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124.女子高生(おっさん)の修学旅行~③日目『ルーツ3』~


〈【転生九萬宮】AM1:00〉


「さて、まずは何から話そうかの……お主の身に起きたその経緯(いきさつ)のおさらいから始めるとしようか」


 鍾乳洞の岩に腰を下ろし、おっさん達は話し始めた。水面を鏡のように映してきらきらと光るその空間はまるで夢と現実の狭間のようで……そこにいると、この女子高生の身体とおっさんの精神との境目が曖昧になってくるようにも感じる。


「波澄アシュナ、もとい以前は【波澄アシュラ】君だったか……お主は【多世界解釈】という言葉を知っておるかの?」

「…………ぇえっと……パラレルワールド的なやつですか……?」

「それで合うとるよ、世界もとい次元は無数に存在する。お主の精神体からしてみれば、ここはまさにそんな別世界じゃ……体験してみていかがじゃったかの?」

「え……まさか、ここは夢の中とかVRとかそんなオチじゃないですよね!?」

「そんなわけないじゃろう……れっきとした現実であり、波澄阿修羅が女性として生をうけた──紛れもない一つの世界じゃ」


 安堵する、夢オチなんて御法度すぎるし……またもやおっさんに戻るなんて死んでも御免被る。


「神様が俺をこの世界に……?」

「こそばゆいのぅ、キヨで良い。その答えもyesといえばyesじゃよ……わしがお主をこの世界に…………『()れた』とでも言おうか」

「……それは、何故ですか?」

「それはまだ答えられぬが…………不満じゃったか?」

「まさか。感謝しかないです……楽で、ちやほやされて、全て上手くいって、童貞も捨てられて……」

「………お主オナゴじゃろう……やはり身体と精神が噛み合っておらんのぅ……まぁ良い。別の人生を楽しんでおるなら何よりじゃよ」


 そう言ってキヨちゃんは笑う。

 一気に現実から乖離(かいり)し過ぎた展開で、ついていくのがやっとだったが……その笑顔に多少なりとも愁眉(しゅうび)を開いた。まるでギャグ漫画がバトル漫画になってしまうような不安は取り除かれた。


「……さて、こうして相見(あいまみ)えたのには二つ理由がある。一つは【経過観察】──お主が今生を謳歌しとるか確かめに来たんじゃが……この体は不便での、こんな中途半端な時期になってしもうた」

「……? もう一つは……?」

「【謝罪】じゃよ。お主が【アシュナ】として活動できるのは【高校卒業】までじゃ。そこから先はどうなるかわからん」


 ──かと思いきや、再びの衝撃が俺を襲った。現実に引き戻されるような血の気が引いていくような感覚に動揺を隠せなかった。


「な、何でですか!?」

「凄く端折(はしょ)って説明するぞ、それはわしの力が弱まってきたからに他ならん。じゃからわしも人間の力に頼らざるを得ずに……人身にまで身を落とし、この世界に逃れたのじゃ」

「力が弱まって………じゃあ……つまり逆に、キヨちゃんの力を取り戻せば……俺はずっとこの世界にいられるってことですか?」

「察しが良いのぅ……そういう事じゃ。そこで、お主に頼みがある……引き受けてくれるか?」

「……そうしなきゃ……この場所を失うっていうんなら当然、やります」

「………ふむ、随分と気質も変わったようじゃのう……では、わしの最後の余力を使って、一つギフトを授けてやるとしようか。その異能を使い、わしとお主の命運を救え──」


 キヨちゃんはそう言って、おっさんのオデコに手を当てた。なんか一気にバトル漫画化してきたというワクワク感は拭えない、一体神様は俺になんのチートを与えてくれるのだろうか。もしかしたらSPがいなくてもDQNを蹴散らせるような格闘能力とか……はたまた、荷物いらずの収納魔法とかもいいかもしれないと期待していると、神様は言った。


「名付けて……【自浄作用(セルフ・オートメーション)】。この力があれば……手入れをせずとも髪は傷まず、風呂に入らずとも身体は汚れず……常にいい匂いで肌荒れすることもない。常に清潔な身体でいられる素晴らしい力じゃ」



 微妙。

 いや、おっさんにとっては凄くありがたい能力だけど……今、この場面で必要な能力じゃなくないかな?




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