40.女子高生(おっさん)と陽キャ男子たち Ⅱ-2
〈フットサルコート〉
結局、勢いに押しきられてユニフォームに着替え、室内に造られたフットサル場に足を踏み入れる。
「え……?」
学校の体育館を少し縮めたくらいの室内には、何故か相手チーム以外にも人が沢山いた。おおよそ、フットサルをやるとは思えないスーツの大人や審判員みたいな人達も。
「アシュナ姐さんの話をしたら、日本サッカー協会のお偉いさんとか大勢来ちゃったみたいっす……」
「なにしてくれてるの!? どれだけフットワーク軽いの日本サッカー協会!?」
サッカーだけにフットワークの軽さが自慢、ってやかましいわ。オヤジギャグを言ってる場合じゃない。
コートには既に対戦相手らしき高校生の奴等が何人かいる。顔に覚えはない、どうやらあれが陽キャ男子達の他校の友達みたいだ。相手チームにも、マネージャーらしき女の子が何人かついていて談笑していた。
「「「ーーっ!!?」」」
そいつらも周囲の大人たちも俺を見て、明らかな動揺を見せザワザワ狼狽えている。そしてガン見されている。
「な……何……あの子……めっちゃ可愛い……」
「あの子が噂のアシュナちゃん……やべぇ、レベルが違ぇ……」
「女神……」
神様でも崇め奉る如く数々の視線に、さすがに少し照れる。恥じらいを誤魔化すかのように、ミックスフットサルとかいうやつのルールを聞いた。
・ピッチ上に女性一名以上。
・女性の得点は1ゴール3点。
・女性への身体的接触行為は厳禁、女性へのファウルは全てPKとなる……などなど、かなり優遇措置がとられていた。
「ただ……相手チームにエグい奴が一人いるんすよ。その女子一人に圧倒されて……いつも負けるんす」
「え……そんな上手い女の子相手に私なんか何もできないよ?」
「いや、プレーが上手いとかじゃないんすよ……ほら、あの子っす」
「みんなごめ~んっ、遅くなっちゃったぁ」
甘ったるい声と共に現れたのは、おおよそフットサルなどしそうもない可愛い女子だった。その女の子はチームメイトに駆け寄り男子の身体をベタベタ触る、猫撫で声や所作から察するに、ぶりっ娘の類いだろう。
しかし驚くべきはその身体つきーーふくよかな肉付き、男子大好きムッチリ体型がくっきりユニフォーム越しに伝わってくる。
「あの子……【吉良星星星】っつーんすけど……キラはプレー中に変なエロい声出したり……必要以上に近づいてきたりで……俺ら全く集中できないんす。けど、姐さんがいれば大丈夫ーー姐さんがいるだけで視線は全部姐さんにいきますから!」
何だその理由。
だが、それを裏付けるように【キラ】ちゃんが登場しても相手チームのイケメンは反応せず、常に俺へと向いていた。
「やべぇ……アシュナちゃんが神々しすぎて目が離せねぇよ……」
「あぁ……勝てる気がしねぇ……」
どうやら、陽キャたちの思惑通りにことが運んでいるようだった。
「っしゃあ! これで試合もらったな!」
意気揚々と試合に臨む陽キャたち、だが、この作戦には最大の誤算があった。
(キラちゃん……なにあの身体エッッッッッッッッ)
「姐さん!? 前屈みになってどーしたんすか!?」
全員を魅了しているおっさんだけが、相手の術中に嵌まっていた。
〈続く〉




