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14.女子高生(おっさん)のいる通学風景


 朝、学生で溢れかえる電車に乗る。

 これまたご都合主義で腕力や記憶はおっさんのままだったのに体力は若返りにより有り余っていたため普段は自転車通学していたけど、今日はなんとなく気分が電車だった。


 身動きが取れないくらいの車内では、通学通勤者が俺の周囲を囲う。大半が地元の高校生だけど、中にはスーツを着たサラリーマンもいた。


「……」


 俺の目の前ーー視界の先には他所の高校の可愛らしい女子高生。未だに残暑厳しい季節、無防備にも制服のYシャツは汗で透け、水色の下着が薄く浮き出ている。


「はぁ……はぁ……」


 汗と良い香りが混ざり合った匂いが鼻を通り、興奮により自然と息遣いが荒くなる。いくら【アシュナ】になってから女子と接する機会が多くなっていても未だに慣れない。魔法使いの称号は伊達じゃない。

 たぶんおっさんの息遣いは気持ち悪いだろうな、と身体を退け反らせようと試みたもののーー満員で思うように動けなかった。


「あ……あの……大丈夫ですか……?」


 すると突然、密着した目の前の女子高生から声をかけられた。おっさんの俺は条件反射で両手を真上に挙げ、決して痴漢していないアピールをして(ども)りながら応対する。


「な、なにがですか!? なにもしてませんけど!?」

「え……? えと……苦しそうだったので……あの、もしかして……」


 不思議そうな顔した女子高生は、突然背伸びしながら俺の耳元にその可憐な唇を近づけて囁いた。


「痴漢さん……でしょうか?」

「ち、違います! 確かに息は荒くなりましたけどそれは暑いからであって私は決して……」

「……い……いえ、あの……お姉さんの事ではなくて……お姉さんが後ろの人に痴漢されているのでは……? と思って……」


 我に還る、そういえば俺は女子高生なのだからされる側だと気付いた。

 横目でちらりと後ろを見ると、同じように息の荒くなったサラリーマン風の中年が必死に爪先立ちをしていた。端から見る分には確かに、現状の俺と同じように痴漢に見えなくもない。だが、それは同時に痴漢に見えないように奮闘する俺と同じに見えなくもなかった。


 果たしてどちらなのだろうか。


                    〈続く〉

 



 


 

 

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