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130.女子高生(おっさん)の修学旅行~③日目『女と男2』~


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〈PM14:45 病院〉


「──おそらく過労によるものですね、一日点滴をうって様子を見ましょう」


 疲れとストレスによる一過性のものと診断され、ミシェルちゃんは検査も兼ねて一日だけ入院することになった。


 現在──病室の仕切りカーテンの中は俺とミシェルちゃんの二人きり……ヒナヒナ達もイケメンズ達もついてきたけど大所帯なのでロビーで待っててもらっているのだ。

 海を羨望できる窓からは静かな潮風と波音、目映い陽の光が室内に流れ込む。揺れるカーテン、壁、布団、そして黄昏(たそがれ)る彼女の肌、表情……その全てが白く輝いている。


「…………」


 点滴をうったミシェルちゃんはみるみる快復したようで……起き上がり外を眺めている。しかし、何故か熱があった時より静かで一言も発しない。

 だけど(うれ)いを含んだようなその表情はとても美しく、儚く見える。


「………ふふ、ありがとうねハニー……とても男らしくてheartがexcite(ドキドキ)したよ」

「えっと……もう大丈夫……?」

「ああ、心配いらないさ。俺は男だからね……この程度のことでdownするなんて恥ずかしいところを見せてしまったね……」

「………ミシェルちゃん、男だってそんないいもんじゃないと思うよ」

「………え?」

「なにかと言うと矢面に立たされるのは男だし、力がなければ頼りないって言われまくるし、痴漢とかにすぐ間違えられるし女性専用車両に乗ってると睨まれるし、身長無いと人権ないって言われるし、社会に出てつまらない仕事して疲れ果てても居場所ないし……」

「や……やけに具体的だね……」

「うん……何が言いたいかって言うと、男も女もそんな変わらないってこと。結局、男でも女でも心構え次第なんだなってこの齢になってようやくわかったんだ。だから無理しないで、皆に心配かけるのは男らしいって言わないよ」

「…………ハニーには好きな人はいるかい?」


 突然、ミシェルちゃんは恋バナし始めた。

 この流れでその質問の意図が掴めなかったが……学校の皆には『女の子好き』というのが定着してしまった故か(アシュナ)に恋バナが振られることはなかったので逆に恋バナしてみたい衝動に駆られていた俺は恋バナしてみることにした。


「世界中の性格がいい女の子全員かな~」

「……ふふ、スケールが大きいね。俺もね、いるんだ。そいつとは小さい頃に少し遊んだだけなんだけど……」

「えー!! マジー!? ね、ね、どんな人ー!?」

「きゅ……急にテンションあげてどうしたんだい……えーと、そうだな……大人しくて内気で……変わった癖をもつ奴だったよ」

「へー! その人とは今会ったりしてるのー!?」

「こ……声が大きいよ……一体どうしたんだい?」


 おっさんが思う恋バナする女子のテンションをやってみたつもりだったが、病室なので普通に迷惑だと思い直して真面目に聞く事にした。


「親の都合で俺は祖国に数年前まで帰ってていてね、子供の頃に別れたきりだったから……たぶん向こうは気づいていないよ………」

「……て、ことはミシェルちゃんは今でもその人と会ってるの?」

「……その通りさ」


 その時──イケメンズの一人が慌てた様子で病室に飛び込んできた。


「oh my god!! マイコー!! 【琉宮會】の女島が病院にきた!」

「「!!」」


 おっさんもミシェルちゃんもその言葉に同時に驚く──そして、そんな反応に呼応するかのように三代目は病室へと飛び込んできた。


「阿修凪!! ロビーに生意気金髪女がいたからもしやと思ったぜ! 見舞いに来てくれたのか!?」


 【琉宮會】三代目もとい、女島マジメは嬉しそうに俺に駆け寄ってくる。生意気金髪女とはきっとヤソラの事だろう。


「えっと……見舞い?」

「あぁ、ウチの親父はここに入院してんだよ……って、お前……マイコーじゃねぇか!!」


 ミシェルちゃんを見た三代目が声を荒げる──ヤクザと暴走族のリーダー同士。とんでもない修羅場(せんそう)になってしまうと身構えたおっさんだったが……ミシェルちゃんは予想外の反応を見せた。


「──ッ……!!」


 顔を紅らめ、キョドり、布団を握って下を向き視線を逸らした。

 それは紛れもなく『女の子』の反応だった。





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