100.100話目で誕生日を迎え何かが起きそうなフラグを立てられる女子高生(おっさん)
昨今──と言ってもおっさんにとっては前世の話ではあるが……キリのいい数字の話数を迎えると物語が動くという洒落た手法がよく用いられ話題となっている。
しかもそれを読者に事前に知らせるというある種『ネタバレ』ともいえる荒業で見事に読者の関心を惹き付ける──勿論ネタバレは良くない事だが……ネタバレをされた方がより一層その話を読みたくなるという心理が働くという一説もあるくらいなのだ。それを上手く取り入れた手法である。
例を挙げると……火付け役となったsns発信の『100日後に死ぬコモドドラゴン』。これは平和な日常を送るドラゴンを描く漫画に不穏なタイトルをつける事により話題を惹いた。おっさんもハラハラしながら読み進めたものだ、見事という他ない。
もしも俺になってからの主要イベントに話数をつけたとしたら……そろそろ100話くらいを迎えそうな頃合い。
もしかしたら何かとんでもないイベントが待ち受けているかもしれない──ファンタジー世界に転移したりして『100話目に異世界転移する女子高生』みたいな事態が起きるかもしれない。
そんな事ありえない、と笑われるかもしれないが……既にタイムリープして女子高生になるという事態が巻き起こっているのだから絶対ないわけじゃない。
そんな期待を胸に、同時に俺は誕生日を迎える。平日なので普通に学校があり、梅雨なので外は雨模様──何かが起きるのに相応しい暗い曇り空が これから一波乱起きるのを予言するように光を塞ぐ。
「「「アシュナー誕生日おめでとー!!!」」」
登校して教室に入ると……一斉の祝福コールと共に破裂音が鳴り響いた。100話予報に身構えていたおっさんは(テロリストが学校に押し寄せて戦いの日々が始まる超日常系が始まるのか!?)──と一瞬、勘違いしたが……破裂音の正体は普通にクラッカーだった。
と、いうか普通誕生日のお祝いを学校でやる!?
「みんなでずっと打ち合わせしてたんだよー、先生とかにも許可もらって一限はアシュナの誕生会の時間にしてもらったんだー」
「そんな事していいの!? むしろ申し訳なくて素直に喜べないよ!」
どうやら企画を主導してきたらしいヒナヒナ達やクラスの皆が色々掛け合ってくれたようで……教室内の飾り付けや黒板に描かれる様々なお祝いメッセージや似顔絵、積まれたプレゼントの箱らしきものがバースデーパーティーをありのままに表現していた。
そして何故か、この場にいるはずもない人物が次々と姿を現した。
「アシュナ、おめでとうですわ」
「め……めらぎ?!」
「生徒会長さんも一緒に計画とか立ててもらったんだよー、私達がアシュナと仲良い人と一緒に祝ってあげたくて」
「本当は二人きりで祝おうと思っていたのですが……この子にせがまれたので仕方なく、ですわ」
どうやらヒナに無理やり誘わたようで、めらぎはそう言って嘆息したが……満更でもなさそうな様子だ。 『あとで二人きりになりましょう』と耳打ちされ、えっちな予感に心弾ませる。
「お姉ちゃーん、誕生日おめでとう!」
「マナ!? 学校は!?」
「えへへー、さぷらいずー。前にアシュナちゃんのおうちに行った時にけーかくの話をしてマナちゃんにも来てもらったんだー」
「驚かせてごめんねお姉ちゃん。今日学校はお休みしたんだ、どうしてもお姉ちゃんのお友達と会ってみたかったから」
今度はヒマリに誘われたらしいマナが現れた。
マナはにこやかにそう言っていたが『お姉ちゃんを妊娠させた奴を探し出さないと……』とか殺気を放ちながら呟いてるんだけど、きっと気のせいだろう。
「師匠っ、お誕生日おめでとうございます」
「お姉様っ、お誕生日おめでとうございます」
「被ってるし。吉良ちゃんや小泉ちゃんを誘うのが一番苦労したよ、連絡先とか知らないから情報集めて会いに行ってさー。別学校だから色々許可とか取ったし」
「はは……もう驚かないよ……」
ヒメはキラホシちゃんとイズミちゃんをも連れてきた。以前に俺と一緒にいたのを見かけたから探し回って声をかけたらしい。
しかし、ここまで皆が一堂に会したのは初めてかもしれない。クラス内にはミクミク達やケン達や委員長、テンマや陽男子達も勿論いる。
そこでおっさんは気づいた。
ヤバい、これは『皆一斉に召喚されて異世界転移する』フラグなんじゃないか──と俺は身構えた。