新しい未来を夢見て。
新しい未来を夢見て。
きっかけは、なんだったっけ。
あたしが何気なく言った言葉。「魔石を充電できるといいのに」って。
「充電?」
ってアルル様に聞かれてどう答えようか迷ったあたし。この世界には電気で動く物とか蓄電池とか無いから充電って言葉じゃ意味が通じないよね。
「うんと、放出した魔力をもう一回魔石に溜めることが出来たら、新しい魔石要らなくなるでしょ?」
とりあえずそんな風に答えたのだった。この世界の動力の素になっている魔石。空になったそれにもう一回魔力を充足すればいいんじゃない? って。
それも太陽光発電みたいにこの世界の大気に溢れる真那を取り込む事ができればね? 再生可能なエネルギー源になるんじゃないかって、そう思ったの。
例えばあたし自身。
魂にはマナが溢れてるけど、魔力を使えばその分マナは減る。
でも、たいてい一晩も寝れば回復するの。きっと世界のマナを自然に取り込んでるんじゃないかなってそう思う。
でもって。
それは魔界に行った時にはもっと顕著だった。
身体の中にどんどん魔が流れ込んできて魂の中でどんどん結晶化していくの。
魔と真那が元は同じ物だっていうのがよくわかる。
だからきっと、ね?
魔石にマナをこめる事だって、きっと出来るに違いないってそう思うわけ。
もちろんそんなものがそう簡単に作れるとは思っていなかった。あくまで夢物語。そんな、戯言のレベル。
でも。
アルル様にとっては違ったらしい。
あの図書館での出来事以来、なんとなく口数も少なくなってたアルル様。
たぶんずっと彼なりにこの不毛な戦争に終止符を打つ方法を考えていたのかも。
スカーレットとの対決の後、こっそりとエレクレスに戻ったあたし。
世界的な指名手配みたいになっててもおかしくないかなって思ってたけどそんな事も無く。
うん。きっと。スカーレットはあたしの事を報告しなかったんだって、そう信じられた。
メーベラには泣かれたしお母様もお父様もあたしが帰って来た事をとても喜んでくれた。
まあでも。
スカーレットはまた来ると言った。
次は負けない、とも。
対魔連が世の中の道理を背負っているのなら、スカーレットの一存でやめられるわけもない。
それは充分承知している。
あたしにできることと言ったら対魔連の軍勢の邪魔をして追い払うくらいの事。
世界を分断するような大魔法は流石に使えないしきっとそれはこの問題の解決にはならない。
もっと根本的に世の中が変わらなけりゃね。
魔王の予言。
そんなどこの誰かも歴史にはっきり残っていないような預言者の一言で戦争が起こったわけじゃないと思う。
人の心にある嫉妬や畏れ。そういったものが入り混じって。
人は弱いから。こんなことになってしまったのだろう。今ならそう思える。
でもね?
だからってそれで良いなんてあたしは絶対に思ってあげない。
そんな理不尽、あたしが叩き潰してあげる。
「やあアリシア。久しぶりだね」
薔薇園でちょっとのんびりしつつ感傷に浸ってると背後からそう声をかけられた。
「アルル様、お久しぶりです。ご機嫌いかがですか?」
満面の笑みでこちらを見るアルル様。
先日の影はもう感じられなかった。
「君のおかげでね。なんとか魔力充填装置の開発に成功しそうだよ」
え?
「それって……」
「ああ、魔石に大気のマナを充填する魔道具さ。君の発想を形に出来そうなんだよ」
ああ。
どれだけの努力がそこにあったのか。わかる気がする。
あたしは思わずアルル様抱きついて。
「ありがとう。アルル様……」
そう呟くと瞳から涙が溢れた。
嬉しくて。
「私はね、この技術を広く自由に使えるよう世界中に公開しようと思ってる」
「え、でも……」
そんな魔道具欲しがらない人は居ない。下世話な話だけど、お金を取って販売したら国だって潤うだろうに。
「もしこの技術を独占したりすればそれはまた争いの種になる。不幸な戦争は避けたいからね」
誠実な顔でそう答えるアルル様。
うん。
そうだよね。
魔石に大気中のマナを充填できるようになればこの世界も変わるかもしれない。
新しい未来を夢見ても、いいかもしれない。
あたしも微笑んで。
目の前のアルル様のお顔に頬擦りした。
fin
ありがとうございました。




