決着。
「そんな……。どうして……」
マリアグランデは黄金に瞬き、ふんわりと巻き上がった金色の粒子がカーテンの様なヒダを形成しスカーレットを覆う
暖かい色に染められたその空間に……。
「あたしには見える。お前を想うそのマリアグランデの心が」
スカーレットも、段々とその表情の険しさを消していった。
大切なものを抱くようにそのマリアグランデをかかえ、そして。
「その剣は、魔結晶の塊から形成されたもののようだ。たぶんお前の本当の母の魂から取れた魔結晶なのだろうよ。護りたい、そんな心があたしには見えるんだ……」
もう完全に剣を下ろしているアリシア。
そして。勇者スカーレットももはや戦う意志を放棄していた。
魔王クロムウェル・バーンとデメトリウス、ラクリエットの攻防も、決着がついていた。
力を使い果たし横たわる二人を見下ろす魔王。数名の補助魔法使いは戦意を喪失し傍で震えている。
「まさかな。お前が魔族とは思わなかったよ聖女。その肌の色が本当のお前の肌なのか?」
そうぼそっと話すスカーレット。
「ああ。そうらしい。あたしもこの間まで知らなかったんだけれど」
「そうか。もしかしたら私も、なのか?」
その目にはまだ光が見える。きっと彼女とは分かり合える。と、アリシアはそう思う。
「勇者王は強い子供が欲しかったのかもしれないね……」
「そうか」
くるっと振り返るスカーレット。
「今日はこれで退散する。次は負けない」
そう言い放ち、勇者は帰途についた。
デメトリウスとラクリエットは補助魔法使いの面々が抱き上げてその後を追う。
「総員、これより帰還する!」
城門の外でそう号令する勇者スカーレットに率いられた軍勢は、そのまま来た道を帰る。
グレイの空にはいつのまにか魔界の月が昇っていた。銀色のその月が照らす中、対魔連の軍勢は規律正しく行進していく。
不平一つ上がらないその軍勢。城の出窓からアリシアはそれを黙って眺めていた。
「姫さま!」
誰も居なくなって。クロムがアリシアに抱きついて。
「ごめんなさい姫さま。でも、勇者にばれちゃいましたね……」
「うん。いいのよクロム。あの人もそんなに悪い人なわけじゃ無さそうだし、ね」
そう言って、アリシアはクロムの頭を撫でた。
きっといつか分かり合える。そう信じて。




