄いことになった喜んでいた部活顧問である校長から聞いた。

 当然、その不純な新入生どもは『自分にもワンチャンあるかも』なんて思って特攻してくるわけだが……冷静に考えて面識も無い野郎に告白されてもOKするわけねーだろと断りまくっていた。

 まだ4月だというのに同性含め99人。単純計算で卒業するまでの残り約2年間に2277人から告白されることになると思うと疲労がのし掛かる。

 男だった頃、可愛いコンビニ店員に告白していた自分を殴りたい。普通に考えて友達の段階も踏んでない見知らぬ奴と付き合うわけがないと女の子になってようやく理解した。

 

「同級生も先輩も、みんな遠慮なくアシュナに告るようになったよねー。一年の時のアシュナは近寄りがたかったからかな?」


 そう、今までは『高嶺の花&アシュナへの忖度(そんたく)』という不文律コンボによるものと、おっさんが憑依する前の【氷の女帝】とかいう恥ずかしい通り名がつくくらいに触れてはいけない存在だったため……計50回くらいしか告白はされていなかった。

 それがおっさん化した事により、『とても愛らしい天然おじさん娘』になってしまい、フランクな存在となったのも一因だろう。

 

 そして新入生たちに負けまいと我先に特攻してくる在校生たち……この高校では今、水面下で起きていた牽制や冷戦が表面化した──(アシュナ)を巡る凄絶な戦いの時代が巻き起ころうとしているのだ。


「あ、告白といえばさー……この学校にもあったよね伝説──」


 ヒナヒナが思い出したように告げたことで自分も前世の記憶が蘇る。『伝説の樹の下で告白を成功させたら永遠に結ばれる』的などきどきメモリアル的なやつが確かにあったのを思い出した。

 しかし前世では一切女性との関わりがなかったし、二次元とメイド喫茶のりらんちゃんだけが心の支えだったので全く内容を知らないし興味もなかった。


「えーと確か……【桜の葉が芽吹き、散り終わるまでに100回の告白をされた者はその100回目の告白をした者と付き合わなければならない】ってやつ」

「数取り罰ゲーム!? 告白された人になんのメリットもないよ!?」

「あはは、まぁ伝説って曲がり曲がって大袈裟に伝わるものだからね。まさかそんな短期間に100回も告白される人なんているわけないし………あっ」

「………」


 身の危険を感じた俺は、校長に事情を話して特別措置として単位を貰いながらの半休にさせてもらってことなきを得た。






 

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