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215.女子高生(おっさん)の最終イベント『文化祭』プログラム⑧~緊急事態②~


「──……さんっ……おじさ…………おじさんっ!!」


 段々と近づいてくるような呼び掛けに、朦朧(もうろう)とした意識が徐々にはっきりとする。この声は阿修凪ちゃんのものだろうか──俺の事をおじさんと呼ぶのは彼女だけなのできっとそうなのだろう。


 だけど、いやに鮮明に聞こえる。

 普段のフィルターを通したような音じゃない。

 夢の中みたいな認識が不明瞭な音でもない。


 (はば)むものも(さかい)も全て取り払われたかのような──男と女の境界も曖昧(あいまい)にされて無くなったような感覚。


「おじさんっ!! 起きてくださいっ!!」


 それは現実だった。

 彼女の俺を揺する声も手も、すぐ(そば)にあって実際に触れている。


「……………え? 阿修凪ちゃん……? ここ……精神世界じゃないよ……ね?」

「私にもなにがなんだか……気がついたらここにいて……隣におじさんが眠ってたんです……」


 押し寄せる疑問を脇に避け、まずは現状を確認する。

 文化祭の最中、トイレへと入った阿修凪ちゃんの横に何者かが立っていた。不可思議にも……その人物に気づいていなかった彼女に声をかけようとした瞬間に意識が途切れたのだ。

 何者だったのか──それはおっさんにも定かではない。男のようでもあったし、女性のようでもあった。


 周囲を見る……薄暗くて場所を把握できない。

 隣にいる阿修凪ちゃんの顔をかろうじて把握できるくらいの明るさだ。


 ここは夢世界の中だろうか──現実的に考えて、俺と阿修凪ちゃんが一個体ではなく別々に存在している現状を見るにそうとしか考えられない。

 だが……妙に現実感がある。不安そうに俺の腕を掴む阿修凪ちゃんの手から伝わる体温もリアルに感じる。


 果たしてここは現実なのか夢なのか。

 そして俺達になにがあったのか──現実による誘拐や拉致の類いなのか、それとも……。


「キヨちゃん、これってどんな状況?? ここが何処か見える?」


 問い掛けてみるも、返答はない。

 と、いうかいつもと違って存在そのものが感じられない。

 いよいよもってヤバそうな状況かもしれない──と肝を冷やし始めたその時……急に周囲に光が(とも)った。


「──っ!!」


 暗がりから突然明るくなったために眼と脳は即座に反応できず、辺りは真っ白に変化した。阿修凪ちゃんも同じだろう……戸惑う声が聞こえてくる。


 そして、同時にもう一人の声色も耳に届いた。


「久しぶり、阿修羅くん、阿修凪ちゃん」


 衝撃を受けた──もう、脳がついていけなくなる。


 慣れた眼が視界に捉えた周囲の風景は()()()()()で……当然のようにそこに立っていたのは、メイドの【りらん】ちゃんだった。



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