206.女子高生(おっさん)とその歌の名は
【アオアクア】(愛称【アオク】)
・vo
【ido→→new『王女』イドリシア・アーク・オルクベルク】
エルフの大国『スノードロップ大国』の第三王女。絵描きと詩が趣味で各地を廻ってはその情景を形にしていた。
・ba
【letsuya→→new『最強勇者』レツジン】
世界を魔王の支配から解放した伝説の勇者。泰平の世を築いてからはギルド仕事みたいな事をしていて、そこでイドちゃん護衛の任に就き、出逢いを果たしたらしい。
・gt
【sen→→new『千の魔女』サウザラシア】
千の顔を持つとされていた魔女だったらしい。その魔力は魔王すらも凌駕したとかどっかで聞いた設定。
・dr
【yukky→→new『支配竜』リヴァイトネス】
竜だったらしい。
「──と、いうわけでメンバーはみんな異世界からの転生者だったんだ……」
「はい」
いや、はいじゃないが。
メンバー全員転生者とか……普通の人が聞いたらドン引きすることさらっと言うじゃん。
おっさんは信じるけど……というか、おっさんも人のこと言えない存在だけど。
要約すると(深掘りするとラノベ20冊分くらいの大作ストーリーになってしまうため割愛)、どうやらメンバーの皆はかつて全員揃って【天幻郷】にたどり着いたことがある。
そして没後、日本へと転生。
引き寄せられるように再会し、【アオク】結成。
しかし、イドちゃん以外のメンバーは前世の記憶を引き継いではいなかったようで……
「──でも、私はメンバーに対して何処か懐かしい感覚がずっとあった。そのもやもやが【天幻郷】と繋がってるとは思わなかったけど……」
イドちゃんがずっと【天幻郷】の景色にこだわっていたのは、景色自体よりも……かつての同郷(?)仲間がこの世界でもすぐそばにいた事から感じる懐かしさの正体──それをはっきりさせたいというものだったのかも知れない。
故郷に帰れず、日本に転生してからは不安と孤独を抱えていただろうイドちゃん。
彼女は何度も故郷の世界を望み、詩を紡いだ。
歌っている時だけはきっと……イドリシアとして、かつての情景を視界に夢描いていたのだろう。
そんな彼女を、たとえ記憶が無くても支え合い、励まし合い、競い合いながら共に過ごしたメンバーが……かつての仲間だった。
「イドだけ美貌引き継いでてずるいよなー」
「レツヤだってあの頃と同じ凛々しいままだよ」
「ええやん、俺なんか魔女やったのに男に産まれ変わってるんやから」
「僕なんかヒトですらないよ、竜だよ竜」
「あはは。みんな変わってないよ」
彼女にとって、それがどれくらいの救いになったかその胸中は計り知れないが……いや、そんなの語るだけ野暮というものだろうか。
再び皆でたどり着き、笑い合う光景は──時も世界も次元も超越する。
【天幻郷】は今ここに復活した。
四人が語り、描き、奏で、紡いだその曲におっさんの歌詞が丸々使われたのは誇らしいというか恥ずかしいというか……複雑な心境ではあったけど、彼ら自身をもってして『至上の一曲』と言わしめる歌はこうして完成を迎えた。
タイトルは────【虹】
雨上がりに架かった、壁を越えたその橋は、今ここに奏でられる。




