第23話・上宮大兄の二心
それからほどない秋の日、入鹿は天皇の宮に呼ばれた。
「上宮大兄が二心を抱いているというのは本当ですか」
天皇は眉を吊り上げて入鹿に問い質した。
入鹿は心の中で舌打ちした。
誰がそのようなことを天皇に吹き込んだのだ。面倒なことになるのに。
「特にそのようなことはないと思います。先月お会いした時もおかしな様子は見えませんでした。誰が言ったのかは存じませんが、そのような些細なことを気になさらなくてよろしいかと」
「些細なこと。その些細なことと思って油断していると天地を揺るがす事態になるのではないかしら。上宮家が天皇に従わないなど、他の者たちへの示しがつきません。これから新しい律令を定めるというのに。私とそなた、どちらがこの国の天皇ですか」
天皇は、いつになく厳しい口調で言った。まるで誰かの考えを言わされているかのようだと入鹿は感じた。
「我は即位してからずっと、心安からず暮らしていました。それはこういった反逆の気配を感じていたからです」
「ならば、上宮大兄をここへ呼び、申し開きをさせましょう。天皇に従うこととを誓わせるのです」
「いいえ、それには及びません」
天皇の目に非情な光が点った。




