行軍。
馬車の並びは先頭から十台が武器やら偉い人やらが乗る軍事用。その後を支援用の馬車が続く。あたし達は基本支援職なので軍事用と支援用の馬車の間に配置された。
その馬車の前には馬に乗る騎士と歩きの兵隊さんが列を正して進んで行くのが遠目に見える。
総勢五千人くらいというこの軍隊、物々しい黒尽くめの鎧に身を固めたおじさん達はやっぱりちょっと怖いけど、しょうがないなぁって気分。
「ねえエリナ。大丈夫?」
あたしは目の前の聖女エリナがあんまりにも震えてるのを見かねてそう声をかける。
「すみません姫さま。ありがとうございます……」
はう。あんまり大丈夫そうじゃ無いけど。
「怖いよね。あたしも怖い」
「はう。姫さま……」
「でもさ。あたし達には光の加護がついてるから。それを信じて、ね。そんなに震えないで」
エレクレスク聖王国の守護神、光の神、アイリス。
その子ら、ディン、そして、キュア。
聖王国の聖者にはそんな光の神の加護が宿っている、そう信じられている。
あたしはエリナの手をギュッと握って。そしてにっこりと微笑んだ。
彼女の顔に少し赤みが戻った、かな?
「ありがとうございます姫さま……」
そうこちらを見て少しだけ笑みをこぼすエリナ。ほかのみんなもたぶん少し心が軽くなった、かな?
「あたし戦争は嫌。だけど、今はここにいる皆が一人も欠けることなく国に帰れるよう全力で護るよ。だから、安心して」
少しリラックスできたかな。皆の顔が明るくなった。
心の色も暖かい温もりの色に変わった。
ほんとこのままみんなで無事に帰れたら。
そう願って。
☆☆☆☆☆
道ゆく場所で魔獣との戦闘がありその都度怪我人も何名か出る。
一般の兵隊さん達にあまり魔法の素養のある人は少なくて、けっこう魔道具の武器に頼っている感じ?
支援用の資材にはポーションも大量にあるらしいけど節約したいのかな。怪我人は全てあたし達が治療に当たった。
あたし以外の聖女の子達はまだ能力的にも幼くて軽い怪我人を数名直すと力尽きる。だからその分あたしにまわってくる分担も増えるけど。
まあまだこの辺り、魔界門より離れた場所での戦闘でそこまで大怪我する人も少ないからそんなに大変でも無かった。
兵隊さんには結構喜んで貰えたしね。
そんな感じで行軍し、夜にはキャンプをはって野営だ。
人数が多いからなのか歩きの人が多いからなのか進みは遅い。
たぶん単独で踏破する倍の時間がかかってる?
そして。
いよいよ明日は魔界門だという前日の野営中、あたしは今回の司令官? さま? からの呼び出しを受けた。




