対魔連。
対魔王討伐国家連合、通称「対魔連」。
エレクレスク聖王国はそんな国家連合の盟主として祭り上げられてはいたものの、その実質は戦闘国家フリーデン連合王国、勇者王ガルーデンに寄って指揮されていた。
戦闘国家というだけあってフリーデン連合王国の軍事力は他を圧倒しており、また、資金面では商業国家ドトール王国がそれを担う。
対魔連はこの三カ国によって運営されて居ると看做されていたのだった。
しかし。
百年に及ぶ戦争の歴史の間に、エレクレス聖王国は兵は出さず金も出さず、ただただ歴史が古いだけの小国だなどと軽んじる者が出てきたのも事実。
宗教的に聖者が多い国であったこともあり、回復魔法の使い手を派遣していたエレクレスク聖王国ではあったけれど、近年では魔力不足の為かその人材にも事欠くようになっていて、対魔連での発言力もそれに応じて減ってしまっていた。
文明が発達した悪影響なのか人々が魔石を利用した魔具に慣れきってしまったせいなのか、魔力を行使できる人材は年々減るばかり。
これはエレクレスクだけでは無く地域全ての国家でも同様であったのだ。
で、あるからか。
魔石の需要は増すばかり。より効率的に魔石の魔力を引き出す魔具の開発は進んだものの、それに代わる技術、産業は興っていない。
年に数回の魔界への侵攻。こちら側、表側の世界へ溢れてて来た魔の討伐などによって得られる魔石。それらの流通を担う商業組織としてのギルドによって世界は廻っていた。
☆☆☆☆☆
アリシアは最後尾にほど近い馬車に居た。周囲には彼女と共にエレクレスから派遣された聖女が五人。後列の荷馬車の周囲は兵糧や雑事を担う支援兵が囲む。
五千人規模のこれらの兵団に所属するのはその大半が傭兵であり普段は各々冒険者として各地で活動を続け、こうした遠征が計画される度、勇者王の呼びかけに応じてフリーデンに集うのだ。
もともとフリーデンでの対魔連予備役としての登録を済ませ、定期的な訓練にも参加している。
職業兵士では無いにしろ、その帰属意識はフリーデンにあると言っても過言ではない。
それらの傭兵を率いるのはフリーデン騎士団の団員であり、それを指揮するのが勇者王の直属部隊となる。
普段より指揮系統を整えているフリーデンの兵と違い寄せ集めの周辺各国から徴兵された者たちは、その傭兵らの部下として、一兵卒として配属される。
それがたとえ王族や貴族だとしても特別扱いされこそすれ指揮権を与えられることは無く。
基本的にフリーデンの指揮下に置かれるのは変わらなかった。
世界の裏側、魔界への門は、森の奥深く、魔の深い場所に定期的に開く。
今回観測された門はエレクレスクの国境より程近く、イヌチャンマウンテンの中腹にあった。
周囲には魔が溢れ多くの魔獣が確認されており、その討伐も兼ねて進軍する対魔連の軍勢。今回の指揮は勇者王の娘、勇者スカーレットがその任についていたのだった。




