表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/270

50.女子高生(おっさん)のタイムリープ問題-③


「あんだぁ~!? てめぇら若造のクセして……ぅおれが誰かわかぁってんのがぁ~!!?」


 酔っ払いから、オタクと巫女さんが本来登場しないはずの(アシュナ)を守るために対峙する。その姿はまるでヒロインを守る勇者と騎士ーーその勇者と騎士をくっつけるのが、(ヒロイン)に課せられた責務だった。


(だけどっ……どうやって!? この二人が結ばれるべくして結ばれるのを知ってるのは俺だけ……『私の事はいいから二人はこれから連絡を取り合ってデートしてください』……? いやダメだ不自然すぎる!)


 どうにかして二人の馴れ初めをこの状態から創り上げるのに全集中する。そんな俺の思索なぞ知るはずもなく酔っ払いとオタク青年は言い争いを続けている。


(じゃあ俺がここから立ち去るとか!? ……いや、めらぎが気持ち良さそうに寝てるから起こすのは可哀想だし動けない……なら女の子ムーブして場を和ませて収めたらっ……! ……いや収めたら二人がこの後仲良くならないしっ……)


 考えていると、ヒートアップ酔っ払いが急にこちらへ手を伸ばしーー俺のあごを掴んで、昔懐かし『顎クイ』をするかのように顔を持ち上げて言った。


「女は黙って男に使われてりゃい~んだよ!!」


 そうーー本来ならばこのセリフに激昂したオタク青年が酔っ払いを羽交い締めにして取り押さえ、車掌さんに引き渡すはずだったのだが……


「ーーおい」


 考え事の最中にうるさかった事も相まって、見事に(おっさん)の逆鱗に触れ、理性が飛んだ俺は中年へと手を伸ばして顎を掴み、強めに『顎クイ』をする。酔っ払いと(おっさん)は互いに顎クイをした状態になった。

 女子高生の思わぬ反撃とその腕力にか、酔っ払いは体をビクッとさせ赤くなった顔をみるみる内に青ざめさせる。


「がっ……!??」

「腕力ですら俺に負けてるくせに、何を以ててめぇを男と見なしたらいいんだ……? この不能野郎……今、純粋な恋物語が生まれようとしてるんだから邪魔すんじゃねぇよ……」


 そこから先はよく覚えていない。

 青ざめを通り越して紫色になった酔っ払いや、車掌さんやオタク青年や巫女さんが止めに入ったことくらいしか。あまり(おこ)り慣れていない陰キャのおっさんは理性が飛ぶと周りが見えなくなるまでやり過ぎてしまうのだーー


--------------------

--------------


〈数日後〉


 ーーその後、冷静になったおっさんと当事者達は駅室で駅員らに取り調べを受けた。酔っ払いは何故かボロボロだったけど……怯えた酔っ払いの証言と、周囲の庇護のおかげで警察沙汰にはならなかったが……それからの大型掲示板には、【謎の美少女スレ】が乱立し、様々な板がお祭り騒ぎと化してしまっていた。

 PCでそれらを眺めていると埋もれるように立てられた一つのスレを発見して読んでみる。


---------------------------------------

 749 名前:731 投稿日:04/01/28 21:55


たぶんだけど……おまいらがここ最近騒いでる美少女だと思う。めちゃくちゃカコヨカッタ……けど逃げるように帰っちゃったから名前も聞けず……けど、その後、その美少女の話をしてるうちに巫女さんといい雰囲気に……

---------------------------------------

759 名前:769 投稿日:04/01/28 22:35


んなのどうでもいいからその美少女の話しろ

---------------------------------------

 763 名前:795 投稿日:04/01/28 22:45


自慢かよカス死ね

---------------------------------------


 どうやらこのスレが【電車巫女男(でんシャーマン)】の始まりとなったスレのようだ。ようやく見つけたが……美少女スレが乱立しているため、住人の興味を全く惹けていなかった。


(ヤバいヤバい! このままじゃこのスレ埋もれる!)


---------------------------------------

772 名前:美少女 投稿日:04/01/28 22:55


それ、たぶん私ですけど……あの後、大丈夫でしたか? 巫女さんといい雰囲気のはなし聞かせてください!

---------------------------------------

773 名前:752 投稿日:04/01/28 22:55


本人キタ━(゜∀゜)━!(゜∀゜ 三 ゜∀゜)

---------------------------------------

776 名前:747 投稿日:04/01/28 22:55


こん!

---------------------------------------


 美少女本人を装って(ていうか本人だけど)書き込むと電車巫女男スレは大層盛り上がり、超話題になった。とりあえずはセーフだったけど……しばらくは歴史改変が起きないように見守る必要がありそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ