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第27話・斑鳩寺

 斑鳩宮が入鹿の軍隊に攻められてから四日が経った。

 斑鳩の山荘では、朝から里の様子を見に行っていた下男が戻ると言った。

「辺りには軍隊の姿はもう見えません。人々の話では、しばらく付近を捜索していたようなのですが、宮の焼け跡から焼けた骨を見つけ大兄様が焼け死んだと思って、二日前に撤収したそうです。見回りの兵も、昨夕にはいなくなった模様です」

 山背皇子はやつれた顔に微かな安堵の表情を浮かべた。

 横から三輪君が言った。

「好機ですぞ。死んだと思って敵が油断している間に準備を進めましょう」

「そうは言っても」

「すぐさま山背国へ遣いを出し、そこから東国の乳部や部民に招集をかけるのです。人を集め、一気に飛鳥へ攻め上りましょう」

「しかし、飛鳥には大勢の兵がいる」

「更に多くの兵を集めればいいのです。飛鳥にも上宮様に恩ある者は大勢います。いざとなったらこちら側に寝返る者も現れましょう。とにかく上宮大兄には味方が大勢います」

 弱腰の山背皇子に三輪君はハッパをかけた。

「今こそ上宮家の誇りを見せる時です。さあ」

 そう勇んだのは弓削皇子だった。

「やはり、斑鳩寺を使いましょう。様子を見て斑鳩寺に入りましょう」


 山背皇子の次男、弓削皇子が斑鳩寺に入ったのは、斑鳩宮が攻められてから六日目の早暁だった。

 弓削皇子は下男一人を連れ、薄明を頼りに、蘇我氏の手の者がいないか慎重に確認しながら西門から入った。

「や、貴方様は弓削皇子」

 顔なじみの寺の僧都と出会した。

「ご無事だったのですね。上宮大兄皇子や皆様は」

「うむ、皆無事のようだ。今は生駒山の別荘に隠れている」

「そうですか、ああ、よかった。それにしても一体何が起きたのかわかりませぬ。どうなさったのですか」

「私にも全くわからぬ」

 弓削皇子は、山背皇子が謀反の疑いをかけられていること、そのような謀反の気持ちは全くないこと、そして、兵を集め入鹿を滅ぼすつもりであることを告げた。

「それで、寺をしばらく使わせてもらいたい」

「もちろんでございます。私どもは上宮様にご恩がございます。どうぞお使いください。食糧や入用な物資は手配いたしましょう」

「ありがたい。では早速父上たちを呼ぼう」

 弓削皇子は下男に指示した。

 

 弓削皇子は僧都が用意した朝餉の粥をすすった後、僧たちに様子を尋ねた。

「この辺りにはもう兵はいないか」

「ええ、おそらく」

「塔に登れば辺りが見渡せると思います」

 そう言って前に出たのは大狛おおこま法師という最近寺に来たばかりの僧だった。

 大狛法師は弓削皇子を寺の五重塔へ案内し、階段を上る皇子の後についた。

「おお、ここからなら遠くまで見渡せる。物見台にはうってつけだ」

 塔の窓から見える辺り一面には、兵の姿は見えなかった。

「軍隊は皆、撤収したのか」

「ええ、ところで上宮大兄皇子の隠れているお屋敷はどちらなのですか」

「ああ、さほど遠くない。ここからなら見えるだろうか。ほら、あの山の麓に屋根が見える」

「なるほど、あちらですか……」

「この塔は」

 そう大狛法師を振り返ろうとしたその瞬間、弓削皇子の首に縄が巻かれた。

「何を……」

 大狛法師は朝廷から送り込まれた間者だった。斑鳩寺にいて上宮一族の動向を常に監視し、以前から状況を逐一報告していたのだ。

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