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212.女子高生(おっさん)の最終イベント『文化祭』プログラム⑥LIVE START


〈アッ………【アオアクア】だーーーっ!!!〉


 誰かの叫びが会場に響くと、呼応するかの如く怒涛の歓声が湧いた。

 その歓声をBGMにして──イドちゃんに続き、バンドメンバー達が体育館内に姿を現した。照明が皆を照らす、その様はピンチに駆けつけてくれたヒーローそのものだ。

 王の通り路を自然と開ける群衆と化した観客を尻目に舞台前まで来たイドちゃん達は微笑んで阿修凪ちゃんに声をかけた。


「間に合って良かった。阿修凪ちゃん、頑張れ」

「あっ………イッ……イド様っ……アオアクアが私の目の前にっ…………」

「やー、すまんなぁ。遅くなってもうたわ」


 阿修凪ちゃんが感動に浸る間もなく、軽薄そうな声が館内に木霊した。入場してきたその声の主はどこかで見た事のある赤い髪のイケメンだ。


〈【八神三日夜】っ!!?〉

〈スゲーッ!! アオアクアに続いて八神三日夜までっ!!〉


 騒がれてるところを見るに有名人らしい。

 おっさんは知らないけど阿修凪ちゃんに(ゆかり)のある人物だろうか、クラスの女子達にも騒がれていて非常に不愉快である。


「おじさん会った事ある人じゃないですか……私も名前までは覚えてないですけど……」

──『そうだっけ?』

「ごめーん、お待たせー」


 おっさんの疑問を余所に、続けて入ってきた声の主にはさすがに度肝を抜かれる。

 なんと、入場してきたのは【波澄阿修凪】だった。

 何を言ってるか自分でもわからねーし、会場も混乱の一途を極めている様子だ。


「──なんちゃって。アシュナさんのコスプレしてみたよ、きなこでーすっ」


 一部のオタク達から悲鳴が上がった。

 怒涛の有名人ラッシュにより会場のボルテージは限界を突破した……阿鼻叫乱だ。


「あたし達が来るのを待っててくれたのよね? ごめんねアシュナ、遅くなったわ」


 更に続けざまに、見知った顔が入場してくる。

 ライブの日を最後に、養成所に(こも)って本物のアイドルになるべく修行を開始した〈ブブカ四十八手〉不動のセンター……【七海八天】と【オータムP】、そして研修生のみんなだ。


「ヤソラちゃん……」

「素晴らしいパフォーマンスだね、わざと静まり返らせたところへのラッシュ……うん。僕も見習わせてもらおうかな」


 オータムPの台詞により、彼等の遅刻発言の真意を知る。

 集まった芸能人たちは、示し合わせるように目配せをしたのちに阿修凪ちゃんを守るように観客達を見る。これも調和予定(パフォーマンス)──観客達にそう思わせているのだ。


「さ、アシュナ。思う存分やりなさい」


 さすがにこの優しさを受けて、下を向いていられるほどに阿修凪ちゃんも愚かではなかった。


 彼女の心は──もう前しか向いていない。


「……皆さん、ありがとうございます。おじさん、今度こそ見ていてください」

──『……うん。頑張れ』


『──今日は、お集まりいただいてありがとうございます。楽しんでいってください!! 【アオアクア】さんの『lady steady go (レディステディゴー)』歌いますっ!!』


 熱狂のステージは、最終回直前に旧友達が集まってくるという週刊少年ジ●ンプなみの王道展開のおかげで出だしから最高潮で幕開けした。


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