エピローグ・十五年後
時は移り、葛城皇子の世となった。
季節は春、飛鳥の大派皇子の宮では、庭の満開の季の花を一人の妙齢の女性が縁側から眺めていた。
「こちらは変わらず美しい庭だこと。ああ、懐かしい」
奥の部屋から老齢となった大派皇子が、息子の栗隈王に身体を支えられながら出てきた。
「おお、姫王、ようこそおいでくださった」
「ごきげんよろしゅう。私はもう姫王ではありませぬ」
「失礼。父は最近記憶が曖昧なのです。貴女をお祖母様の橘姫王と思っているのかもしれません。橘姫王が亡くなられたことも未だわからないようで、この度も、春の宴に橘姫王を招くのだと言いはって」
「お招きありがとうございます、栗隈王。何年ぶりでしょう。昔はよく祖母に連れられて来ていました」
「幼少の貴女は季の花びらを集めておられた。皆様お変わりありませんか」
「皆、恙無く暮らしています。娘の三千代も五歳になりましたの。近頃はすっかり口も達者になって」
「三千代様。良いお名前だ。今度連れてこられるとよい」
「ええ、是非。美しいお庭を娘にも見せたいわ」
「いつでも来てください。いずれ私の息子たちも紹介しましょう」
「楽しみですわ」(了)




