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96.女子高生(おっさん)VS陽キャ男子たち②


〈ダーツバー〉


「──じゃあまずは俺が教えるよ姐さん! 実戦しながらの方が身に付くと思うから姐さん対シュウヤでゲームはナインボールでやろう」


 赤くなった顔と膨らむ股関、そして照れを隠すようにスポーツマン風イケメンのアキラが場を仕切り直す。とりあえずジャンケンで勝ったアキラが俺につきっきりでサポートしながらの対決だ。一番初心者にもわかりやすいナインボールというのをやるらしい。


「ずりーぞアキラー、姐さんにベタベタ触ったらミナミちゃんにチクるかんなー」

「おいマジでやめろよ!? 言ったら殺すかんなお前ら!」


 陽キャ共は笑いながら男同士でキャッキャッしている──(ああ、ウザい。男同士の絡み合いなぞおっさんにとって世界一無駄なものだ)とゴミを見る眼をしながら微笑んだ。

 ミナミちゃんというのはアキラの彼女だ、前クラスで一緒だったため知っているし、なんなら連絡先も知っている。


「あ、ちょっと待っててねアキラ君」


 そう言って、俺は上着を脱いで肩出しシャツとロングスカート姿になった。更にロングスカートを膝上まで(まく)ってパレオ風に結び、髪を片側にまとめて結ぶ。

 いわゆる『湯上がりお姉さん風』、または『南国ビーチお姉さん風』なスタイルでうなじを完全に露出する。


「ごめんね? お待たせ……お手柔らかにお願いします」

「……やべぇ、めっちゃ可愛い……お願いします……」


 陽キャ達は陽キャでありながら、まるで童貞のような挙動をする。アシュナが本気を出せば、女の子の扱いに慣れている陽の者ですらチェリームーブをかましてしまう事が証明された瞬間だった。


「えっとまずはバンキングっていうので先攻をきめるんだよね? 打ち方は……んっと、こう……かな?」


 俺はネットで見たままに見よう見まねでショット態勢に入る、初めてで慣れていないからか──そして女の子だからか、おっぱいがビリヤード台に丸々と乗っかる型となり……肩出しの服だからか色々と見えそうになった。

 しかし、これは計算済みの行為だ。


「──あっ! ……あはははっ……み……見えてない……よね?」


 俺は態勢を直し、照れながら胸を両手で隠し、困り眉上目遣いでそう言った。


 かつて高名な何処かの研究者は言った、『エロから恥じらいを取り除けばそれはただの美である』──と。

 見えそうで見えない完全な絶対領域を展開しつつ、わざと恥じらう演技を見せた。これまで恥じらいを見せず、性にオープンだった美少女(アシュナ)の美少女による美少女ムーブはクリティカルダメージを叩き出す。


 しかし、この時……(おっさん)(アシュナ)の本気を甘く見ていたことに気づいていなかった。

 これまでは、美少女ながらもおっさんっぽい挙動により周囲の理性が水際で保たれ、平和だったのだ、ということに。


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