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192.女子高生(おっさん)の歌詞づくり②


 『テコ入れ』──それは漫画やアニメ、ドラマなどで作品を盛り上げるために急展開を突然ぶち込む手法である。下火となったり中だるみしていた物語を燃焼させる起爆剤として用いられ、それにより巻き返す作品も多い。

 だが、使用方法を間違えると……作品を一気に終焉へと向かわせる諸刃の剣でもある。これまでの作品の軸を180度曲げるようなテコ入れはまず間違いなく読者がついて行けなくなり、見限られる。用法用量が極めて難しい一発逆転(ギャンブル)法なのだ。


「──麗しい……そなたは一体何処の国の姫君なのだ?」

「エ……エルフじゃなくただのヒト種族なんですかっ!? 貴女みたいな綺麗なニンゲン見た事ありませんよ」

「ぐへへへ……とんでもねぇ上玉だぜ……おい野郎共!! 俺様の嫁にするぞかっさらちまえー!!」

「……我とトモニ来い……竜族の王姫トナリテこの世界を支配シヨウゾ……」


 この現状を端から見れば、きっとそんなテコ入れにしか見えないだろう。

 日常百合コメディーだったはずが、いつの間にかファンタジー世界での大冒険活劇へと化していれば……週刊少年ジ●ンプだったら打ち切り待ったなしだ。


 だが案ずるなかれ──これは、別次元でのifストーリーであり……夢みたいなものなのである。





「………………うわぁ…………」


 ()()()に降り立つと……そんなため息しか出てこなかった。

 歌詞づくりのためにキヨちゃんに【異世界に到達した未来】を探してもらい、『VR』にてジャンクションした上でのため息である。


 つまり──おっさんは遂に紛れもない【異世界転移】をやってのけてしまったのだ。オブリ●オンで下水道を抜けて広大な世界を目の当たりにした時以来の衝撃と感動である。


──{もちっと他に例えようがないのか……}


「冒険好きの男の子を(たかぶ)らせるこれ以上ない表現だよ」


──{ほっほっ、感謝するのじゃ。本当に探すの大変じゃったんだからの}


「えーっと、イドちゃんが描いてくれた地図とメモによれば……『フラワー大陸南西のアネモネ地方』の何処かって情報しかないけど……ま、いっか。じゃあ景色を見つけた未来まで跳ぼっか」


──{待たんか! 念願の異世界に来た感想はそれだけか!? さくさく進めようとするでない!}


「二十代ならともかく……四十近くにもなると冒険心なんて失われてるんだよ。体力なくなって家庭用ゲームなんかできなくなるし効率良く進めなきゃ。おっさんになるって……悲しいことなんだよ……」


──{情緒もへったくれもあったもんじゃないの……}


 と、いうわけで異世界探索をしている暇も時間も好奇心も失ったおっさんは一気に『景色を見つけた未来』まで跳ぼうとした──


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「待たレヨ! ナゼ逃げる!?」

「ひゃっはー!! 待て待てーっ!!」

「待ってください! 貴女みたいな綺麗なヒトが外に出るのは危険です!! 私達とパーティーを組みましょうっ! そのためにはまず冒険者ギルドへ行って……あ、待ってください~」

「そなたは私と結ばれる運命にあるのだ、絶対に逃がしはしない! 衛兵! 彼女を連れ戻せ!」


 ──が、出来なかった。

 どうやら時間軸の関係により、この『阿修凪の世界線と同時刻』までしか進めないとか。つまりは同時進行──【歌詞づくりをしてる(アシュナ)】から派生した【異世界へ行ったアシュナ】は同じ時間上にいるので未来が未だ確定しておらず、跳ぶことができないらしい。


 一からチュートリアルしてたり、なんか王族っぽい男に見初められたり、山賊に追い回されたり、果てはドラゴンに求愛されてたりと……異世界でも大変な事になってる現状ばかりだった。


──{……間に合う事を祈って物語が進むのを大人しく待っておるしかないの……}


「はぁ……はぁ……そうだね……頑張れ、別次元の俺……」


 目的地に着いたら起こして、と安眠しながら……おっさんは祈る事しかできなかった。


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