理不尽。
勇者スカーレットと魔王クロムウェル・バーンが対峙する。
場所はいつぞやとは違う、新しく発見した 魔王城の奥深く。
廃墟にも見えるその城は、魔王の城と呼ぶに相応しい漆黒の王城。巨大な石造のその建物の奥深くに潜む魔王を探り当てそこまでたどり着いた勇者スカーレット、魔法使いラクリエット、剣士デメトリウス。そして、数名の補助魔法使い。
軍勢は王城の外、取り囲むように配置され二重三重に張り巡らされた結界は今度こそ魔王を取り逃さないようにと転移魔法の発動を妨害する魔法陣も描かれていた。
魔王の側には、やはり漆黒のローブを纏う女性が魔王を庇うように前に陣取って。
スカーレットが雷撃の剣を放つのが合図になったか、背後の二名もそれぞれに極大魔法を放った。
ラクリエットの手にした杖から放たれるは爆裂魔法エクスプロージョン。
デメトリウスは肩に担ぐ魔導砲によるエクストリームキャノン。
その二つのエネルギーが混ざり合い、魔王クロムウェル・バーン目掛けて地を走る。
雷撃剣をいなした魔王はその熱エネルギーをその目を向けるだけで押し留め、拡散させた。
斬りかかるスカーレットに相対するのは魔王の右斜め前に立つ漆黒の女性剣士。
一合、二合と切り結び互いに飛び上がる。
勇者の力量は通常の人間を軽く凌ぐ。もはや人の辿り着ける最高位にあると自負していたその剣を、軽くまるで子供でも相手にしているかのような軽さで弾いていく漆黒の剣士。
浮き出る肌の白さから、その血はやはり魔族のものだろうとわかるが、しかし。
明らかに腕の太さにしろ筋肉の着き具合にしろ優るのは勇者スカーレットに見える、そのはずであるのに。
勇者の剣は軽く弾かれる。
漆黒の剣士の剣は重く。それを受ける勇者の剣は段々と刃が溢れ。
ついぞ砕け折れるに至った。
「くそ! まったく! 理不尽にもほどがあるわ!」
そう叫ぶスカーレットは背中に背負った獲物を引き抜く。
長剣、マリアグランデ
勇者王である父に付き従って共に戦った戦士であった母マリアの形見、大地の剣。
あらためてその剣を上段に構えるスカーレットに漆黒の戦士が声を放った。
「理不尽、と?」
と、そう。
真深く被ったフードから覗く右目がぎろりと光りスカーレットを睨む。
ふっと笑うように息を吐いた勇者。
「ああ、理不尽だろうよ。お前ら魔族の存在自体が理不尽だ」
その言葉を聴くなりよこなぎに剣を繰り出す漆黒の剣士。
かわしぎわ、
「不満そうだな! だが、事実だ!」
そう続ける勇者。
「人族は弱い! 弱い故に恐れる! お前ら魔族を!」
マリアグランデを袈裟斬りに振り下ろすスカーレット。
その手に持ったバスタードでそれを薙ぐ漆黒の剣士。
「お前らが! 魔族を虐げるお前らが! よくそんなセリフをほざく!」
そう吐き出すように叫ぶ剣士。
「ふん! 人族は魔力も弱い! 全てにおいて魔族、お前らに劣るのだ! それが理不尽でなければなんと言えというのだ!」
スカーレットの剣が伸び、漆黒の剣士のローブを貫いた。




