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93.【後日談】女子高生(おっさん)の苦手なもの②


-スタボ事変から後日-


〈チェーンコーヒー店『怒涛のコーヒー』〉


 中年型女子高生こと俺【波澄アシュナ】は、どうやら俳優らしいイケメン【八神三日夜】と再びコーヒー店で相見えることとなった。


「おおきにアシュナちゃん。こっちのコーヒーショップならなんや難しい注文やらないから楽やろ? あ、ちなみに胡椒は置いてへんで?」


 八神はまだ初対面に近しいはずの俺のパーソナルスペースにぐいぐい踏み込んでくる。おっさんを陰のものと見抜いたのか難易度の易しいコーヒーショップを選んだり、スタボでの挙動不審ぶりをめちゃくちゃいじり倒してきた。

 一応、以前に塩対応をしてしまったことに多少の罪悪感を覚えて付き合ってあげたことを後悔した。


「あの、それで俺……私に何の用ですか?」


 【八神三日夜】──あれからキラカに聞いたりネットで調べたりしてみたら……普通に有名人だった。可愛らしい顔立ちでありながら本格演技派の若手俳優で年は20歳。前年はCM、ドラマ、映画合わせて30本以上出演しているまさに売れっ子だ。

 そんなTHE・芸能人が何故におっさんにアプローチを仕掛けてきたのか……それはすぐに判明した。


「ん~……ほんまはデートを楽しみたいとこやけどまぁ時間もあらへんし……要点だけ話すわ。アシュナちゃん、オレと付き合うてくれへん?」

「嫌です」

「まぁ聞いてや、これはアシュナちゃんのためでもあるんや」

「……?」

「アシュナちゃんは興味ないかもしらんけど……今、芸能界の野郎共の話題はキミで持ちきりなんや。ジャニーズ、音楽グループ、舞台俳優、お笑い芸人……把握しとるだけでも既に100人以上がアシュナちゃんを狙っとる」

「!?」

「言うたらオレもそのうちの一人なんやけど……一回ニュース報道されただけやのにこんなん異例やで? 

各業界にアシュナちゃんの美しさは広まってしもた……まぁまだトレンドに敏感な若手内に留まっとるのが救いや、せやけど(いず)れは名だたる大御所芸能人がアシュナちゃんを堕とすために出張ってくるのは明白や」


 八神は子犬みたいに微笑みながらそう言った。アシュナ効果はたった一回のTV出演だけで芸能界の若手陣の間に広まってしまったようだ。


「……それで、なんで八神さんと付き合うのが私のためになるんですか?」

「せや、オレの親父は芸能界では随一の大御所でな……オレはいわゆる七光り俳優なんやけど……オレと付き合うてしもえば、そーゆー悪意の魔手から守ってやれる思うてな。狙っとる連中の中には評判の良くない連中もおる……それに……」

「……それに?」

「あんま怖がらせたくはないんやけどな……もうアシュナちゃんを敵視しとる存在もおる。そういった若手連中を逆に狙っとった『女性芸能人』たちや。女の敵は女とはよく言うたもんや……きっと近いうちに接触してくるかもしれん。せやから……」

「お話はわかりました、失礼します」


 俺はそう言って、コーヒー一杯を飲み干して代金を置き、一礼して席から離れた。


「あっ……アシュナちゃん!? まだ話が──」

「ご忠告ありがとうございます、けど、大丈夫。むしろ来るなら来いって感じですから。それじゃ」

「──っ……ははっ! 見かけによらず度胸もあるねんな、ますます気に入ったで。もし困ったことあったら連絡してや」


 どうやら、予想以上に(アシュナ)を巡る()(()()())()は大きくなっているようだ。しかし、おっさんはなにも心配はしていなかった。


(女性芸能人が接触してくるかもしれないのか──うひひ)


 むしろ、わくわくしていた。



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