慟哭。
慟哭。
哀しい顔。
ああ、そんな顔させたく無いのに。
涙を流しているわけでは無い。でも。
泣いているってわかる。
あたしが彼女の肩を掴むとそのまますっと存在感が薄くなり。そのまま消え果てた。哀しい顔だけがいつまでもあたしの瞳に映ったままで。
ふっと目が覚め周囲を確かめる。ああ、ここは馬車の中。あたしたちは故国に帰るみちすがら、何度か野営をしてるその最中だった。
行きとは違い帰りはフリーデンにまで赴いたせいで帰り道はかなり遠くなった。
本当であればもっと早くに帰国できただろうに。
あたしが勇者パーティーに入れられていたものだからそのせいか。
帰還の行事の最後の最後まで同行を求められてぐだぐだしていなければほんと良かったのに。
ドド
ドド
馬車の幌の上に大量の水が当たる音。
いつのまにが激しい雨が降っているのか。土砂が跳ねる音、匂い。
最初は上から落ちてきていた水が段々と横殴りになってくる。ぐわんぐわんと揺れる馬車に、あたしだけでなく皆起きて。震えてるのがわかる。
国からあたしたちの警護についてきていた騎士の人達は皆この土砂降りの中、たぶん外で濡れている。一応テントはあったはずだけど流石にこの雨と風だ。
なまじっかテントをはってしまえば逆に風に煽られ大変だろう。そんな風におもう。
ぐ、うぐっ。
く。
う、く。
気付かれたく無い。
でも。
声が漏れるのが止められない。
くく。
声を押し殺し。
布団を被る。
心の中の、中の一番奥の、奥底に。
怒り。
ううん。
悔しさ。
違う。
悲しみ。
そんな簡単なものじゃ、ない。
絶望?
ちがう、はず。
でも。
何もかも吐き出したい。
苦しくて苦しくて。
思いっきり泣きたいけど泣くってそれって逃げだとおもうから。
哀しい。
あたしはあたしがあたしである事も、許せない。
このままじゃ何もかも。嫌いになってしまう。
激しい雨が。
ううん。
雨が、雨のおかげで今の自分を全て押し流してしまえるなら。
あたしはあたしでいられるのだろうか?
ううん。あたしはあたしでいても良いのだろうか? このまま……。




