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204.HI SCHOOL GIRL(OSSAN) of FANTASY Ⅴ


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「ぐすっ………ぐすっ……………わたしっ……ずっと寂しくて……みんなと仲良くなりたいだけなのに……魔王ってだけでみんなわたしに攻撃してくるし………魔物のみんなもよそよそしいし……独りぼっちだったの……」


 ネオちゃんは体育座りしながら、隣に座る俺の手を握って語り始める。


 あれから感情が(たかぶ)ったのか大泣きし始めた魔王のネオちゃんの頭をナデナデして落ち着かせたら重傷だったみんなの回復もしてくれた。


 みんなは不思議がっていた、ネオちゃんも。

 本来ならば魔族とヒト族の間には長い歴史の間に積もっていった絶対に心を許せない隔たりが存在していたはずらしいが──それが薄れている感覚がする、と。


 事実、あれだけ壮絶バトルを繰り広げていた両者は話し合いをする空気になっていた。

 たぶん、推測でしかないが……おっさんの持つスキルが世界に影響を与えているのではないかと思う。

 バトルイベントを切り上げて、さっさと幼女ちゃんを愛でるエロイベントに突入したいと望む強い心が……仕様(せかい)に大きな変化をもたらしたのだろう。


「そっか……うん、辛かったね……じゃあ、これからは私がお友達だよ」

「ふぇっ……?? いいの……?!」

「もちろんだよ、なんなら……一緒に住まねぇ?」

「……ふぇぇ~んっ、アシュナお姉ちゃ~んっ!! うんっ……一緒に住むぅ~っ……!!」


 某イケメン俳優のような誘い方をしたら簡単に了承もらえた。いや、俺だから(スキルのおかげ)なんだろうけど出会ってから数分で即墜ちしすぎだよこの魔王。


 ぐへへ、これはじっくり情操教育して性観念を叩き込んであげねばなるまい。


 とにかく、これでようやく【天幻郷】とやらの景色を拝む事ができる。

 いや、景色を楽しむだけじゃなくて涌き出る想いを歌詞に変換しないといけないんだった。

 イドちゃんを納得させる詩が作れるか不安だけど──それでも、待っててくれるイドちゃんや学校生活を変わってくれた阿修凪ちゃんや護衛してくれたここにいる皆のために頑張らないと。


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「……………………え?」


 洞窟を抜けた先──闇を抜けた先に待ち受けていた光景は…………雨の吹き荒ぶ、単なる荒野だった。


「………これが……【天幻郷】……?」


 はたしておっさんがおかしいのか──もしかして異世界人には一周回ってこれが美しい景色に見えるのだろうかと疑念が過ったが……そうではないらしく、みんなも絶句している。


「…………もしかしたら、長年に渡る気象や地形の変化などによって……とうの昔に景観が失われてしまったのかもしれません」

「エルフは人や魔族よりずっと長寿だしね……アシュナの友達のエルフが子供の時って相当昔なんじゃない?」

「…………あ」


 そうだ、イドちゃんは長生きなエルフってだけじゃなくて現世でも何回も人生をやり直してる。

 仮に五十回50歳まで生きたとして50×50で2500年もタイムリープを繰り返してるのだ。

 更に霞むくらいの子供の頃の記憶となれば……もう何千年も昔のことになる。


「そんな…………」


 いくらなんでも果てなく続く曇天と無機質な岩の連続で歌詞を書けるほどにおっさんは作詞に精通していない……仮にこの情景を想い描いたとしても、イドちゃんの望むべく詩になりえる筈もないのは明らかだった。


 更に強くなる雨と雷鳴の奏でる寂しげな音は……まさに今の心を映し出しているようだ。


 詰んだ。

 もうどうしようもない。


 こうなったらもう想像に委ねて書くしか道は残されていない。

 しょうがない、だってもう無いものは無いんだから。

 イドちゃんにはありのままを伝えて、それからどうするか対策を考えよう。


 そう割り切ろうと考える心とは裏腹に、恩返しが叶わなかった悔しさで胸はいっぱいになった。


 結局、おっさんに出来る事はなにも──


「アシュナ………ほらっ、行くよ」

「そうですよ、アシュナ様。悲壮に満ちたアシュナ様もそれはそれで良……ごほんっ! 落ち込んだ顔は似合いません」

「うふふ、そうね。私は古代魔法関連からあたってみようかしら」

「…………え? ……なんの話……行くって何処に?」

「【天幻郷】を復活させる方法を探しに行くに決まってるじゃんか! まだまだ時間はいくらでもあるんだからねっ!」


 皆は、まるで打ち合わせでもしていたかのように──同じ気持ちを抱き、同じ答えを口にした。


 あぁ、そうか。

 みんなは事情を知らないから。

 景色を復活させる方法を探す……間違いなくそんな時間はおっさんにはもう残されていない。

 現世での猶予……レコーディング等の時間などを考えるともう3日もない──無理なんだ。


 そうとは知らずに皆は、まだ希望は絶たれていないと晴れやかな表情をしている。

 どころか──これまで散々いがみ合ってきた……関係の薄い、仲の悪い筈の皆が微笑み合い、同調し、俺を見て並び立っていた。


 ただ、俺の力になりたい──それだけのために。


「あはは、初めてじゃない? 意見が合うの。あんたらの事は気にいらないけど……まぁ、アシュナのためだからしょうがなく付き合ってやるわよ」

「あら、うふふ……先に言われたわね。ま、今回みたいな事もあるし……それなりに腕の立つ貴女達がいないと色々面倒そうだし、ね」

「…………魔王も仲間になったし、もう大丈夫だと思う」

「おや、気高き竜の再来から仲間という言葉が出てくるとは驚きだな」

「──っ! う……五月蝿いっ!」


 もしかしたらこの世界に来て初めて見た、みんなが笑い合っている光景。

それは種族も思想も信念も価値観も意見も立場も……全てが現世以上の差別を蔓延させる殺伐としたこの世界に咲いた──壁を越える一輪の華のようだった。



「……………………………………………これだ」


 自然と、想いは溢れた。

 世界を越え、壁を越え──時を奏でた先にあったその光景……雨が上がり、虹の下で、理想へと俺は行き着いた。



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