28.女子高生(おっさん)と女子達 Ⅲ
「あー、アシュナちゃんだぁ。一緒にかえろーよー」
放課後、帰ろうとすると〈真の陽キャ三女傑〉の一人である【樋廻陽葵】と遭遇した。12月だから時刻は6時半ばでも辺りは既に暗い、俺と同じく部活で遅くなったようだ。
「アシュナちゃん、ぎゅー」
「あ……あの、ひまりさん……歩き辛い……」
「えー、えへへー」
ヒマリは俺の腕に絡み、おっぱいを押し付けてくる、でかい。
明朗快活のヒナヒナ、少しキツいお姫様体質のヒメとはキャラ分けをするように、【ヒマリ】はおっとり天然系でぽわぼわしている不思議ちゃんだ。だが、常に笑顔で優しく誰からも好かれる存在。
だが、俺はヒマリに少し苦手意識があった。
それは前世に由来する。
かつて男子生徒だった頃にあったーー『ヒマリは誰とでも寝る』という噂だ。勿論、真偽の程は定かではない。陰キャ時代に陽キャ女子と話す機会などあるわけなかったし、あったとして噂が真実かどうかを聞ける度胸などなかったからだ。
しかし陰キャにとってはそんな噂があるというだけで相容れない存在ーーユニコーンのように女性に処女性を求める腐れ童貞には耐え難いものなのだ。
「えへへー、アシュナちゃんいい匂い~」
「………」
ヒマリは俺の首元に鼻先を当てスリスリしだした。『こんな時、どんな顔すればいいかわからないの』という名セリフ通りの表情をした俺は、一人で『笑えばいいと思うよ』という答えを導き出し、微笑んだ。
「おっ、いたいた。君……ヒマリちゃんだよね?」
すると、校門から数歩出たところで見知らぬ男子高校生に声をかけられた。他校の男子ーー制服を着崩す少し軽薄そうな男、という印象を受ける。ヒマリの知り合いだろうか?
「えー……っと、ごめんね? 誰だっけー?」
「初めましてだよ。あ、俺の隣市の高校の生徒でさ、君の噂を聞いて来たんだよ。君、誰にでもヤらせるんでしょ?」
臆面も無く、礼儀も無い質問を男はぶつけてきた。さすがに俺もヒマリも固まった。
〈続く〉