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213.女子高生(おっさん)の最終イベント『文化祭』プログラム⑦~舞台裏~


『あーゆーれでぃっっっ!?』


 未だ緊張感が抜けきってはいない様子の、少し舌ったらずの観客への呼び掛けは……天然のあざとさ抜群で今日イチのレスポンスを館内に響き渡らせる。

 熱気に返答するようにヒナ達の演奏が始まると、そこはもう音を楽しむだけの世界へと変化した。


 両手でしっかり掴んで放さないようにマイクを握る彼女の時は──今、ここから再開するんだ。


『進み続けていく未来、回る廻るように前に』


 ──彼女の歌を聴きながら、ふと考えてみる。

 本当は微塵もそんなつもりはないけれど、もしも、この世界に残り続けたらどうなるのだろうか。


『どんなに苦しくても、この道はもう逃さない』


 以前に阿修凪ちゃんが要望していた通り、交代制にして今の現実を生きていくのも悪いものではないかもしれない──と勿論考えた事もあった。


『当てのない現実なんか焼き尽くしてしまえ』


 きっと毎日楽しいだろう。

 高校を卒業したら百合ハーレムを作り、毎日女の子たちを傍らに(はべ)らせながら小説を書いてだらだら過ごす。

 お金は有り余ってるし、働かなくても大丈夫。

 憧れだったタワマンに住むのも余裕だ。

 たまに男たちにちやほやされながら、それを横目で見切り、恥ずかしがる阿修凪ちゃんを(いじ)りながら夜は夢気分旅(めいせきむ)で別世界の自分を過ごす。


 阿修凪ちゃんが望むのなら身体は彼女に返して、困った時にだけ現れる『もう一人の人格』として精神体で一生を過ごすのもいいだろう。


 どちらにせよ希望と勝利満ち溢れた未来──元々いた世界とは比べるまでもない確約された人生。


『掃き溜めの中の真実を、さぁ、この掌に掴め』


 そんな想いを汲み取ってくれたのか、キヨちゃんがおっさんの意識の中に姿を現した──きっともう迷いや後悔が産まれないように。


──{……阿修羅、もうそろそろ時間じゃ。精神の解離はほぼ済んだ……別れる覚悟をしておくとよい}


──『……うん。大丈夫、とっくに済ませてある』


──{……ならばよい}


『脇目も振らずに走り続けてきたー、高鳴り張り裂けそうなこの胸が響いて君の名前を呼ぶー!』


 サビに突入すると、彼女からはもう負の感情はきれいさっぱりと消え去っていた。

 クラスメイトたちと、出会うはずもなく出逢った人たちと、これから出会うかもしれない人たちと……会場全てを巻き込んで一体と化していた。


『もう振り返ってる時間なんか無いよ、前へ前へ進め!! レディステディゴー!!!』


 もう大丈夫だ、世話の焼ける別世界の自分は──前へと進み出したから。

 おっさんの(じぶん)は必要あるまい。

 お礼なんか必要ない、(じぶん)(じぶん)を成長させただけなんだから。


 ありがとうも別れの言葉もいらない。

 俺も、キミのおかげで前へ進めるから。


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………


……………


…………………………



 ──大盛況で口火を切る事に成功した2-A組のみんなは興奮冷めやらぬ様子で……舞台裏で喜びを分かち合っていた。


 本当は、ライブの最中にそのまま消えようと思っていた。おっさん、別れの挨拶とかすると泣いちゃうから誰にも悟られず元の世界に帰ろうと。

 そんな終わりに向けた空気感をめっちゃ出していたのに……まだ前世に戻るには時間がかかるらしい。


「──おじさんっ!! 私やりましたっ!! 見ててくれましたかっ!!?」

──『あ、うん。見てた見てた』


 まぁ、最後に喜ぶ阿修凪ちゃんの顔が見れたしいっか──そう微笑んだ、その時……キヨちゃんから通信が入った。


 ついに、別れの時間だ。

 しかし……神様の口からは耳を疑うような台詞が放たれた。


──{…………阿修羅、すまん。元いた世界に……帰れんかもしれん}

──『………………………は?』


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― 新着の感想 ―
[良い点] めっちゃ続きが気になる!! 更新楽しみにしてます!!
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