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114.女子高生(おっさん)の修学旅行~①日目『大浴場』~


〈PM18:20 脱衣室〉


 遂にこの時間がやって来た。

 修学旅行三大イベントの一つ──入浴。

 脱衣室ではところ狭しと女子高生達が(みやび)やかな下着姿で産まれたままの姿を晒す。本来ならば、存分に瞳に焼き付けるところだが……おっさんにはまず、何を置いてもやらなければいけない仕事があった。


「……」

「アシュナー、どうしたのキョロキョロして……」

「…………盗撮とか覗きできる場所がないか捜してるの、修学旅行といえば女子風呂覗きが男子の定番だからね……………よし、脱衣室は大丈夫そう」

「確かにアシュナがいるから男子共の覗きへの情熱は凄そうだよね」

「私は別に見られてもかまわないよ、それより他の女の子の裸を見られたくないから」

「「「アシュナ(ちゃん)………」」」


 今の時代──1990~2000年代初頭においてはコンプライアンス的なものにみんなが寛容であったため……創作の世界において『女風呂覗き』はギャグの一貫として多用されていた。

 だが、普通に犯罪だし……なによりこの百合の楽園は独り占めしたい、そこに男の存在は許されない。


「アシュナって淡白に見えるけど……私達のこと考えてくれてるんだよね……もぅそーゆーとこ大好きだよー」


 ヒナヒナ始め、クラスの女子達もなんか感動して裸で抱きついてきた。


〈PM18:30 桃源郷(おふろ)


「ぅ……ぅわぁぁぁっ!!」


 桃源郷──努力により創り上げられ到達できる理想郷(ユートピア)とは正反対に、決して人には踏みいることのできない夢幻の地とされて来た。それはまさしくその通りなのだろう……ただの冴えない中年であった俺が、この桃源郷に足を踏み入れることなど現実的に考えて不可能だった。


 それが今、現実のものとなる。

 たとえ世界一の資産家になろうが、世界一のハーレムを築き上げる稀代のイケメンになろうが到達できないこの地……無垢な女子高生だらけのお風呂へと遂におっさんは足を踏み入れたのだ。


 咆哮したのち──理解する。

 蟻の王のように、悟る。

『ああ、私は、この日の、この時のためにタイムリープ(産まれて)きたのだ』……と。


 大浴場という名に相応しい広々した浴場には、絶景の海が望めるオーシャンビュー。深々した青が女子高生達の裸体に華々しく添い、その幻想的な空間を更に神々しいものへと昇華させている。


「急に叫ばないでよ! ビックリしたじゃない!」


 ヤソラちゃんが怒って声を荒げる、熱気立ち昇る広い空間により叫びは木霊した──しかし、既に至高へと到達したおっさんは『澄ました顔しているが、今まさに下の毛までおっさんにさらしてるんだよな』と余裕の対応(ナレーション)で微笑んだ。


「……み、見すぎだしっ何笑ってるのよ!」


 恥ずかしがる裸体の、未来のアイドル。それをおっさんだけが男として目の当たりにしている……その事実はおっさんの股関を熱くした。


「それになんでずっと前屈みなのよ……」

「アシュナちゃんとお風呂に入るといつもこうなんだよ~、面白いよねー」

「……これは面白いっていうの……?」


 おっさんの事を不可思議な生物でも見るようなヤソラちゃん。この修学旅行の最中に仲良くなるためにおっさんは一つ頼み事をする。


「……そうだ、ヤソラちゃん。私に触ってみてくれる?」

「……はぁ? なんでよ?」

「覗きはダメだけど……私の声くらいなら聞かせてあげようと思って」

「……なに言ってるかわかんないんだけど…………さ、触るって……こう……?」

「ひぁんっ……!」

「へっ……変な声出すんじゃないわよ! 男子風呂まで聞こえちゃうわよ!?」

「んっ……どうかな? 私の身体っ……?」

「ど……どうって………凄く……き、綺麗だけど……」

「……胸も触ってみて……?」

「………や……柔らか……じゃなくてっ! アンタ一体なにがしたいの!?」


ヤソラちゃんの言葉と同時に──壁の向こう、男子風呂ではドタドタと倒れる音が響いた。やはり聞き耳を立てていたようだ。漏れる声を聞くくらいなら犯罪ではないし、男の子の気持ちもよく解るおっさんからのサービスだった。


「……ますます理解できなくなったわ……アンタの事……」


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