番外編.女子高生(おっさん)の妹の勘違い Ⅱ (妹視点)
〈波澄家 リビング〉
皆さんこんばんわ、波澄マナです。
以前は私の勘違いでお騒がせしてすみませんでした……って私は相変わらず誰に説明してるんだろ……?
お姉ちゃんがおじさんとえっちな事をしてるって勘違いしてから早三ヶ月、お姉ちゃんは高校二年生になり、私は受験生である中学三年生になりました。
「ご馳走さまでした。よっこらしょういち、さーゴロゴロしよ」
夕食を終えたお姉ちゃんは、変なかけ声で立ち上がり、お皿を片付けてソファーに寝転がります。
相変わらず──いえ、二年生になって更に色気と妖艶さを増しながらも絶妙なおじさん臭さを余すことなく晒け出しています。
でも、私はもう勘違いしたりしません。というか……私はなんて酷い勘繰りをしていたのでしょう。世界一といっても過言ではない美貌を持つお姉ちゃんがおじさんといけない事なんかするわけないのは自明の理……石油王の全財産でもお姉ちゃんの純潔とは等価にはなりえない事だというのに。
「おいおい、冗談はよし子ちゃんだよ。そうは桑名の焼き蛤……そこだっ! やったー! 恐れ入谷の鬼神母神、お見逸れしました」
お姉ちゃんはテレビで野球中継を見ながら、呪文みたいなのを叫んでいます。よし子ちゃんとかしょういちさんって一体誰なの、と私はケータイで検索します。
調べてみると、どれも昭和に流行した言葉のようで胸を撫で下ろします。どうしてお姉ちゃんは昭和の言葉が流れるように出てくるのかは置いておくとして……前みたいに私がひとり勘違いして暴走することはもうありません。私も、成長してるんです。
「ふわぁぁあぁぁあぁっ……さ、寝るとするかねー歯ブラシ歯ブラシ……」
まるで雄叫びのようにあくびをしたお姉ちゃんは洗面所に向かいました。私も今年は受験生、お姉ちゃんと同じ高校に行くために日夜勉強に励んでいます。
普段はソファーでドラマを見てから部屋に向かうのですが、これからはもっと勉強時間を増やそうと私もお姉ちゃんに続いて洗面所に向かい寝おちしてもいいように準備します。
すると、洗面所の引き戸のドアが少し開いており電気の光が廊下に漏れていました。そして……漏れ出ていたのは光だけではなく、お姉ちゃんが歯を磨く音までもが漏れ聞こえてきます。
そこで、私は衝撃の光景を目にしました。
「おええっ」
「!!??」
お姉ちゃんは歯ブラシをしてるだけなのに、洗面台にうずくまるようにして嘔吐いていたんです。
先ほどまでの様子では決して体調が悪いとか風邪とかそんな風には見えなかったのにも関わらず、です。
そして、私は直感します。
お姉ちゃん……もしかして、妊娠してる!?、と。