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156.女子高生(おっさん)と七海八天とタイムリープ問題②


〈東京 秋葉原〉


「──やっほー!! みんなー!! 会いに行ける劇場型アイドル【ブブカ四十八手】だよー!! 急な告知にも関わらずいっぱい来てくれてありがとー!! 楽しんでってねー!!」

「うおおおおおおっ!! それブブカッ!! ブブカッ!! ブブカッ!!」


 秋葉原は熱気の渦に包まれていた──路上仮説ステージとは思えないほどに、あらゆるタイプのオタク達が汗を撒き散らし、オタ芸をして空を曇らせる。駅前に設置されたステージにはあり得ないほどに黒い服ばかりを着た〈漆黒の闇〉みたいな連中が、所狭しと熱狂している。まるで地獄絵図だ。


 俺は舞台袖からその様子を眺める──まさか横からアイドルのステージを見れる日が来ようとは……いや、それどころか楽屋では未来のアイドル達の生着替えを網膜に焼きつけた。

 先程までは和気藹々(わきあいあい)としていた彼女達だが、さすがはプロ。ステージに立つとオタク雲の熱気も気にせず、ダンスと歌で会場を沸かせている。


「別にあんた達オタクのためにやってるんじゃないんだから! 勘違いしないでよっ!!」

「うおおおヤソラちゃーんっ!!」


 ステージ上で歌って踊るヤソラがマイクを持つと、観客が一斉に盛り上がる。どうやら地下界隈では既に人気爆発しているらしい……最近はつい彼女が未来のアイドル時代の先駆け的存在だと忘れそうになる。

 けど、やはりヤソラはアイドルになるべき存在だと再確認した。そのためにも俺はここで()()()()()()()()()()()()()


「どうかな? 生でアイドルとしてのヤソラを見るのは初めてかい? 圧巻だろう、当然だ──彼女がまだ子役だった頃に僕がスカウトしたんだからね」

「オータムP……だったら、尚更……」

「この業界はシビアな感情無しで生きていける世界じゃないんだよ。特に……僕みたいな立場ならね。より()()()()()()()()()()()を見つけたのなら、そっちを優先するのが僕の役目であり、偶像を崇拝する皆の願いなんだ」

「………」


 さっきまでの狂気に満ちたキャラが嘘のように、スーツ姿のオータムPはステージ袖でそう語る。確かな正論に一瞬、言葉が詰まってしまった──が、その理屈ならばと反論する。


「だったらヤソラは……ヤソラのアイドルにかける想いは、きっと誰にも負けない。私なんか踊れないし、歌うこともあまり好きじゃない──観客(オタク)のみんなは、きっとそれをわかります。本物のアイドルがどういうものかってことを──」


 そうだ、彼女は中年の心を宿す女子高生をも理解し、受け入れた。

 何も心配することはない、ドルオタはそこまで盲目じゃない。

 アイドルとして頑張ってきたヤソラや皆よりもぽっと出の女子高生なんかに傾倒する結果にはならないはすだ。


「──では、ここで……スペシャルゲストの登場です!! 他業界だけど話題のこの人……波澄アシュナちゃんでーすっ!!」


 おっさんは歌も踊りもなし。ただ壇上に上がるだけ。紹介されたのちに一言挨拶するだけ……それだけでトップアイドル達に敵うわけない。


 ステージに向かうと、観客は阿鼻叫喚と例えるのが相応しいくらいに半狂乱となったが……きっと大丈夫。


「──じゃあ説明した通りー、誰を推しにするか決めて投票してねー。さっきも言ったけど……一位になった子には特典があるからねー」


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〈集計終了 投票数598人〉


1.波澄阿修凪────572票 得票率99%

2.七海八天─────14票

3.他────────12票


「……………」


 あれだけドヤ顔でいい事語ったのに、ご覧の有り様だよ。そういえばオタクは顔しか見てないような奴等の集まりだった。信じたおっさんが馬鹿だった。


「うわー……あはは、完敗だねぇ……ここまで無双されると逆に気持ち良いやー……」

「…………」


 明らかにテンションだだ下がるメンバー達。ヤソラもうつむいて表情がわからないが間違いなく落ち込んでいる。


(……いや、でも、これは…………)


 俺はマイクを再び握った。

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