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61.鳳凰の過去 ※語り【鳳凰天馬】


〈ショッピングモール 通路〉


 普段クールな鳳凰が感傷に浸りながら、マッサージチェアにて過去を語る。

 マッサージチェアの料金は既に千円を突破していた。


「俺はそれから様々な女性と接してみた。全ての女性が母のようなわけではない、そう自分に言い聞かせて関わる機会をもった。自慢するわけじゃないが……俺には幸い整った容姿とカネがあったから自然と女が向こうから寄ってきた」


 自慢するわけじゃないがと言うが、それはしっかりと自慢だ。


「一言でいうならば……そいつらは俺の()()()()()()だった。いい顔をしながら『カネや容姿なんか関係ない。鳳凰君が好きだから』と(うそぶ)き、俺が借金を背負ったとか整形だと冗談で言うとよそよそしくなって俺から離れていった。だが、それでも諦めずに様々な女性に接した」

「……」

「いつだったか……『私、イケメンって嫌いだから』と周囲に公言していた女もいた。そいつにアプローチをかけるとものの数秒で俺と付き合うと言い出し、挙げ句に『イヤだったけどあっちが私とどうしても付き合いたいっていうから~』と周囲に公言しだした」

「………え? なに? 自慢?」

「自慢ではない。勿論、そいつからは直ぐに離れた。俺はますます不信を募らせたが……それでもめげずに、女子だけが通う女子高に潜入もした。男の目がないところで女子がどのように生活を送っているか確かめたかったからだ」

「………え? 犯罪自慢?」

「犯罪自慢ではない、きちんと許可を貰った」


----------------------------

--------------


 そこでは衝撃の光景を目の当たりにした。

 女子達はまるで別の生物だった。椅子に胡座(あぐら)をかいて座り、あられもない姿を晒し、下世話な会話を飛び交わしていた。男の前では絶対にしないような会話を。

 別にそれが悪いと言っているわけではない、女子とて一人の生き物なのだから楽で素になりたい時があるのは重々承知している──だが、俺には耐えきれなかった。女子の素の姿がじゃなく、『表裏を器用に使い分ける手練手管』にだ。


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--------------

 

「あー……なるほど……」


 鳳凰の女性嫌いの根幹は、完璧な母親が不倫(かくしごと)していた事からくる『女性の裏表』ということらしい。

 確かにおっさんにもわからなくもなかった、推しだったドル売り声優に男がいたっていうのと同じだ。許せないのも(うなず)けるというもの。


「……もう女性と関わるのをやめようと思い、諦め、何も求めなくなった。一族のしきたりを無のままに受け入れて仮装の結婚生活を送ればいいだけだ、と自身を無理矢理納得させ、父から警視庁長官の娘──【皇めらぎ】の紹介を受けた。そして出会ったのが……キミだった」


 鳳凰の話はまだ続くようだ。

 おっさんはマッサージの受けすぎで逆に腰が痛くなってきていた。


                   〈続く〉

 

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