招集。
「あたし、魔界に行く!」
図書館デートの翌日。クロムがいきなり姿を消した。
ごめんなさいとだけ書かれた書き置きに、メーベラも珍しく消沈してるように見えた。きっと彼女なりにクロムのこと大事に思ってくれてたんだなとちょっと嬉しくなったけどそれでも。
「そんなの! ダメです!」
そう泣いてとめるメーベラ。
それでもどうしてもクロムを見つけ出すんだと駄々をこねるあたしに、セバスが言った。
「近々対魔連の招集があります。我が国も聖女数人がその招集に応じて出兵する事になります。その一人と言うことであれば魔界に行くことは可能でしょう」
と、そう。
対魔連の招集って、アルルさまが行くやつ? だよね?
「あたし、それに、行ってもいいの?」
「ええ。実は……」
セバスの話だと、お父様にフリーデンからの使者が来て、うちの王女の誰かを聖女として差し出せと迫られたのだと言う。
お父様は承知しなかったしそんな失礼な話は無いと普段のあたしだったら憤慨するところだけど、これはもしかして。
今なら自分から行くって言えばお父様を説得できるってこと?
「ええ。姫さまがどうしてもと仰るのなら。私も陛下へお口添え致しましょう」
「セバスさま! 姫さまはまだ十二歳なのですよ! いくらなんでもそれは……」
「しかしメーベラ。姫さまが本気でここを出てしまわれたら、もう私達には留める手段などありませんよ? であるなら、少しでも安全な手段を選択していただきたい。私はそう思いますけどね」
はう。
セバスは知ってる。あたしの能力を。
瞬間移動が出来ることも、聖魔法が使えることも。
だから……。
「ねえ、メーベラ。あたし、クロムを探しに行きたいだけなの。危ないことは極力避けるから、ね。ごめん、心配かけるけど……」
そう。
あたしはクロムを取り戻したい。
アルルさまの話を聞いて居なくなったんだもの、彼女はきっと魔界に向かったんだ。
それに。
あたしと彼女の契約の繋がりは、まだ残ってる。
あたし、近くまで行けばきっとクロムのいる場所がわかるかもしれないし。
それと。
どうやら上のお姉様が同行しなきゃならなくなってるような口ぶりだった。
でも、アリステリア姉様は見た感じまだレイスのゲートが開き切ってない。たぶんあたしの方がマシだ。なら……。
招集の期日がきて。
あたしは他の聖女と共に馬車の中にいた。
今回の目的地はうちの国から割と近い場所らしい。
国境の外で対魔連の軍勢と合流したあたし達はそのまま最後尾の少し手前につき魔界の門を目指した。
一緒に来た聖女の子達もあたしより一つ二つ年上なだけでまだ年端もいかない子ばっかりで、みな恐怖をなんとか抑えては居たけれど手が震えていた。




