194.女子高生(おっさん)と約束②
──『ん……にゃ…………あ、あれっ? おじさんっ? どうしてVRを……? 学校はどうしたんですか?』
「寝てるとこごめん、事情は後で説明するよ。阿修凪ちゃんも一緒に探してほしいんだ──ヒマリの様子がおかしい原因を」
多世界code『luck0085536995443』→→→→→『unl03612445891445652』〉-
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────【波澄阿修羅 17歳】────
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別世界……阿修羅にとっては元の世界と言うべきか。
文化祭に向け、着々と準備が進む別次元の初秋へと俺は憑依した。波澄阿修羅として生きている高校生時代へと戻るのはなにか不思議な感覚だ。
なんせ【阿修羅(中年)】→【阿修凪(アシュラ中年)】→【阿修羅(高二(阿修凪(アシュラ中年)))】という憑依に次ぐ憑依状態なのだからゲシュタルト崩壊してもおかしくない。
──『………事情は把握しました。とりあえず、おじさんの世界でのヒマリちゃんから探るんですね?』
「うん、ここなら別世界だし夢だから……多少無茶をしても大丈夫だろうしね。この次元の阿修羅には申し訳ないけど」
どうやら今は休み時間中のようだ。
とりあえずヒマリの様子を窺ってみるしかないだろう──と、思索しているとちょうどヒメが横を通りかかった。
「あ、ごめんヒメ。ちょっと聞きたいんだけど」
「……………へっ? アタシ? え……えーっと……なに?」
あ、しまった。
今の俺はフレンドレベルゼロの阿修羅だった。ヒメは突然話した事もない陰キャに呼び捨てにされて困惑した様子を見せている。真の陽キャであるヒメだったからかろうじて対応してくれたが、下手な女子だったら『は? 誰お前?』と言われるところだ。
「えーっと、ヒマ……樋廻さん……なにか体調悪そうだったけど……大丈夫?」
「え? あー……うん。たぶん……それじゃ」
「あ、はい」
ヒメはそれだけ言ってそそくさと離れていった。仕方ないので見知った顔に手当たり次第話しかけて情報を得る事にしよう。
「あ、テンマ。ちょっと聞きたい事が……」
「誰だ貴様は。馴れ馴れしく話しかけるな」
「……あ、キラ……鏑木委員長。少し話が……」
「……ぇ、ぁ、す……すみません……先生に呼ばれていて……」
「…………あ、藤原くん! ちょっといいかな!?」
「へ?……悪い、誰だっけ? 俺ちょっと急いでっからさ! また後でな!」
駄目だ、信頼度が低すぎて全然情報を引き出せない。こいつらアシュナ相手ならグイグイ来るくせになんて現金な奴等だ。
──『おじさん……だ、大丈夫ですっ! 私はおじさんの味方ですからっ!』
「………その慰め方泣きそうになるからやめて……でもありがとう……」
唯一会話できるケン達は別クラスなので探ってみても何も知らないだろうし……仕方ないからヒマリをストーキングするしかないかと策を練っていると──一人の女子がこちらへ向かってきた。
「ねー、今日どしたのオタクくん? なんか様子変じゃね?」
ご存知、コミュ力の神様──ギャル【ミク】だ。
ミクとはどう思い返してもこの時代に喋ったことは皆無だが、そんな事関係無しといった感じで話しかけてくれた。
「い、いやー……ちょっと【樋廻陽葵】さんの事で聞きたい事があって……」
「え? なになにコイバナ!? そーゆーんならあたしに任せてよ! クラス事情にはちょー詳しいから!【ヒマリん】狙いなの!?」
ミクは俺の机にお尻を乗せて、太ももの隙間に絶対領域をつくって見せつけてきた。
こんなん、絶対好きになっちゃうやつやん──と、おっさんはギャル様に感謝しつつ、現世に戻ったら滅茶苦茶愛でてあげようと誓った。




