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190.女子高生(おっさん)とido(イド)②


「──えっ? はっ? キヨちゃんどーゆーことっ!?」

「……えっ? キヨ……ちゃん?」

「あっ」


 キヨちゃんの衝撃の一言に、心の声じゃなく生声で反応してしまい……イド様に聞かれてしまった。


「あ……あははっ、ほらっ、私、ボディーガードがいるって言ったじゃないですかっ! その娘の名前がキヨって言って……」

「アシュナ嬢。私、キヨなんて名前じゃない」

「なばれっ!? 空気読んで!」


 仕事中なのでマナの部屋で寝てもらっていたカザカちゃんで誤魔化そうとしたら颯爽(さっそう)と屋根裏から顔を出して否定された。

 とりあえず、もう(はぐら)かすのは不可能っぽいのでカザカちゃんに『大事な話するから』と聞き耳厳禁令を出してイド様と改めて向き直ると……彼は更に衝撃的な話を始めた。


「【キヨ】ってまさか……【天海キヨ】のことかい?!彼女を知っているの!?」


──{なにっ!? お主あやつを知っておるのか!?}


「ちょっと! いっぺんに話さないでって何度も言ってるよね!? おっさん聖徳太子じゃないんだからキャパオーバーだから二人とも落ち着いて!!」


 混沌と化したその場を収め、もう一度……改めて流出厳禁な話し合いが始まった。


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 ──イド様の口から語られた【彼の正体】は、齢を重ねて驚きもへったくれも失ったおっさんをそれでも卒倒させるほどのパワーを孕んでいた。


「…………えーと、イド様……いえ、【スノードロップ大国】のエルフとして育った【イドリシア・アーク・オルクベルク】はある日、お亡くなりになり、日本で男として転生した。それがイド様」

「………うん」

「その時に出会ったのがキヨちゃんの奥さん【天海キヨ】さん。彼女はイド様に何度でもやり直せるタイムリープの能力を授けた」

「………ええ」

「それからというもの、イド様は何回も同じ人生をやり直している。歌う事が好きだったから何度も【アオク】でボーカルをやったけど……どうしても『最高の歌詞』を産み出せないまま……今日に至る。おk?」

「………はい」


 イド様──本当にエルフだったってよ。しかも元女性。

 ファンタジー世界から日本へやって来て、タイムリープ能力を有していて、未来を知っているという盛り盛り設定。

 何故、もうこの世界での出来事(おはなし)を終わらせようとしているタイミングでこんな重要そうなイベントを追加してくるのだろうか。


──{まったく驚いたわい……}


「こっちの台詞だよ………キヨちゃんの奥さん、一体なにしてくれてんの……」

「別に恨んでいるわけではないんです……むしろ、平和なこの国で大勢の人に歌を聴いてもらえるこの人生を与えてくれて感謝しています」


 イド様は話し方を女性としての振る舞いへと一変させた。元々イド様も女性の顔立ちをしているので全く違和感はない。むしろ、容姿とその佇まいにより本物の高潔なエルフみたいになっていた。


「えーと、まぁその件は一旦置いて……じゃあこの歌詞は……」

「……ええ、(わたくし)がかつて得心するに至らなかったものです……」


 こんないい歌詞なのに……てことはつまり、これではダメだという事で……歌詞づくりは暗礁に乗り上げたというわけだ。どうしよう。


「ですが、同じ体験をしている貴殿と出逢えて光明が差したようです。是非、最高の詩を創りあげるために貴殿の経験と発想をお貸し下さい」

「……………中年の経験とエロい発想しか持ち合わせてないんですけど……それで良ければ……」


 女子高生×ボーカリスト(男)──中身は【ただのおっさん】と【エルフの女性】の奇妙で本気な曲づくりが始まる。




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