魔王クロムウェル・バーン。
「黒より黒い漆黒のこの世界に満ちる魔よ、ここに在りこの我が身に宿り顕現せよ! 眼下に見える悪魔の城を破壊し破壊し尽くすその究極のチカラをこの手に。 吹き荒れよ嵐、その空間ごと爆発し裂けよ! 燃えよ燃えよ全て燃え尽き灰塵に帰す究極の最大魔法! エクスプロージョン!!」
ラクリエットの詠唱とともに放たれたエネルギーの奔流が真っ直ぐに魔王の城に向かっていく。
周囲の地はすでに兵たちによって囲まれ、それらによって起動する結界石が空間を遮断する。
轟音とともに崩れ去り、跡形もなく吹き飛んだその砦。
爆風が収まったあと。そこにあるクレーターの中心にふんわり浮かぶ一人の人の姿があった。
「魔王か!」
嬉々としてそう叫ぶスカーレットの後ろで待機しながらも、あたしは……。
感情が、もうどうにかなってしまいそうだ。
頭の中が真っ黒な漆黒で埋まっていくのを感じて、でも、どうしようもなくて。
「いくぞ、ここからはあたしたちの出番だ!」
そう叫んで走り出すスカーレットの後ろからデメトリウスとラクリエットが続く。
「エクストリームキャノン!」
「いくぞ! 神速の雷火!」
「バスターストリーム!」
漆黒の荒野を走り各々の最大級の魔法を放つ彼ら。
魔王クロムウェル・バーン。それがスカーレットが語ったかの魔王の名前、だった。
両手を前に突き出しただけでそれらの魔法を無効化する魔王クロムウェル。その鉄壁の次元フィールドは何物も通すことはなく炎も熱もそこで止まる。
中央のスカーレットが剣を構え魔王に迫る。
「雷電バスターッド!」
飛び上がりざま稲妻を纏ったその剣を上段から振り下ろす勇者スカーレット。
真っ赤な長い髪がバサッと広がり、その次元の壁を突き崩す。剣が空間ごとその次元フィールドを切り開いた。
「今だよラクリエット!」
背後の仲間に向かってそう叫ぶスカーレットの傍から飛ぶ熱線。
「イレイザーシュート」
ラクリエットの持つ錫杖の先から放たれるその一筋の熱線はちょうど隙間の開いた空間を素通りし魔王クロムウェルに迫る。
クロムウェル両肩に浮かぶラウンドバインダーがその熱線を受け流すように弾き、そのまま反撃の業火を放った。
炎に煽られ落下するスカーレット。ラクリエットを庇うように前に出るデメトリウスがその巨大な盾を正面に立てる。
「何をしている聖女! お前は勇者を守れ!」
ただただ、見ているだけしかできなかったあたしは、そうデメトリウスに怒鳴られ。
あたしはその背に天使の羽根、アウラフェザーを顕現させスカーレットの側まで跳ぶと、彼女をその翼の中に包み込んだ。
癒しの光が溢れ回復するスカーレット。
でも。
「遅い! もう、ほんとグズなんだから! あんたは回復しかできないんだからしっかり仕事をしてよね!」
彼女はそう怒鳴ると翼の庇護から飛び出して行った。




