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202.HI SCHOOL GIRL(OSSAN) of FANTASY Ⅲ


《グオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!》


 唸る魔物、響く咆哮、昂る炎、迸る雷、激震する洞窟──おっさんが心の何処かで待ち望んでいたファンタジーバトルは今まさに実現していた。


『悠久無限の精霊よ、我が名の下に其の姿顕現し、彼の罪を滅ぼさん──【リバーシクル・エンド】』

「うわっ?! こらっ終焉の魔女!! 今あたしらごと消そうとしたでしょ!!?」

「うふふ、当然よ……アシュナちゃん以外の生物はこの場にいらないもの。ついでにあんた達も消せれば御の字よ」

「魔女……敵……今すぐ滅す……」

「エンドレスっ、今だけ協力してこの若作り魔女倒そう!!」

「………ぼくは阿修凪以外とは手を組まない、邪魔するなら勇者も消す」

「もうっ!! どいつもこいつも度し難いなぁっ! いいよ! まとめて相手してあげるからっ!!」


 相変わらず、仲の悪い勇者ちゃんと魔女さんと竜娘ちゃんは軽々と敵を(ほふ)ったのちに喧嘩を始めた。

 そんな何度目かの光景にトワちゃんがうんざりした顔で仲裁に入る。


「いい加減にしろと言っている。貴様らアシュナ様がこの隙に魔物に襲われでもしたらどう責任を取るつもりだ、貴様らの命まとめても等価にならんぞ?」

「トワイライトがそばにいれば絶対大丈夫でしょ? 異次元の防護職(タンカー)なんだから」

「へっ……? トワちゃんて『タンク』なの?」

「はい、私の剣技はカウンターを主としていますので進んで魔物の相手をする事はありません。戦闘役割(バトルロール)はタンクです。しかしご安心ください万象あらゆるものを跳ね返す【剣聖技 万象跳滅】でこれまで攻撃を喰らったことは一度もありません故。無論、アシュナ様にもかすり傷一つ負わせることはありません」

「あら、じゃあ私の全てを呑み込む消滅魔法とどっちが強いか試してみる……?」

「あたしの防御不能奥義【インフィニット・エヴァー・ラストダンス】も跳ね返せないと思うよ」

「……どいつもこいつも浅い……支配竜の精神領域の前では技なんか無意味……」


 なにそれ全部めっちゃ凄そう!! 夢の間しかいれないのになんでそんな気になる事ばっか言うの! めちゃくちゃ見たいんだけど! そしていつまで最強議論してるの! これ以上おっさんをわくわくさせないで!!


「そうでした……申し訳ありません。先へ進みましょう」


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「──うわ、下見てよ。外に出したらダメな魔物だらけだよ」

「本当ね、なんでこの場所にだけ伝説級の魔物が集まってるのかしら……?」

「どうでもいい、ぼくにとってはただの雑魚」


 どれだけ進んだだろうか──途中で下に降ったり、休憩キャンプしたり、みんなで水浴びして異世界おっぱいを堪能したりしながら更に開けた場所に出る。

 そこは高台のような場所で、東京ドームくらい大きなその空洞の地底には巨大生物がうじゃうじゃと(うごめ)いていた。


 サイクロプス、巨大鬼(ジャイアントオーガ)、恐竜、機械式ゴーレム……どれもこれも身の丈20メートルは下らない──間違いなく下に飛び込んだら一秒も命がもたないだろう。


「これだけの異種魔物が一同に……確かに妙だ……」

「ま、どうでもいいじゃない。むしろ一箇所にまとまってくれててゴミ掃除が捗るわ。深遠の闇よ、深く、深く……彼の輝きは永久の塵と化し、やがて染まる那由多の標を築くだろう……【無限大数終焉(コスモエンド)】」


《グオオオオオオォォォォォォォォッ………………》


 まるで散歩でもするかのように穴に向かって悠然と闊歩しながらどでかい闇魔法みたいなので魔物達を一掃するどスケベ魔女。

 遅れをとったのが悔しかったのか──続き、勇者ちゃんと竜娘ちゃんも光の剣を巨大化させたり、口から炎を吐いたりと無茶苦茶している。


 ラストダンジョンでエンカウントしそうな魔物達は為す術なく蹂躙されていた。なんなのこの人達……パーティー募集かけて集まってきていい人材じゃないよ。


「ここを抜ければ目的地はすぐそこです。奴等の掃除が終わるのを待ちましょう」


 おっさんだった頃のなろうトレンド──『何もしないで最強の仲間に溺愛されながら護られて送るスローライフ』を存分に味わいながら、文字通り高みの見物していると……魔物の亡骸が積み重なっていくその奥に、一筋の閃光が(はし)った。


 なにかが光っただけかと思いきや、その光は、真っ直ぐな線となってこちらへ向かってきた。

 パーティーメンバーの技じゃない、間違いなく、こちらを狙った攻撃だ──


「アシュナ様っ!!」


 ──のを脳が理解できたのは、トワちゃんが俺の名を叫ぶのを耳で捉え、閃光が霧散して霧状になっていくのを目の当たりにした後だった。

 いつの間にかトワちゃんが目の前に立っている……恐らく閃光から俺を庇ってくれたのだろう。


「……………何者だ……?」


 目前に立った彼女の表情は捉えられないが、光を弾いたであろう大剣を握る手は微かに震えていた。

 今の攻撃が予想外の威力だったのか、閃光を放った者の正体を視認したからか──或いはその両方か。


 土煙を舞い上げ、閃光を放ったらしい(シルエット)は空を飛びながら……目の前に降り立った。


「……ふぇぇ……【天幻郷】を見に来ただけなのに……なんで邪魔するんだよぅ……やだよぅ……もう嫌だ……みんな消えちゃえ……わたしは【邪神魔王 ネオ=オン】全ての記憶……全ての次元を滅ぼして……そしてわたしももう消えるっ……永遠に!!」


 魔王いた!! 会敵(エンカウント)しちゃった!!

 しかもなろうにありがち女ロリっ子魔王ちゃんだしどっかで聞いたような台詞言ってるし!!


 ただ景色見に来ただけなのに世界の命運かけた最終決戦始まっちゃう!



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