214.女子高生(おっさん)の最終イベント『文化祭』プログラム⑧~緊急事態~
──『ちょっと!! どーいうことキヨちゃん!? 土壇場になって何言い出してんのこのダメ神さんよ!?』
キヨちゃん(ダメガミ)の発言を受けて、舞台裏では緊急会議が執り行われた──無論、阿修凪ちゃんの身体の中で。
阿修凪ちゃんはクラスメイトと和気藹々(わきあいあい)な雰囲気なので邪魔するわけにはいかない。
──{それがの……非常に言い難いことなんじゃが……………お主に授けたスキル『夢世界旅』あるじゃろう……?}
バツが悪そうに、勿体つけた様子で話す駄目神にイライラして思わず素を出して声を荒げる。
──『それがなに!?』
──{あれ……やはり人間が扱っていいものじゃなかったみたい、世界線が複雑に絡み合い過ぎて収集がつかなくなってお主の前世見失っちゃった⌒☆}
──『お前が気軽にギフトしたからだろうがっ!!?てへぺろみたいに可愛く言っても許されると思うなよ!!?』
要約すると──『夢世界旅』にて様々な試行をした結果……俺の世界線は膨大な数となり、更には『運命』という縛りを突破する力を身につけてしまった故に天文学的な数値となって……管理すらままならない状態にあるらしい。
今や俺の未来は無限をも遥かに超える可能性が秘められているとの事だ。
字面だけ見るととても希望に満ち溢れているが……そのせいで戻るべき世界は虚無の彼方へと押し出され、何処かへ消えてしまったというのだから元も子もない。
──『どーすんだこの野郎!? やっぱりポンコツ神じゃんあんた!』
──{お主が毎夜の如く別世界への干渉をかけるからじゃろうが!!}
──『逆ギレすんな!! だったら注意事項として最初に言っておけば済む話だろーが!! なんのリスクもありません、みたいなツラしてりゃあそりゃどんどん使うわ!! どーすんの、いまさら「やっぱ帰りません」なんて恥ずかしくて言えないからね!』
──{心配は無用じゃ、お主は精神を剥離してしまった以上……どちらにせよもうこの世界にはおれん。このままじゃとそのまま消え去る}
──『余計駄目じゃねえか!!』
「……ぁのう、おじさん……どうかしましたか?」
ポンコツ神様と言い争っていると阿修凪ちゃんが心配そうにこちらを窺ってきた。気をつけてたつもりが彼女の耳まで届くくらいに声を荒げていたようだ。
阿修凪ちゃんに事態を打ち明けるべきだろうか──いや、もし消滅なんて事になったら彼女に余計な負荷をかけさせかねない。文化祭はまだ終わっていないのにそんな心配を増やしてたまるものか。
──『あー、いや……その……あ、そういえば阿修凪ちゃんみんなは?』
「今、機材の撤収が済んで自由時間になったからトイレに来たんです」
言われて辺りを見回してみると、そこは確かにトイレの個室だった──だが、一つ、ありえない光景が視界に飛び込んできた。
──彼女の隣に誰かが立っているのだ。
だが、不思議な事に彼女は全く意に介していない。
あの警戒心の強い阿修凪ちゃんが。
気づいていないだけだろうか? しかし、個室内のこの距離で? すぐ隣にいるのに?
そこから推察されるべきものがなんなのかは考えてる余裕はないけれど──間違いなく、普通じゃない。
──『阿修凪ちゃ──っ!!』
呼び掛けは届く事無く、そこで俺と彼女の意識は途切れた。




