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135.女子高生(おっさん)の修学旅行~最終日『泪と女と男』~


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〈AM7:15〉


「──お嬢、着きました」


 コクウさんのバイクに乗り、朝焼け眩しい海岸線へと到着する。以前に来た時の……何もなく、ただただ闇だけが存在したあの潮浜は──日が昇るとその景色を一変させた。


 鮮やかに彩られた山々に囲まれ、きらきらと輝く海と地平を羨望できるそこはまさに『異界』──神の国へと続くという伝承の地をまさしく体現しているようだ。


「よぉ阿修凪」

「hey、ハニー。待ってたよ」


 そして何よりも違うのは……静けさに呑まれていたその場所には多くの人らが俺を待ち構えていて騒がしかったこと。捜索や引き揚げ作業に携わったであろうヤクザ達や軍人達、アメリカン村にいたイケメンズ……皆が疲れも見せずに喜びに満ちた表情をしている。まるで大切な人にプレゼントを手渡すのを待ちきれないかのように。


「祠はあそこの洞窟まで運んだ、調べによると元々あそこに祀られていたみたいだったからな」

「みんな……本当にありがとう……なんてお礼をしたらいいのか……」

「ハニー、これは私達からのお礼なんだから。お礼のお礼なんていらないよ、さ、待ってるから行ってきなよ」


 マジメさんとミシェルちゃん、みんなに言われ……俺は再び──独り、洞窟へと足を踏み入れた。


---------------


〈AM7:30〉


「──よくぞやってくれたの……まさか、一日や二日で本当に見つけてくれるとは思わんかったわい……」


 洞窟内では当たり前かのように、キヨちゃんが鎮座していた。発見されたという祠は長い間海底にあったであろうことを象徴するように、(こけ)に覆われていたが……それでも神々しさやその威光は一切色褪せてはいなかった。


「……これで久々に国に帰れるわい……『あいつ』もいずれ捜し出して連れてこなきゃならんの」

「あぁ……『奥さん』だよね。その身体で大丈夫?」

「ほっほっ、言うたであろう。国に帰れば力は戻る……できんことなぞ早々ありゃあせん……これでお主もずっと【阿修凪】のままじゃな」

「良かった」

「阿修羅くんに戻ることもできるぞ……と、今一度改めて聞くことでもないかの」


 キヨちゃんはちらりと俺の後方に眼をやり、微笑みながらそう言った。確認しなくてもそこに何があるのかを知っている俺は迷うことなく答える。


「勿論、待っててくれる人がいるから」

「ほほ……それは何よりじゃ……改めて──ありがとうアシュナ。主の歩む先に数多の幸がある事を祈っておるぞ」


 瞳に(なみだ)(にじ)ませながら、キヨちゃんは幻のように視界から消えていった。潤んだ瞳に映し出されていたのは……洞窟の入口で心配そうにこちらを覗き込んでいたコクウさんと沖縄の面々の姿だった。


「もう『約束』もしちゃったし……ね」


 ポツリと呟いて、俺は皆が待つ場所へと歩きだす──祈らなくても大丈夫だよ。壁があってもみんなが必要以上に持ち上げて助けてくれるから。


 その心地よさと暖かさをくれる人達に、そして昨晩に交わした『約束』が叶う安堵に──俺も泪を(こぼ)しながら思いっきりの笑顔を返した。


~~~~~~

~~~

~~


-昨夜〈PM23:15 『ホテルの部屋』〉-


「──はぁ~、みんなでお布団でくっついてると身体がぽかぽかするね~。ヤソラちゃんもこっち来なよ~」

「あっ……ァタシはいぃからっ……!」

「………」

「どうしたのアシュナ? いつもなら触ってきたりするのに……具合悪い?」

「ずっと考え事してるみたいだけど……なにかあった?」

「……いや……皆楽しみにしててくれたのに……あまり一緒に遊べなくて……」

「なーんだっ、そんな事気にしてたの? 私達は気にしてないよー」

「うん、それに……あたし達で考えてたことあるんだ」

「……ぅん?」

「『卒業旅行』でまた来ようよっ! 沖縄っ!」

「ミクとかみんな誘ってさ」

「……卒業……」

「うん~、絶対行こうね~やくそく~」

「………うん、そうだね。うん、約束する。卒業したらみんなで行こう」


~~第4節 【巻き起こる様々な試練と それをいともたやすく乗り越える女子高生(おっさん)と日常】~~〈完〉



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