37.女子高生(おっさん)とお嬢様のデビュー
「んっ………んむっ…………はぁっ………」
部屋に淫靡な水音が響く。もう、今日だけで何度目かわからない……女の子同士が深い口づけを交わす音だ。
中身おっさんの美少女の俺とーーお相手は勿論、女の子好きだがおっさんに蹂躙されたい、という破滅的志向の持ち主、且つ、良い出自のお嬢様という複雑設定の【皇めらぎ】だ
「はぁっ……これで先日の件は精算しますわ……全く、犯罪者相手に大立回りを演じるなど可憐な少女のする事ではありませんのよ、私がどれ程……貴女の身を案じたことかわかっていますの?」
めらぎが言っているのは、先日の『詐欺グループ摘発』の件だ。警察の力を借りるため、めらぎに協力を申し出、そのおかげで見事に解決した。
だが、めらぎは怒っていた。俺が危ない橋を渡ったことに対して。それを精算させるため、今日はお嬢様と休日を過ごす事になり、要求として激しく口づけをされていたわけだ。
最も、おっさんにとってこれはただのご褒美でしかないのだが……お嬢様が満足気なので良しとしよう。
「……ですが……貸しや借りを返さなければならないような関係は健全とは言えませんわね……貴女とはもっとこう……無償なる愛を与え、与えられるような尊い仲になりたいのですわ。なにか、私にしてほしい事など……ございませんの……?」
自ら要求しておいて、めらぎは思い直したかのようにそう言った。
してほしい事ーー当然、沢山ある。
えっちな事とか、はたまたエロい事とか、若しくは18禁的な事とかだ。だが、それを要求する度胸はおっさんには無いし……微妙な空気になったら耐えられない。
そこで俺は、とある妙案を思いついた。
「めらぎ先輩はファストフードとかご存知ですか?」
「……ファストフード……?」
首をかしげ、困ったような表情をする。予想通り、このお嬢様は一般階級の文化には馴染みが無いらしい。
「ちょっと待ってて下さい、買ってきます」
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「……これはなんですの?」
「牛丼です。食べてみてください」
「……これを私が食べるのが貴女の望みですの?」
「はい、率直に味の感想を言ってください。ただ決まりがあって、美味しかったら……」
俺は流儀だと偽り、ある言葉を耳打ちする。めらぎは訳の分からないといった顔をするが、ゆっくりと肉と飯を口にした。
「ーー!!」
頬張った瞬間ーー驚きと歓喜を織り混ぜた表情をするめらぎは、ご飯を咀嚼し呑み込んだのちに言われた通りに言った。
「う……うめぇですわ!」
これが聞きたかった。