220.女子高生(おっさん)の最終イベント『文化祭』プログラム⑨~夢の終わり2~
──ふと目を覚ました先は、気を失う前と同じ……女子トイレだった。ケータイを確認したところそれほどに時間は経過しておらず、窓の外から聞こえる喧騒がまだ文化祭の最中だと認識させてくれた。
果たして……あれは夢の中の出来事だったのだろうか。
──『阿修凪ちゃん、どう思う?』
「わかりません……でも、その、夢の中だったとしても……凄く、その……素敵な初体験でした…………」
──『いや、そっちじゃなくて』
喪失処女ビッチの阿修凪ちゃんは俺とした事で頭の中がいっぱいのようだ。
おっさんとしてはあのダメ神夫婦が最後に話した内容が気になってしょうがないのだが……キヨちゃんに呼び掛けてみても応答はない。
果たして俺はこれからどうなるのだろうか──だが、まぁ一度は消える事も受け入れたんだから気にしてたってしょうがない。あとは野となれ山となれ……なるようにしかならないだろう。
そんな心地に浸っていると、突然、阿修凪ちゃんの意識が微睡み始めた。
これは彼女が寝落ちしそうになる寸前の兆候だ──どうやら神の国でしすぎたせいによるものらしい……とてつもない幸せな気分に包まれて夢見心地となっている。
──『阿修凪ちゃん!! 寝ないで!! まだ文化祭がっ……!!』
「すー……すー…………すー…………」
もう寝てるし。
これ絶対夕方くらいまで起きないやつだ。
だが、一番の肝だったバンド演奏のプログラムは終わってるし……クラスのみんなと文化祭巡りの想い出づくりは来年でもできないこともないしね。
トイレで座りながら器用に寝るくらい体力を使わせてしまったのはおっさんだし仕方ない。
ちょいと身体を借りて保健室で寝かせてあげるとしようと久々に『外』に出てトイレを後にしようとすると、ミクとエナの二人とバッタリ遭遇した。
「アシュナっち、トイレ長かったねー。みんな探してたよ」
「あ、うん……あはは。ちょっとお腹の調子が悪くてね……」
「………あれ? アシュナっち…………なんか……………変わった? 色気が増してるような……メイク?」
「なに言ってるのミクちゃん、アシュナちゃんはお化粧なんてしな…………え、ホントだ……なんか凄い蠱惑的な感じが増してるような……」
「そ、そうかなー」
ロストヴァージンしたのを見抜いたのか二人は阿修凪の変化に若干戸惑いを見せる。女子って凄いな……。
まぁそんなのはどーでもいい、とにかく仮病使って早く保健室行かないと。
おっさんは精神解離してるからこの身体がいつ意識を失うかわからない──阿修凪ちゃんは寝てるからそんな事態になったら大変だ。
「そ……それよりっ私ちょっと体調が……」
「アシュナっち、この後ミスコンっしょ? それにもっかい閉会式で歌ったり後夜祭で締めのダンスやったりで忙しいだろうし……早く行って打ち合わせした方がよくない?」
「滅茶苦茶スケジュール入ってる!? 聞いてないよそんなの!?」
「え……えぇ~……アシュナっちがやるって言ったんじゃんか……」
阿修凪ちゃんそんなの一言も言ってなかったのに!
なにしてくれてんだこの陰キャ娘!?




