104.女子高生(おっさん)の困惑~新たな出会い① 【SP】~
「……あの、本当に学校まで来るんですか?」
「……そういう命令なので。我慢してくださいお嬢」
「………」
「………」
登校中、気まずい通学路。
一緒に歩いているのはアシュナ専属のSP……平たく言えばボディーガードの【漆夜黒雨】。
冗談みたいな名前はさておき……どうやらSPでは有能なホープとして業界内では有名らしい。まだ20代前半で若々しく、容姿も何処かの少女漫画から出てきたようなイケメンで冗談みたいなキラキラ感。
出会いは二三四編集長の電話からだ。
どうやら小説の出版と同時に本格的にメディア露出する準備が整ったようで、それに伴って増加するであろう身辺のトラブル対処として事前に護衛をつける旨の承諾を得る電話だった。
別にそこまでしなくてもいいような気がしたが……心配してくれているのに無下にはできないので承諾した。
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-昨夜 自室にて-
「──あの……ちなみにそれって男の人ですか?」
『黒雨きゅんは男の子だけれど安心なさい、勿論配慮してあるわ。彼は昼間担当……つまり学校内外での対応のみよ。プライベートとなる夜の担当は女子のエキスパートを手配する手筈だから』
「いや……そういう意味で聞いたんじゃ……って夜もいるの!?」
『当然よ、マスコミには昼も夜もないからね。年の近い子達だから気軽に接せられると思うわ、だけど首相の警護も担当したことのある実力派よ。特に彼は『無心機人』の異名を与えられるほど……黒雨きゅんには明日から早速ついてもらうわね──』
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──と、いうわけで家を出たら早速いたのがこのイケメンだった。
自己紹介もさながらに、黒雨は特にこちらに興味も疑問も抱いていないといった様子で質問もないままに業務を開始した。といっても……この半田舎にマスコミの類いが押し掛けるわけもなく、いつもの通学路において変化した部分といえば黒雨が隣にいることぐらいだった。
「お嬢、こちらへ」
「えっ??」
瞬間、車が猛スピードで横を走り抜ける。
俺は黒雨に手を引かれ、そのまま腕の中へ──まるでナイトに守られるお姫様のように潜り込んだ。有り体に言えばハグされたのだ。
細身なのにガッシリとした腕、胸板、体幹……さすがにSPなだけはある。これはケンカしても勝てないかもしれない。
「……あの、こんなところを見られた方がスキャンダルになりそうな気がしますけど……」
「……問題ありません。その時は真っ向から否定しますし、立証します。俺は護衛対象にそんな感情を持ったことはありませんし……これからもそのつもりなんで」
どうやら本物のプロのようだ、美少女を抱いたにも関わらず無表情で淡々としている。
アシュナになってから初めてそんな塩対応な人間に出会ったためにとても新鮮だった。『無心機人』なんて中二病みたいな異名も納得だ。
(こんな感じなら確かに良いかもしれない。トラブル対処してくれるみたいだし……アシュナに恋愛感情とか抱かれると面倒だって懸念してたけどそんな様子もないし)
改めて、宜しくお願いします──と言おうとしたところ……何故か黒雨は腕を解こうとしなかった。
どうかしたのと尋ねてみると……黒雨は少し頬を赤くして言った。
「……? あ……すみません……何故か離したくなくて……何でしょうか、この感情は」
そんな初めての感情に戸惑うロボットみたいな事を言われてもおっさんに理解るわけなかった。
他人の(特に男)気持ちに鈍感なおっさんにただ一つだけわかるのは、太ももに当たる固いもの──それは男の性ということのみだった。
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