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176.女子高生(おっさん)とコミケ②


〈会場西館 企業ブース〉


「──あら、阿修凪先生。それにお友達も、いらっしゃい」

「編集長!? それにみんなも!?」


 エアコンがまるで効いておらず、サウナのような会場内──俺達はまずオタク女子達に聞いた企業ブースとやらに向かい、到着した。

 意外にも移動は快適だった──真性オタク達は(アシュナ)が近くに寄ると……まるで磁石の反発のように勝手に避けてくれたからだ。

 ケン曰く『美少女が自分に寄ってくると恐れ多さに体が勝手に避けてしまう』らしい──確かに前世のおっさんにも身に覚えがある。電車などで美人の隣の席が空いても座れない……卑屈な隠の者の哀しき習性である。


「ふふ……我の計画通りでござるよ。アシュナ殿がいれば移動はスムーズになると思っていたでござる」

「泊まりの時に言ってた計画ってそれだったの……で、それ以外の計画は?」

「ノープランでござる」

「………」


 そんなこんなでたどり着いた企業ブースで待ち受けていたのが──出版者の面々だった。


「どうしてここに?」

「アタシらも毎年自社関連の作品の売り出しと宣伝で枠を取っているのよ。特に今年は主催側とスポンサー達から『是非、波澄先生の作品を取り上げて欲しい』ってせがまれてね、アタシら直々に販促に来てるってわけ」


 確かにそこには、出版社の抱えているメディア化されてる作品の関連グッズが列挙されていた。

 しかし、それらよりも明らかに──まだ活字しかない俺の小説の方が大々的に取り上げられていた。

 イラストすらない小説がコミケで人気を博すとは思えなかったが……そこには『波澄阿修凪生写真』なるものの写真が可愛らしいポップと共に飾られていた。


 写真も小説ももうないけど。


「既に争奪戦が繰り広げられて終わった後でもう在庫切れよ」

「まだお昼前なのに!?」

「それよりもお友達と楽しんでいらっしゃいな。もしも荷物ができたらアタシが預って後で送ってあげるわよ。あ、あと夏休みの終わりでいいから出版社に一度顔を見せて頂戴。メディアミックス化の要望が方々より押し寄せてきてるから話し合いたいの、ハリウッド映画化の話まで来てるのよ」

「まだイラストもないのに早すぎるし、それ受けちゃダメなやつですね! わかりました必ず向かいます!」


 そうして、俺は有名どころの作品ブースを見回りながら企業ブースをあとにした。


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「──ケン、ここは?」

「一般サークルエリアですな、同人誌や二次創作(ファンアート)を扱うコミケのメインイベントですぞ」


 お昼過ぎ──オタク達が一番賑わっているエリアへと場所を移した俺の目に映るものはどれも新鮮だ。

 いつだかも言ったが、おっさん同人誌の類はあまり(たしな)まないのだが……コスプレした可愛い娘達が書いたものならどれも買ってあげたいという魔力磁場がそこには発生している。


「同人誌を目にしたい時は売り子に声をかけて見せてもらえるらしいですぞ。」

「へぇ~、すみませーん。見てもいいですか?」

「ア……アシュナさん!? どどどどどぞうっ! なんなら差し上げますっ!」

「えっ!? いいんですかっ?」


 ──と、いうやり取りがどのサークルへ行っても発生し、おっさんの手には抱えきれないほどの戦利品で溢れ返る。お金払うと言っても『制作費は任意で頂いてますからっ』という謎理念で断られた。そしておっさんも無料で貰える物は何でも貰う貧乏性なので──結果、紙袋だらけというわけである。


「うわー、絵上手っ。おじさんのおちん●んもエレクトロしちゃうよ」


 などと同人誌を見ながら思わず大声で呟き、サークルの人達を真っ赤にさせたことは内緒だ。

 ケン達もお目当てのサークルを回れたようだし……次はいよいよ、おっさんの目的であるコスプレエリアへと向かう。




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