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第7話「二人だけ別世界?」

「おはよう、二人とも」


 教室に入ると、カズが俺とアリナに挨拶をしてきたのだが、同時にクラスメイトたちが俺たちに注目してくる。正確には、俺とアリナに。


 やっぱり、隣にこんな美少女がいると注目を浴びてしまうものか。

 と思っていたが、女子たちの声が耳に入り、すぐに理由が分かった。


『なんか、雪村くんと桜花さんの距離この前より近くなってない?』


『確かに! より一層ラブラブになっているような気がする!』


『なんかあったのかな?』


 なるほどね。

 俺もなんで気づかなかったんだろう。この前なら、教室に入ったら繋いでいた手をすぐ放していたが、今は教室内にいるのにも関わらず繋ぎ続けていた。


 カズはそんな俺たちを見てため息をついた。


「まさか学校でもラブラブアピールしてくるとはね……」


「いや、アピールはしてないぞ?」


「俺が気を使わないように言ったからか?」


「そうだと思う。俺も家だけでのことかと思ってたけど、違ったみたい。どこにいてもらしい」


「そのうち、俺だけじゃなくてクラスメイトたちも慣れないといけなくなるな」


 俺はカズの冗談を聞き流し、自分の席についた。


 *****


 昼食の時間。

 アリナは午前最後の授業が終わるなりすぐに、何かをもってカズと話をしていた俺のもとに小走りでやってきた。


「アリナ、それは?」


 俺はアリナが持ってきたものを指差した。


 すると、アリナはもじもじして照れ始める。


「これはですね……弁当です。翔くんに作りました」


「お、俺に?」


「……はい」


「だから、今日はいつもより早起きしてたのか」


 俺は、はっとして周りを見渡す。

 幸いにも、今の俺の一言を聞いていた人はいないようだった。今の一言は完全に同棲していることが分かる内容だった。


 さすがに、同棲していることはバレたらまずいだろう。


「それじゃあ、三人で昼食にしようか」


「はいっ!」


「おう」


 俺たち三人は、近くの机をくっ付けて昼食を机の上に準備する。

 アリナは自分の分と、俺の分。二つの弁当を朝早くから作っていたようだ。これには、感謝だな。


 でも、アリナが料理をしているのは見たことがないが、得意なのだろうか?


「それじゃあ、いただきます」


 俺は弁当箱を開ける。


 アリナの作ってくれた弁当には、唐揚げ、卵焼き、サラダなど栄養バランスが偏らないように色々入っていた。

 さて、味はどうかな。


「んっ……うま」


 唐揚げの中から肉汁が溢れ出して、とても美味しい。


「これも食べてみてください」


 アリナが俺の弁当箱の中から卵焼きを箸で掴み、俺の口の前まで持ってきた。これは、あーんをしろという事かな?

 皆の視線が痛いんだけど……。

 だが、俺にはアリナからのあーんを拒むことはできない。ごめん、みんな。特に男子たち。


 俺は口を開ける。

 そして、アリナは俺の口に卵焼きを入れる。


「どう……ですか?」


「うん! 美味しいよ」


 卵焼きは半熟の部分もあったりして、甘みもあり美味しかった。

 俺はその後も、アリナからあーんをしてもらった。


「二人だけの世界ができちゃってるよ。俺がいることも忘れないでね?」


 カズが苦笑いで俺たちにだけ聞こえる程度の小声でボソッと呟いた。


 それを聞いたアリナは赤面しながら慌ててあーんの動作をやめる。


「す、すいません! 翔くんに食べてもらいたくて、つい、やってしまいました」


「ははっ、まあいいんだけどね。気を使わないでいいよって言ったのは俺だしね」


 やはり、カズのメンタルは鋼のようだ。

 アリナはまた、あーんをしてくるかと思ったが、周りのクラスメイトたちの視線に気づいたようでその後は普通に三人で喋りながら昼食を食べた。


 *****

 

 授業を終え、帰り支度をする。


「よし、それじゃあ帰るか~」


「そうだねっ」


「ん? カズ、一緒に帰らないのか?」


 カズは首を横に振った。


「お前も桜花さんとラブラブしながら帰りたいだろ?」


「別にそんなことは……」


「ないのか?」


「ないこともない」


 アリナより、カズの方が俺たちに気を使っている気がするな。

 また、今度、家に呼んでやるか。


 俺とアリナは二人で帰路についた。


 そう言えば、忘れていたが明日から週末だな。アリナとどこか行きたいな。

 俺はアリナに尋ねる。


「なあ、アリナ。明日から休みだけど、どこか行かない?」


 俺の提案にアリナは本当に嬉しそうな反応を見せる。


「いいんですか⁉ どこに行きますか?」


「んー。ショッピングにでも行くか?」


「ショッピングデートですか、いいですね!」


「デ、デート……! ん、まあ、そうなるな」


 俺はデートの約束をしたことで心が舞い上がっていた。


 そして、俺は(ひそ)かに綺麗な夜景の見ることができるスポットにも連れて行こうと計画していた。

 デートのプランを考えるだけで、ワクワクした。同時に緊張もするのだけれど。


 想定していない夜景スポットに連れて行ったらアリナはどんな反応をしてくれるのだろう?

 驚く? 喜ぶ?

 俺は明日が楽しみで仕方がなかった。


 そのせいで、その日の睡眠時間がいつもの半分以下になってしまったのは、内緒にしておこう。


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