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210.女子高生(おっさん)の最終イベント『文化祭』プログラム④~来賓挨拶・2年A組出し物~


「──嗚呼、貴女は何故こんなにも美しいのでしょうか……」


 教員と生徒会役員による演劇が繰り広げられている。

 プログラム表によると演劇のタイトルは【お嬢様と美しすぎる野獣】──著【皇めらぎ】らしい。

 世間知らずのお嬢様と、中年の心を宿した美少女とのハートフルストーリー……明らかにめらぎと阿修凪(おれ)をモデルにした役はめらぎ役を【桜花先生】が、阿修凪役を【めらぎ】が演じていたりと──なんかもうどこから突っ込めばいいのかわからない程に突っ込みどころ満載だった。


──『ほら生徒会長、力尽きてる場合じゃないよ。現生徒会長として前生徒会長の雄姿から姿勢を学ばなくちゃ生徒会長』

「ぅぅ……おじさんの意地悪っ!! 生徒会長って連呼しないでくださいっ! 私はまだやるとは言ってませんからっ!」


 生徒会長はおっさん相手に生声で対応して観客の注目を集めてしまい更にダメージを負った。


「ぅう……もぅぃゃ………」

『──続きまして、ご来賓の方々をご紹介させて頂きます。現内閣総理大臣──』


 なんかとんでもないご来賓の方々がご紹介されている気がしたが、ネガティブモードになってしまった阿修凪ちゃんを励ますのにそれどころではなく……お偉方の挨拶は頭の片隅にも入ってこなかった。


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 来賓の挨拶が終わり、生徒達は一旦解散して退場する。ここからは学校関係者ではない野獣達がナンパ目的で我が校に足を踏み入れる時間だ。わざわざ高校の文化祭に足を運ぶ輩なんてそんなやつらしかいないだろう(※偏見)。


 在校生達は各クラス、部活動それぞれの催しにて入場者達を歓迎する。

 一番人気が出そうなのはやはりメイド喫茶であろうか──いや、間違いなく体育館内のプログラムにてトップバッターを飾る我らがガールズバンドに違いない。


 着々と準備を進めるクラス一同を舞台袖から主役の四人が見守る──閉ざされた暗幕の向こう側は、見なくても満員御礼なのが人々の騒ぎから伝わってくる。

めらぎによると体育館外まで大群衆が押し掛けていて学校内部は閑古鳥が鳴いているという。


「なんかさー、来賓の中に変な人いたよねー。どっかで見たことあると思ったんだけど……うーん、思い出せない」

「ヒナ、それよりあんた緊張しないの? なんか暗幕の向こうえらい事になってるみたいだけど」

「ま、紛らわせてるだけに決まってるじゃーんっ……手の震えヤバいよー……」

「ぅぅ~……お客さんいっぱい~……」

「ぁはは~ホント凄いね……」

「ぅう……うまくできるやろか……」


 照明係のエナやコミュ力の神様のミクまでもが普段とは違った様子を隠しきれない……これにはおっさんでも固唾を飲む──秋葉原でのライブやコミケ以上の人だかり……もはやちょっとしたフェス状態だ。


 もう阿修凪ちゃんにとってはオーバーキルも同然なのできっとおっさんの鼓舞が必要だろう──と、思いきや……彼女は冷静な表情をして皆に微笑みかけた。


「──大丈夫、いっぱい練習してきたんだから。みんな、楽しもうよ」


 阿修凪ちゃんのその台詞に、浮き足立っていた皆は落ち着きを取り戻し……蔓延していた不安な空気感は取り払われた。

 間違いなく彼女自身が本心で、彼女の意思により放たれた言葉だ。


 阿修凪ちゃんはセンターマイクへと悠然と歩き、その細い脚を震わせる事もせず……その足で自分の位置を踏み締めたのだ。


 一体どうしたのだろうかと彼女の思考を巡ってみると……そこにあったのは何もない真っ白な空間──『無』だった。


「ぁは、ぁはは。楽しいな~」


 これまでの怒涛の攻撃により、阿修凪ちゃんはトランスしていた。サウナでいう『ととのう』状態だった。

 そんな都合に構うことなく、無情にも、彼女にとっての火蓋と舞台の幕は切られ、落とされる。





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